第16話 偽物



 僕が上げた悲鳴をきっかけにして、一斉に動き出す室内の手足ども。


 こ、こわっ。


 演出に気合入りすぎだろ。


 下手なやつが見たら、失神するぞ!


 僕はこちらを掴んでくる手を引きはがして、扉にとりついた。


 早く出たい一心だ。


 鍵穴に鍵を入れてがちゃがちゃしてみるけど、開かない。


「なんでだよ!」

「こっちにも鍵がありました。試してください」


 そこで、なぜか女の子が二本目の鍵を手にして持ってきた。


 しかし。


 ガチャガチャ。


 開かない!


 つまり……。


「偽物かよ!」


 僕が手に入れたやつも、女の子が手に入れたやつもフェイクだ。


 おそらくこの部屋の中には、複数のダミーがあるのだろう。

 その中から、本物の鍵を見つけないといけないわけだ。


 この動く手足の中から。


 地獄過ぎる。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る