第6話
光陰矢の如し、ほんのちょっとしか経っていないと思っていたが。
2番に散々甘えて、気づくと1時間経っていた。
「そろそろ帰りましょう。」とのこと。
もう少し一緒に居たかったが流石に時間の限界だろう、門限をかなり過ぎている。
「‥わかった、帰るか。」
「何で顔を見てくれないの?さっきまであんなに甘えてくれたのに。」
さっきまでの事を思い出すと、なぜか2番の顔が見れなかった。
それが面白いのか2番は、「ねぇ、どうしたの?そんなに恥ずかしい?」
と笑いながら言ってくる。
「それより式の練習どうするか、相談しなきゃな。」
「そうね、真っ当に考えるともうあなたを練習に誘えないかもしれないわね。」
「‥そう‥だよな。」
俺は別に構わなくても生徒会のメンバー、特に1番が断ってくるかもしれない。
「それに1番もわからないしな。」
「それはもう彼女の問題でしょうね、私達はサポートできても限界があるわね。」
少し冷たいかもしれないが、やはり1番が自分で決めるしかないのも事実だった。
「それで、いつまでそうしてる気?」
「わかってる、もう立つよ。」
2番の顔は半分しか見れなくても2番の膝枕からなかなか立てなかった。
ダメだな、甘え癖が出来そうだ。
生徒会室から出た時に鍵を持っていなくて困ったが、生徒会室前の机に置いてあった。
2番は少しはにかんで生徒会室を施錠した。
そういうルールがあるのか?と思ったが詳しく聞かなかった、組織には組織のルールがあるのだろう。
鍵の返却は2番がするとのことなので任せることにした。
「じゃまた明日ね。明日も一緒に居てあげるから。」
「わかった。だけど明日は一人でそれに多分向こうからも一人でって言われるんじゃないか?」
「強いのね。じゃあもう私に甘えなくていいの?」
「それは‥わかった明日も一緒に」
「ふふ‥、わかったわ、一緒ね。」
まずいな、本格的に2番がいないと何もできなくなりそうだ。
寮の責任者に事情を改めて説明し特にお咎めなく通してもらったが、「思ったより時間がかかったな、そんなに取り調べが長かったのか?」俺は被害者で取り調べではないと言いそうになったが、「そうですね、公務員は何かとのんびりでしたね」と言っておいた。
もう一年も風呂から上がり、誰もいないなか一人で浴場に入り、すぐに夕飯。
「そんなことがあったのか、びっくりしたよ。」
「急に警察が来て生徒を乗せて行くんだ、何があったのかと思ったぜ。」
「彼がそんなことをするなんて驚いたよ、ごめん僕のせいだね‥。」
3番・6番・科学部の3人にことの顛末を話した。
なかなか言い出しずらかったが3人とも本当に心配してくれて話もゆっくり聞いてくれた、友人に悩みを話すのは思いの外落ち着けるのかもしれない。
そしてどうやら、科学部がやっぱり5番に話していたようだ。
「いや、大丈夫だ謝らないくれ、元々は俺が断ったのが原因だし。」
「それを言ったら僕が最初に断ったのが悪いんだよ。」
3番が謝ってくるが、誘いを断ったのはもう二年近く前だこんな事になるなんてわかるはずもない。
話を聞く限り科学部が5番に俺が学術都市に行く伝えたらしい。そこで5番が何を思ったか俺が1番と2番を無理やり学術都市に誘ったんだと考えたのか。
「本当にごめんなさい。4番くんについて聞いてきて彼。彼とは初等部から仲が良くて‥」
2番と操作室にいたのが気に喰わなかったのか、何を勘違いしたかもうわからない。
科学部は必死に謝ってくる、本当に申し訳ないんだろうが仲が良い人に口が軽すぎるのも考えものだな。
「それで、明日はどうなるんだ?お前、警察署に行くのか?」
「あぁ、一応呼ばれてる。俺だけじゃなくて生徒会メンバーも呼ばれてるらしな。」
「検査とかしなくて大丈夫なの?」
「警察署でどの位時間がかかるかわからないけど終わり次第、病院に行く事になってる」
本来逆なんじゃないか?と思ったが実際怪我もしてないし、まぁいいだろう。
明日明後日は休日だから多少時間がかかってもいいし。
明日の予定を3人に話していると。
「てか、なんでお前が生徒会の仕事手伝ってんだよ?生徒会の誰かに頼まれたのか?」
6番が思い出したように言ってくる。
「あぁ、そんな所だ手が足りないから手伝ってくれってよ。」
「なんか不思議だな、放送委員の3番ならまだしもなんでお前なんだ?ここ最近ずっとどこかに行ってたみたいだし。」
