第21話 機転



 扉の前に行って押したり引いたりしてみるけど、うんともすんとも言わない。

 まるで、接着剤で固定されてしまったかのようだ。


 しかしそこで、友人がいったいなんで持ってきたのか分からない、品々を放りこんだ。


 それは一階の部屋に散らばっていた、少年達の持ち物だ。


 落書きスプレーとか、接着剤とか。

 それらが、床に満ちている消化液(らしきもの)の中に消えていく。


 すると、部屋の中が小刻みに振動して、まるで拒絶反応を起こすかのように消化液(らしきもの)を外に追い出し始めた。


 もしかしてこれって、吐いてる?


 しばらくして、部屋の扉に近づいた友人が、強く蹴った。


 扉はあっけなく開いた。


「「あ……」」


 扉の外でけたたましく笑いっていた女の子は一瞬だけ気まずそうんしいて、その場から消えていってしまった。


 後には、十字のネックレスが落ちていた。


 えっと、結局なんだったんだ。


 妙に抜けた所のある幽霊だったな。


 微妙な空気の中、振り返ると放送室は元に戻っていた。


 その場にあったスタンプを押して、建物を後にした僕達は、階段を下って一階の廃墟入り口へ。


「お前、何であんなもんを持ち歩いてたんだよ」

「最初から予想できたからな」

「普通予想できねぇだろ。天才か! って、天才だったか。どこで検討ついたんだ」

「最初から。あの少女と出会ったときからだ」

「え?」

「あの少女が建物に入った時、姿が映ってなかった」

「映るって、鏡なんてあったか?」

「窓だ。ライトに照らされた俺とお前しか映らなかった」


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