記憶 とある少女について1



 君にちょっとした話を聞かせてあげよう。


 不幸の不幸の、そのまた不幸のどん底に落ちた少女がいました。

 でも、少女は人間に助けてもらいたいなんて思いませんでした。


 なぜでしょう?


 分からないよね。


 頭の良い君には分からないよね。


 人生は物語じゃないんだよ?

 ずっとずっと、複雑で過酷で、一人の人間がこの時代にこの場所で生きている事が奇跡なら、生き続ける事はずっともっと奇跡。


 そんなとてつもない奇跡を起こせる存在が、人間であるわけないじゃない。


 え?


 だから? そうなのか?


 ……。


 君も飽きないよね。


 毎日毎日、私に会いに来なくていいのに。


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