部活のマネージャーとバレないように付き合うには

九条 けい

好きになってもらいます!

第1話 プロローグ

空閑大樹くがたいきくんのことが好きです! 私と付き合ってください!」


 高校一年生のクリスマスイブ。俺は一人の女の子から告白されていた。その女の子の名前は和泉瑞波いずみ みずは


 部活が終わって帰ろうかというところで呼び止められ、誰もいない部室で人生で初めての告白をされたのだ。今まで生きてきた中でも一位、二位を争うくらいに嬉しい出来事。


 和泉は頭を下げて片手を俺の方へと向けている。この手を取れば俺たち2人は晴れて恋人同士。彼氏、彼女の関係になれる。想像しただけでも楽しい毎日がこれから送れるだろう。


 手を繋いだり、夜にちょっと声を聞きたいからと言って通話したり。もっともっと出来るに違いない。


 そして俺は和泉のことを好きだった。今、告白されたからではなくて中学のときには好きだったと思う。もちろんこの気持ちが変わることはなく、好きな人にこうして告白されたのだからこの手を掴む以外に選択肢なんて無い。


 でも……俺には出来なかった。その手を取ることが。


「ごめん……俺は付き合えないよ。ごめん……」


「理由……聞いてもいいかな……? ちょっと気になっちゃって」


 頭を上げた和泉が悲しそうな顔をしながら俺に聞いてくる。「好きだけど付き合えません」となんてこの場面で言える訳がない。そんなの納得してもらえないだろうし。


 俺だってそんな返答で分かりましたとはいえない。だからってこうして真剣な気持ちを伝えてくれた相手に嘘をつくこともできない。


「あの……その」


「あ、分かった! 私のこと恋愛対象として見てなかったってことでしょ! それなら仕方ないね。そうとなったらたくさんアピールして私のこと大好きにさせちゃうからね! だから覚悟しててよね!」


 そういうと和泉はくるっと身を翻してタタッとかけて行く。その時に目の辺りを何度も拭っていたのを俺は見てしまった。




 そして部室に一人取り残された俺。ただ、ただ天井を意味もなく眺めていた。夕陽が窓から入ってきてちょっと眩しい。


「はぁ……どうしたら良かったんだろ」


 付き合えない理由はしっかりとある。でもこれは和泉に言うべきではない。誰が聞いたってふざけている理由なのだから。


「とりあえず帰ろう……」


 女の子を。それも好きな人に涙を流させてしまった罪悪感に苛まれながら俺は家へと帰った。




 こんにちは。九条 けいです。読んでくださりありがとうございます! もし、少しでも面白いと感じていただけたら応援、★を頂けると嬉しいです。待ってます!







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