「そういえばそうだね。僕の所にも手伝いの事なんて何にも来なかったし。」
「前から生徒会を手伝ってたの?」
これはまずい状況だ、正直に2番に頼まれたから、なんて言えるはずがない。
「あれだよ、ここ最近いなかったのは進路の事でよく職員室に」
「そうなの?僕もここ最近放送委員の仕事で職員室に出入りが多かったけど君を見なかったはずだけど。」
「それはたまたま時間が合わなかっただけでその時はまだ教室にいたとかで」
「でも僕も実験の空いてる時間教室にいたけど全然合わなかったよね?」
「‥‥」
よし決めた。
「あー悪い今日疲れたからもう寝るやー」
食器を片付け逃げるように逃げる。
「あ、あぁ。また明日な。」
「う、うん、お休み。」
よし上手く逃げれた、考えないようにしよう。
消灯時間。
スマホをいじり、【事情聴取 被害者 時間 どのくらい?】と打ち込んだが、当然まともにヒットするわけなかった。
「よく考えたらすごいめんどくさいな、2番も一緒にいてくれるらしいけど。」
生徒会メンバーだけでも10人近くいる、メンバーと俺からそれぞれ別個に話を聞きそのあと話の整合性を取るためまた話を聞く。
警察署での聞き取りなんか初めてだから何もわからないな‥。
5番は初犯だから重い結果にならんだろうが、
「多分もうこの学校には戻れないだろうな‥。」
5番はこの学校を大切に思っていたらしいがその結果がこれだ、生徒会と学校に泥を塗るような行動をした。
親方思いの主倒しかな。
びび!
スマホが振動した。
珍しい、父親からのメールだ。
学校から連絡があった、
事件の渦中にいるようだな。
何があったか教えてもらえるな?
傷害未遂事件の被害者である息子に送る言葉かこれか?
無視したかったが、仕方ないので事件の流れを教えた。
どうやら本当にあの家の息子らしな。
付き合いはあまり無かったが、歴史を持った家柄だろうに。
少し前に謝罪の連絡が来た、息子は今実家に引き取られているらしい。
当然か未成年で15歳くらいの年齢だ警察署でいきなり拘束されるわけないな。
私も明日そちらの警察署と学校に向かう事になった。
どうする?車で送り迎えは必要か?
‥‥親らしい事を言ってくる、母から何か言われたらしな。
というかよく急に明日行くなんて決めたな決して暇ではないだろうに。
いや、大丈夫。
学校の奴らと一緒に行ってくるよ。
帰りも大丈夫。
心配してくれているのだろうか?、だがまだ喧嘩中でもあるからこういう言い方しかできないのか。
そうか、わかった。
交通事故などに巻き込まれないでくれ。
後、母さんからあの子に失礼のないようにとのことだ。
あの子とは誰だ友人か?
2番の言っていた御家族とは母さんだったか。
一体いつ知り合ったんだ?
どちらかに聞き出したいがどちらも一筋縄にはいかないだろうな。
そんなところだよ。
そうか、友達は大切にな。
ここでメールは途切れた。
そうだ、これは初めて父親と学校生活について話したかもしれないな。
午前9時、俺を含む生徒会は学校所有のマイクバスに乗っていた。
警察の車が学校についたが、当然10以上の生徒を乗せる大きさではなく昨日から、決めてあったらしくもう校門にバスが止めてあった。
警察の車に先導されて警察署に向かう。
バスと言っても正座が20席位なので大体半分が今回埋まっている。
がたっ、がったっ。ブオーーン。
誰も喋らないからか車の運転音が車内に響く。
ここから警察署は一時間もかからないだろう。
だが、向かうにつれて否が応でも自分達は参考人として呼ばれてると再確認出来た、
1番は先頭の席に2番と一緒に座って、その後ろバラバラに生徒会のメンバー。
最後の座席に俺が一人であった。
2番と隣に座りたかったが、生徒会の次期副会長として1番と一緒に座っていた。
「‥‥」
暇だ、別にこの中の誰が悪いわけでもないだろうに、誰も話さずただただ静かだった。
自分達の身内が犯罪者の疑いをかけられ、それの証言をする。
防犯カメラがないからこそ自分達で証言しなければならない、5番が4番を襲おうとしたと。
5番の性格を俺はよく知らない、俺は被害者として正直に証言しようと思っている。
だが生徒会メンバーは二年近く人によってはそれ以上の時間を共に過ごした人もいるかもしれない、友人として5番を守ろうと思っている奴だっているかもしれない。
