第19話 大魔王?
「逃がさん!」
確か、妖精王ゲレフーだったか蛙のお化けみたいなやつが突っ込んでくる。
さて、本気で戦いますか。全力で戦わないと、逃げられないしな。
俺は、ゲレフーに向かい突っ込むそして、気を集中させ手刀でそのぶよぶよした腹を突き刺す。ずぼおおお。うえっ。ぬるぬるして気持ち悪い。
「ククク、そんな攻撃効かぬぞ」
そうですか、俺もこんなの効くと思っていないし。
「ベヒモス召喚」
俺は、ゲレフーの中で手を広げ、召喚する。ベヒモスが、ゲレフーの体内で召喚され、ゲレフーの体を破るようにその巨体があらわれる。
「ぐわあああああ!」
ゲレフーの、体は引き裂かれ破裂した。よし、まずは一匹。
「おいおい、魔王を倒しちゃったよ」
ダイが呆然としている。
「それより、皆、逃げるぞ!」
「ベヒモス、岩の壁作って魔王達が俺達追うの防いでいてくれ」
「わかった。主殿」
厚い岩の壁ができ、俺達と魔王を分断する。向こう側から、岩の壁を壊そうと、凄まじい音がする。
俺達は、ベヒモスを残し勇者タケシの後を追った。そして、上へ上へ向かう。
すると、勇者タケシと共に行かせた。火の聖霊王イフリートの声が、頭に響く。
「主殿、申し訳ない。負けてしまった。いったん精霊界に帰ります。傷が回復しだい、復活しますよ。少し休みます」
勇者グループ、そしてカヅキグループについていかせた。イフリートとの連絡が、このような形で終わる。
何が起こったんだいったい。精霊王であるイフリートが、精霊界に送り返された?。竜がいる部屋を抜け、湖の所を抜ける。
俺は無我夢中で走った。ダイ、フミカちゃん、ユイ、ショウタ、リンカちゃんも続く。
そして、見えてきた。戦いの音がしない。戦いは、終わっているのか、何人か立っているのが見える。勝ったのか? でも、倒れているメンバーもいるようだ。早く助けないと。
近づく、頭上を俺が飛ばした、光の精霊が飛び交い洞窟を明るく照らし出す。ん? 敵がいるぞ、どうなってんだ? 確かあいつは魔王カインと名乗っていたか、それと、魔術師エンリル。二人が先回りしていたのか!
そして、立っているのは、あの後ろ姿は、シロウか? 他は、ハクトと、チハヤと、スミレちゃんと、ユミちゃんか? ゴウシと、カヅキは、腰を抜かしたのか座っている。他は、皆倒れているようだ。血だまりも、できている。誰か怪我をしているのか? それとも…。
そんなに強いのかカインは、だとすると全力でいかないとな。俺は、ベヒモスをいったん戻す。これで、背後からも魔王達が追ってくるだろう。さほど時間がない。
「シロウ、無事か! 勇者タケシはどうした?」
俺が叫ぶ。返事がない。どうしたんだ?
すると、シロウが振り替える、そして、手に何かを持って目の高さに持ち上げる。
「キャー❗。」
フミカちゃんが、悲鳴をあげる。すると、シロウは、手に持っているものの、顎を掴み口を開けさせる。そう、それは、勇者タケシの頭だった。ちぎれた首から血が滴り落ちる。
そして、シロウは、タケシの頭の口をぱかぱか動かしながらしゃべる。
「俺は勇者タケシ、正義のため、魔王を討伐する。ってもう死んじゃいましたけど」
と言って、高らかに笑う。シロウの目は、真っ赤に輝いている。
「おい、どうしたんだ? シロウ」
「どうしたんだ? って、何がですか? ガク先輩」
なんだ、何が起こったんだ? 俺は、いまだに理解できないでいた。フミカちゃんが、袖をギュッと掴んできた。そうだった。呆けている場合じゃない。
「シロウ、何してるんだ! 裏切ったのか?」
「裏切った? うーん、違いますね」
「元々、魔王サイド。じゃないですね。わたしがトップで、エンリルさん達が味方ですかね」
意味がわからない。すると、エンリルが話始める。
「シロウ様、わたしが代わりに御説明致します。わたしは、はるか昔、大魔王様にお仕えしておりました。しかし、ある時大魔王様は、勇者バンのパーティーに敗れ殺されてしまったのです」
エンリルは、芝居がかった口調で話を続ける。
「わたしは、大魔王様の復活を信じ探し続けました。そして、ついに見つけたのです。大魔王様の転生体を、わたしは、狂喜乱舞しました。しかし、それは、はるか遠い異世界だったのです。そこで、わたしは、計画を建てました」
エンリルは、俺達を見回す。
「まず、莫大なお金が必要でした。わたしは、予言書を偽造して、燃える水を発見させ、金持ち国にさせた上で、[魔王の迷宮]を作り、勇者を転移させる計画を持ちかけたのです。莫大なお金で世界中の優秀な召喚魔術師を集め、転移計画を研究させました。そう、大魔王様のそばに勇者の転生体もいたのです。まあ、勇者バンではなかったですけど。大魔王様の力の封印を解くには、勇者の血も必要でしたから、一石二鳥でしたね」
