2章 第16話
「おいシノ!あんな言い方はないだろ!?」
「じゃあ、上辺だけ優しくして何時かリナちゃんが命を落とす事になった方が良いって?」
「んな事言ってねぇ!ただ今のお前の言葉は、少なからず私情が混ざってた。違うか!?」
「…。」
確かに彼の過去を思えば、そう言いたいのも理解出来る。だが、だからと言って傷付けて良い訳では決してない。
「…確かにシノの言う通り、リナにも問題はある。お前なりの優しさで、注意したのも分かる。けど、一方的に責めるのは違うんじゃねぇの?」
シノは何も答えない。ただ少し俯いて、地をボーッと見つめているだけだ。
「もう!そんな話より早く追いかけないと!」
「ラリア…。って、さっき単独行動は危険って言ってたけど、なんかあるのか?」
「…この街、なんかおかしい。多分、まだ闇影が居る。それも複数体。」
彼女の言葉を聞いてギョッとする。シノと二人で戦った蛇、そして先程倒した人形の姿をした闇影。それ以外にもまだ居る等今までに前例がない事だった。
「おいおい、二体だけじゃなかったのかよ…!」
「…二体?」
首を傾げるラリアに、首をひとつ縦に振って肯定の意を示す。
「ああ、さっきシノと二人で倒した奴がな。もっと言うと、少し前にも闇影が現れて何とか倒した。それも失技持ちの。」
初めて話す事実に二人は目を丸くさせる。失技は高レベルの闇影しか持っていない。となると、どれ程の強敵か否応でも分かると言うものだ。
「…ねぇ、ノ…」
「早くリナを追わないと!ラリア、着いてきてくれ!」
ラリアが紡ごうとした言葉は、ノアの叫びによって掻き消された。耳にすら届いていない。それを察知したラリアは、憂いの色を浮かばせながらも静かに頷いた。
「まだ遠くには行ってないはず…。早くした方が良さそうね。」
「ああ。シノも手伝えよ?悪気はなかったのかもしれねぇけど、あいつが一番言われたくなかった事を言ったツケは払ってもらうぞ。」
例え立場が違おうと、幼馴染みとしてずっと共に過ごしてきた。だからこそ、彼女の心が手に取るように分かるのだ。自分の居場所を否定される…それは、リナにとって何よりも耐え難い言葉だった。
「…分かったよ。余り僕も彼女の事情を知ってる訳じゃないし…。ちゃんと謝るから、早く探そう。」
「ああ!」
ほぼ同時刻に現れた複数の闇影。それに少しの悪い予感を覚えながら、ノア達は走り出した。
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