もしかしたら、今ここには2番以外俺の味方はいないかもしれない。
そう思うと手が震えてくる、不安で頭が冷たくなってくる、親父の車に乗った方が良かったのかもしれないと思えてくる。
昨日でも実家に帰った方が良かったのかもしれない。
2番は味方だと思っているがもしかしたらと考えてしまう、そんな訳ないのに。
心臓が抑えられなくて苦しい。
もしかしたらこの警察署への道は俺を犯罪者として迎え入れるための道かもしれない。
「‥‥」
不安の考えは止まらなかった、もうただこの静けさに耐えるしかなかった。
警察署に着き自分だけ別室だった。
生徒会メンバーと警察署の入り口を通ったときスーツの男女が自分だけ別室に連れて行った。
スマホの電源も切れとのこと。
部屋は木目調の折りたたみ式の机と、パイプ椅子がいくつか置いてある。
お茶を出され「少し待っていてください」と言われはや10分。
漠然とした不安、あれだけ頼もしかった2番がもしかしたらと思ってしまう自分の弱さ、そして2番信じたいと思っている葛藤が自分の中に渦まいていた。
「結局2番一人いないとこのざまか‥。」
もう冷たくなっている緑茶をすすり待つ、待ち続ける。
「お待たせしました。」
さっきのスーツの男女が入ってくる。
「確認ですが、あなたで間違いないですよね。」
そう言うと、女性が手に持っている書類に自分の個人情報が書かれているのだろう、名前と生年月日、家族構成など詳しく来てくる。
「確認で来ました。今日ここに来ていただき感謝します。」
女性が丁寧にお辞儀、感謝の言葉を述べて机の向かい側に座る。
男性は扉の横に立ちこちらに笑顔を向ける。
「昨日、事件にあったらしいですが。お怪我はありませんか?」
顔を覗き込むように言ったくる。
「はい、大丈夫です‥。」
笑顔で優しく言ってくれるがどうにも圧力がある。
「焦らずゆっくりとで大丈夫ですので、私の質問に答えてください。」
あの時どこにいたのか、何時にいたのか、最初は誰といたのか、なぜいたのか、
生徒会ではないのになぜ手伝っていたのか、なぜあの時一人だったのか、
本当に5番だったのか、持っていたのはなんだったのか。
聞かれなくてもわかるような質問、本当にこんな事があったのかという質問、
5番との関係など質問攻めである。
しかもわざわざ、どんなケースだったか?どのくらいの高さから振り下ろされたか、
そもそも持ち上げたのか?事件の実証までしろと言ってくる‥。
必要な事、だとしても‥。これを被害者に聞くか?しかもつい昨日の話だぞ‥、
事務的すぎる、そんな言葉では片ずけられない気がする‥。‥それでも正直に出来るだけ答えた。
「はい、言いにくい質問も答えて頂きありがとうございます。
お疲れ様です。もう少しお時間を頂きますが大丈夫ですか?」
「はい‥。大丈夫です‥。」
どうせいいえと言っても無駄なのだろう。
とにかく疲れた、こんな事を聞く必要あるかと思う質問もあった。
これじゃあ、病院検査で過労と言われるかもしれない。
二人とも部屋から出て何か喋っているが、よくわからない。
あぁー、なんでもいい2番に会いたい。
ガチャ。
急に扉が開いた。
「傷害未遂というからどうかと思ったら、どうやら平気のようだな。」
親父が入ってくる。
「はぁーーっ。」
「なんだ親の顔を見てため息か。」
「いや、ていうかよく急にこっちに来れたな。家から近くではないと思ってたけど」
「私も急に言われて驚いた所だ、まさか明日にでも来れるかと言われるとはな」
「警察から?」
「警察と学校からだ。」
そういえばそんなことをメールで言ってたな。
「学校はなんだって?」
「今後のお前の事と、向こうの家の事で話たいと言われた。まったく‥謝罪の言葉なしに来いとはな‥。今後の付き合い方を考えないといかんな。」
まぁ、単純にこの事件の後の対応だろう。そしてやっぱりこの学校の態度は親父にも悪いらしいな。
「後、このままお前をこの学校にいさせていいか相談したいと言われた。」
「それで?」
「このままこの学校に通うことになった。問題ないな。」
「大丈夫、それでいい。」
よかった、2番とは一緒にいたい。
「それで警察で何を聞かれたの?」
「警察と検事だな。この事件を、裁判にするか示談にするか、若しくは示談込みの裁判にするか聞かれた。」
