学術都市前日譚
一沢
第1話
全寮制で中学高校のエスカレーター式であった。
一年時に予定で朝の起床は7:00であり授業が始まる一時間前には教室で自習をしなければならなかった。
基本的に6限までで部活をしていない人はその後自習
夕食と風呂の時間は7時から9時までにそれまでに終わらせ残った時間は自由時間。
消灯は9時半、テレビはなくせいぜい新聞。
余裕のある時間割だと思うが実際には牢獄のようだと今は思う。
当時は特別つらいとは思っていなかった。それしか知らなかったからだ。
でも中ニの夏、実家に帰った時に高校訪問に行った事が始まりだった。
こんなにも学校とは自由だったなんて知らなかった。
それにもうあの学校には居場所がないと感じる。
俺は高校は外の学校に行くと決めた早速親に相談したが当然却下しかしもう自分は決めた後だったので食い下がり絶対に譲らなかった。
実家帰省の2日目でそんな事を言ったので親とは帰省の間ただただ険悪な空気で親には最後の日まで絶対に認めないと言われた。
しかし学校に帰ってすぐに私は他校に進みたいと担任に話したが担任も認めてくれなく、両親に連絡したところ両親も絶対に認めないと念押ししたようだ。
担任は笑ってこの学校をちゃんと卒業しようと言ってくる。
この中等部は成績でランキングされていて1〜25位までの生徒は高等部まで当然のように進学していた、生徒総数は1学年10クラス300人位いるつまり1000人近くが中等部にいるだろう。
だいたいがやはり高等部に進学するが中には外の高校に進学する人もいたがそういった人達は成績や学費等の面でというのが噂であった。
外部に行く人は学校もそういった扱いをしていた。
そして今自分は4位にいた、つまり進学組の筆頭の一人でもあった。
そんな自分が外部の高校に行きたいというのだから噂はすぐに広がった。
「本当に外に出るのか?」少し呆れたような不安のような感じに言ってくる
「あぁ、もう決めた。それにもう俺は耐えられない。早く外で自由になりたい」
手が疲れた、シャーペンが重く感じる。
事実自分にとってここは牢獄だ、寝るときもトイレの時も監視されているように感じる。
「この学校を卒業すれば良い大学に入れるんだよ」
「そうかもしれないけど、この前OBの一人が昏酔事件起して捕まっただろ。
それにあの会社が売り払った製造業の原因はここのOBの役員らしいじゃん。
ここを卒業したから安心って事はもうないだろう。」
「そうかもだけどさぁー、」
自分だって不安で、こいつが言っている事は事実だとわかっている。
だから揚げ足取りのような事をしてしまっている。
こいつはあまり友人がいなくて少ない友人の一人の俺がいなくなるのが不安のようだ
それだけでなくただ友人が今後一生の問題をこの一夏でこんなに簡単に決めて良いのかと心配をしてくれているのだろう。
そんなヤツの心配を無下にしている自分が嫌だった。
「悪りぃ、ここ卒業した方がいいってことはわかってるけど、もう決めたし。
それに‥、居場所ないって思っちまったから。」
「またそれ、君は十分すごいし、僅差だったじゃん。
そんなに4番目がっ。ごめん‥。」
顔に出たようだ。
自分の成績は4番目ただそれだけ、だが1-2-3位のやつらは勉強だけでなく他の分野で多くを成し遂げていた。
それが絶対的な差でもあった勉強だけでもあいつらが上でしかもそれ以外の全ての要素で負け続けている。
「いやいいんだ。
それよりそろそろ行かなくていいのかもう三十分は経ってるんじゃないか。」
「やばっ、じゃあ夕飯でまたね!」がたっ!
少しつんのめり空いてる机にぶつかりながら教室を出て行くアイツは科学部の部員でもある実験の途中時間がかかるものがあるらしくたまに放課後会いに来る。
「受験勉強かぁ。まさかまたやることになるとは思わなかったな。」
学校によっては三年の春から受験もできる早いかもだけど絶対にここから出たい。
この学校に入るのに本当に苦労した。
勉強はもちろん、将来の夢、それを実行するための手順。
当時小学生の相手にそんな事を聞いてどうする?