エンリルは、何がおかしいのか笑うと、話を続ける。
「研究している間に、わたしは死んだことにして、今度は、大魔王様の優秀な部下を集めに世界中をまわったのです。それが、あの6人の魔王です。まあ、今日2人も倒されちゃいましたけど。そんなのは些細なこと。今日、大魔王シロウ様が復活されたことに比べればね!」
大魔王シロウ? すると、座りこんでいた。カヅキと、ゴウシが動く。シロウにすがり付き。
「なあ、シロウ。じゃなくてシロウ様。俺達も仲間に入れてくれよ」
シロウは、すがりつく二人を見下ろすと、
「ガク先輩や、ダイ先輩だったら良いですけど、お前らみたいなゴミはいらないですよ」
「やめろー!」
シロウが、手を振るうと、二人の体が弾け飛び、血が辺りに飛び散る。
俺は、我を忘れ突っ込んだ。
「何やってんだ!シロウー!」
シロウに到達する直前、魔王カインが立ちふさがる。カイン、確か悪魔だったな。俺は、スキル影で、影に潜り込み消えるが、目の前にカインが現れる。
「残念ながら、そういう戦いは、我ら悪魔の得意とするところでして」
俺は、慌てて影を解き、カインと再び対峙する。ベヒモス召喚、体の防御力をあげる、そして、ジン召喚、スピードをさらにあげる、イフリートがいないので、気でカバーするが。少し厳しいか?
カインに向けて突っ込む。超高速の戦いが開幕した。カインは、片手剣を構え、俺を待ち受ける。剣が振るわれる、俺は剣をかわさず、受け止めると、カインの腕を極め投げっぱなしで、投げる、そしてカインを蹴りあげるが、それは、かわされる。カインは、素早く立ち上がると、再び対峙する。
「ガク先輩本当に人間ですか? 素晴らしいですねぇ」
シロウが、拍手をしつつ、誉めてくる。ふと、見ると。シロウに、ダイ達が、武器を持って対峙し、その前に、チハヤと、ハクトが立ちふさがる。いつの間に立ち上がったのか、倒れていた、ヒサト、ナオミちゃんが立ってダイ達に加わる。ヒサトは、流血している。そして、
「ハクト、何やってんだよ。そんなやつの隣にいないで、こっちに来い」
「兄ちゃんさー。一歳違いで偉そうにするなよな。俺は、もっともっともっと強くなりたいんだよ」
すると、今度は、ユイが叫ぶ、
「スミレちゃん、ユミ、あなた達も、魔王に味方しているの? そうじゃないよね?」
「ああ、ユイ先輩無駄ですよ。この二人は、僕とチハヤで美味しく頂きました。4Pってやつですか? 楽しかったですよ。今じゃ、立派な肉奴隷ですよ。そう言えば、先輩もどうですか?」
「このケダモノ!」
ユイが、シロウに向かって斬り込む。危ない! 俺は、カインの存在を忘れてそちらに向かう。すると、右脇腹が熱くなる。見ると、カインの剣が深々と刺さっている。ユイの動きが止まり、フミカちゃんが悲鳴をあげる。
「いやーーーーー!」
俺は、吐血しながら膝をつく。
「残念ですよ。わたしは、あなたと全力で戦いたかった。また次ですかね?」
と言うと、俺をおもいっきり壁に向かって蹴り飛ばす。俺は壁に激突して、下に落ちる。これは…。皆が、心配して駆け寄ってくる。
俺は立ち上がると、ゲートを繋ぎ、その中に倒れこみながら、皆に叫ぶ。
「皆飛び込め!」
そして、意識を失った。
「カインさん、わざと逃がしましたね」
「申し訳ございません。いかような罰でも受けます」
「いや、良いですよ。どっちみち、ダイ先輩とガク先輩は生かしておくつもりでしたから。しかし、ユイ先輩は惜しかったですよ。我がしもべにでも、しようと思っていたのですけど。まあ、そこにお漏らしして倒れている、レイカ先輩で、我慢しておきますか」
「シロウ様、[魔王の迷宮]はいかが致しましょうか?」
「そのままで、良いでしょ。永遠に生き返る魔王人形もできたことですし。お世話になった国に、細やかなプレゼントです」
「かしこまりました。そうですな。迷宮から出ることはない、安全なモンスターですからね」
「冒険者にとっての良いテーマパークでしょ。では、行きますか」
「はい、シロウ様」
大魔王シロウ、魔王カイン、魔術師エンリルは、闇に溶けるように消えた。
そして、チハヤ、レイカ先輩を担いだハクト、さらに、スミレ、ユミも後を追うように消えていった。
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