Ⅳ
ボーデンは、噛まれた後の腕をじっくりと見た。
痕は残っていなくとも未だに痛みなどは引いていない。自分の体内に吸血鬼の血が流れていると思うと、ゾッとする。確かに条件を聞かなかったボーデンが悪いのだが、予想もしていない事をされると、流石に戸惑いもする。
「それに吸血鬼の血は、魔法使いにとっても決して悪い事ではないわよ。血を吸われた従者は、吸血鬼の恩恵を受け、魔力が高まる。それに怪我の再生も少し早まるわ」
「それって、半分人間じゃなくなっているだろ……」
ボーデンは頭を抱えた。
自分が助けた女は吸血鬼であり、その上、相当なやり手だった。
今思うに自分が行った行動は、間違っていたと言えばそれに近いが、はっきり言って凄い幸運とは言えない事だ。
「魔力を取り戻した私は、元の姿に戻る事が出来る。一石二鳥じゃない」
ラミアは笑って見せた。
「どーこーだーがー。って、元の姿ってそれじゃないのか?」
耳を疑った。今の姿が本当の姿ではない。
「ええ。本当の姿に戻ったら魔力を相当使うもの。だから、この姿が最適なの。人間に対してそこまで力も使わなくていいしね」
「なるほどな。それじゃあ、お前が本気を出す見る機会は一生無いんだな」
「そうなるわね」
ラミアは自分の席に戻り、微笑んだ。
ボーデンは、ラミアをじっと見て、それから溜息をつく。
「それで貴方はこれからどうするつもりでいるの?」
そんなボーデンを見て、ラミアが話を変えた。
「そうだな。本来は、今日、約束していた人物と会う予定だったが、それが出来なかった。だから、ここから西区の一番大きな街、サールバーツに行こうと思っている」
「それで、その会う人物とやらは一体誰なのかしら?」
「ああ、現西区の––––」
× × ×
二日後––––
東から昇る太陽が、西区の朝を照らすに東区から約三十分後の日の出だった。午前中は晴れ、午後から曇りの予報が出ている。
列車は、
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