家族構成と小学校での生活、親の仕事も聞かれた。
小学生での生活はまだしも家族構成と親の仕事を聞いてだからなんだ?
当時は何も考えずに答えていたが今思うとすごい無意味だ。
もしかしたら大いなる意味があったのかもしれないが自分にはわからない。
どうせずっとこの学校から離れないと思っていたのに今は受験勉強をしている、不思議なものだ。
だが正直今回の受験勉強はそこまで苦痛ではなかった勉強のやり方を知っているのがやはりいい方向にあるらしい。
「少し疲れなぁ。何か飲むか‥」
独り言を言いながら椅子から立ち上がり椅子を机に入れる。
「痛っ、指が痺れてる‥。」
自覚は無いがかなり指に負荷をかけていたようだ。
もう二年の秋、自習の時間は自分のクラスにはあってなきようなものだった。
他の学校はどうだか知らないがこの学校では二年次で進学の行方が決まる。
一学期の期末と二学期の期末にそれなりの点数を取れば高等部に行ける。
だからAクラス以外の生徒は必死に勉強しているが正直それぞれ50点以上取れば進学出来てしまえるためそこまで必死にやる意味がないかもしれない。
それに部活をやっている生徒はいくらか点数が免除されるため3分の2近くが部活に参加している。
それでもやはりこの学校のレベルは高いのだろう。
この学校の生徒というだけで一目置かれる。
他のランキング外の生徒のクラスは教師が見張る中いくらかが自習だがこのAクラスはもう進学が決まったようなものだ。
テストこそ受けさせられるが後の期末テストは特別落とす為のものでもない。
俺みたいに受験勉強をするヤツは少数派だろう。
階段を降りて一階に着いた。一階の生徒ロビーには自販機がある。
一階の自販機は生徒証を提示すればただで飲み物が飲める、あまり種類はないけど。
タブに指をかけるが。痛いな、指が痛くて上手く缶が開かない。
ん?、階段から音がする。基本的にこの時間にいる生徒は自習中のはずなのに。
「あれ?もう寮に帰ったと思ってたんだが」
長い髪、鋭い目、作られたような綺麗な顔を強めに睨む。
「少し、職員室に用があって。そっちは余裕ね。受験勉強しないの?4番目」
挑発か、いや事実だから仕方ない。彼女は2番目だから言う権利がある。
「見ればわかるだろう、少し休憩だ。
銀メダルが偉そうにそれにその順位はこの学校でしか通じない。
井の中の蛙ってやつだ。俺はここから出るんだからもう意味がないぞ」
「井の中の蛙大海を知らずされど空の高さを知る。
あなたは外に出ても雄大さを知らなそうね。メダル一つ取れない人ではそれが限界よ」
どいつもこいつもそんなに4番目が嫌いか。
「もういい、教室に戻る。
ずっとそうして済ましてろ」
缶を上着のポケットに突っ込んで階段を上がりながら2番目の隣を通り過ぎる。
「私も外に出るから」
「はっ?そりゃ寮に帰るなら外に出るだろう」
「はぁー‥」かなり大きめのため息「やっぱり4番目」小声で聞こえるように言い去る。
カツカツと、テンポよく足音が遠ざかって行く下駄箱に行ったようだ。
ここは一階のロビー兼ホールでありそこから2年は右の廊下を通って下駄箱に着く。
音が聞こえなくなった。
外に出るか‥その言葉はこの学校にとって。
「冗談だろ?」
1〜25位は高等部に進学しなければならない。
これは絶対的な概念と言ってもいい、そしてこのランキングは余程のことがない限り高等部でも崩れない15〜25位内の順位の一つ上がった下がったは、あるにはあるがやはり少ない、そして高等部を卒業するとそれぞれ大学に進学する。
この学校の大学に進学するのがやはり多いが外の大学に行くヤツも少なくないそして卒業し両親の企業の次期社長か政治家か官僚になるのが大まかの流れだ。
あの2番目は社長か政治家か官僚の三つに若しくは全てになれる。
そんな奴が外に進学すると決めたらしい。
4番目の俺の時とは比べものにならない程校舎が揺れた事実揺れる程の事件だった。
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