‥そうか裁判か、確かになんらかの責任を負わないといけないだろうな。
「お前はどうしたい?」
「別に、示談でいいよ、二度と俺を襲わなければ。」
「わかった、だが今回は万引きなんかじゃなく傷害未遂、場合によっては後遺症が残りかねない状況だったんだろ。」
「‥そうかもしれない。」
「示談は出来ても結局裁判で彼は裁かれるだろう。初犯だが聞き取りと証言によっては少年院かもしれないな。」
「そうなんだ‥。」
まだ確定でもなく寧ろ可能性が低いだろうが、場合によって少年院か。
「私はこのまま警察署と学校で今後の事と向こうの親御さんと相談だ、お前は一日だけだが検査入院するかもしれないが大人しくしていなさい。」
知らなかった入院かもしれないのか。何か準備をしてくればよかったな。
「生徒会のメンバーはどうしてるか知ってる?」
「私が知るわけないだろう。」
試しに親父に聞いてみたが、予想通りの回答だった。
「私はもう行くが、まだ聞き取りがあるか知らないが正直に話せよ。
どちらの有利にも不利にもなろうがな。」
「‥はい、そうするよ‥。」
ガチャン。
親父が出て行きまた部屋が静かになる。
あんな感じでも父親だが、今日の予定を取りやめてここに来てくれた。
感謝すべきなのだろうな。
足音が遠ざかった行く、そして近づく音もする。
ガチャン。
「お父様とは、話せましたか?」
ノックもなしで当然のように入ってくる。
「もう少しお付き合いいただきます。」
もう2時だ。
腹が減ったな、ここ社食とかあるかな?社食って言うのか知らないけど。
生徒会のメンバーとはまだ会えない。(というか2番と)
「もう何回目だよ。もう話尽くしただろ。」
あれから何度も聞き取り退出を繰り返している。
もしかしてあの女の人がワンオペで聞き取りをしているのか?
今日はもう昼はなさそうだ。
喉はお茶の供給が何度かあり大丈夫だが、水分で空腹を誤魔化すのは限界が来ている、正直ガス欠だ。
「あいつらどうしてるのかな?」
生徒会メンバー一人一人で聞き取りをやっているのか、全員でやってるのか知らないが、向こうも大変なんだろう。
まさか昨日の「公務員はのんびり」がここで効いてくるとは思わなかった。
外から足音がまたするが、今回はかなり多い。
ガチャン。
「今日は捜査の協力感謝します。ありがとうございました。」
スーツの女性が部屋に入って来てこう言った。
長かった、本当に長かった。
ここの警察署にクレームを入れることは出来ないだろうか。
「今日はここまで大丈夫です。また聞かなければいけない事があれば連絡させていただきます。」
もう勘弁してくれ。
俺のうんざりした顔など無視して「お帰りはお気をつけ下さい。」だと。
部屋から出て一階の窓口まで付き添われ、二人の顔を見てホッとした。
「やっと会えたわ。長かったわね。」
「お疲れ様です。4番くんがなかなか終わらなくて心配だったの。」
久しぶりにあったような気がする2番と1番がそう言ってくる。
「もうみんな終わってるのか?」
「そうね、12時ぐらいには大体終わってたわね。」
「だからもうみんなバスで帰っちゃたの。」
マジか、仕方ないにしても俺だけこの時間かよ。
「あ、でも車は大丈夫だから。4番くんのお母さんが用意してくれたらしいから。」
え、聞いてないけど?
「6人乗りの車を用意しました。奥様から前日には言われていましたので。」
あぁ、この人は。
パンツスーツを着た麗人、一目しただけで目が冴えるような美人
「社長の第3秘書です。お久しぶりです。」
「久しぶりです、この前の帰省以来ですね。」
「はい。‥事件にあったと聞き慌てましたがご無事のようで安心しました。」
そう言いながら秘書さんは俺の様子を見てくる。ほんとに心配してくれているらしい。
わざわざ、ここまで母に言われて来たのか。
秘書ってそんな事までしなくちゃいけないのか?
「では早速、車にお乗り下さい。これから病院に向かいます。」
「あの‥病院の前に何か食べたいんですけど、どこか飲食店に」
「申し訳ありません。もう検査の時間が迫っており満腹の状態では検査に異常をきたす可能性がありますので、このまま直行いたします。」
懇切丁寧な「いいからとっとと乗れ」をくらい空腹でふらふらしながら病院に向かった。
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