第2話
「あ、この辺に日用品売ってる店ありませんか?」
4階の蛍光灯を取り替えている時だった。2週間ほど前に引っ越して来た4階の木津さんが扉を開けてスマートフォンを弄り、暫く困ったように固まったので脚立を片付けながら僕から声を掛けた。
「鍋とかフライパンとか、ある程度生活用品纏めて買いたいんですけど…」
生活用品がまだちゃんと全部揃ってないらしく引越してきたばかりの木津さんはこの辺りの地理も詳しくはないらしい。
「ああ、じゃあ僕が案内しましょうか?丁度買い物に行こうと思っていたんで」
「本当ですか、助かるなぁ。俺の荷物も多くなるし、長谷川さんも買い物するなら車の方が良いですよね。俺が車出しましょうか?あ、持ちますよ」
トントンと進む相手の提案に頷いたのは彼が提案してくれた車についてなのだけれど、彼は後ろに次いだ言葉にと受け取ったのか、それとも両方か、僕が手にしていた脚立を持ち上げてエレベーターのボタンを押した。
「脚立、一階の倉庫みたいなとこですよね?」
「そうそう、良く知ってますね。僕言いましたっけ?」
「一度、長谷川さんが出てこられるのを見掛けました」
木津さんは僕のことを管理人さんではなく長谷川さんと呼ぶ。管理人の僕ではなく長谷川朋樹という一人の人間として接してくれているのかと思うと少し嬉しい。
2畳程の掃除道具や庭の手入れ道具なんかを置いてある倉庫に脚立を仕舞うと財布を手にして、着替えて行こうかと少し迷って眼鏡を押し上げた。。
そして首を横に振る。何を意識しているのだろうか、誰かと出かけるのは久しぶりだからかも知れない。少し緊張しながら、木津さんの車の助手席へと乗り込んだ。
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