僕、オーラが見えるんです

坂本ジャック

第1話 出会い

       


 それは、僕には関係のない出来事だと思っていた。


 九月下旬、季節はずれの転校生、初花はつかユリ。かわいいことは認めるけど、そんなことはどうでもいい。

 僕は今日も一人家路を急ぐ。ゲームの続きが気になるからだ。


「ちょっと、待ってよ」

 校門を出ようとした時、後ろから声を掛けられた。

 振り返ると、初花ユリが立っている。


「あなた見えるでしょ?」

 何を? パンツだったら見えないし、もし見えていても教える訳がない。

「オーラが見えるでしょ?」

「何言ってるの? 意味がわからん」

「嘘よ! あなたは見えてる。私には見える」

「どういうこと?」

「私にもオーラが見えるのよ」

 自分を指差す初花さんは、なんだか興奮しているようだった。



 彼女の言う通り僕にはオーラが見える。

 小学校一年生の時、それが自分だけの特別な能力だと知った。能力を友達に話すと、みんな気味悪がって離れていく。

 だから、それ以後、自分の中に封印したのだ。



 僕は彼女の真意を知るために、もう少し話すことにした。

「どうしてそう思うの?」

 僕の問いに、隣を歩く初花さんは待ってました、と話し始めた。

「私は、オーラが見える人のオーラが見えるのよ」

 韻を踏んで、ラッパーですか? 

 僕が黙っていると、彼女は続けて質問してきた。

「あなたは、どんなオーラが見えるの?」

「――さあ、知らない」

 曖昧な返事で様子を見ることにした。

「判らないのね。じゃあ、一緒に調べましょう」

「調べる? 何を?」

「あなたの見えるオーラの種類よ」

「オーラに種類なんてあるの?」

 そんなこと、僕は考えたこともなかった。

「当たり前じゃない。人によってぜんぜん違うわよ」

「オーラって、人の運とか、運命とか、そういうスピリチュアル的な事じゃないの?」

「全然違うわよ。何言ってるの? 田名部君って、メルヘンちゃんなの?」 

 名前が出たので、少し自己紹介を──僕の名前は田名部リョウ、高校二年生。特技はなし、趣味はゲームで、女の子に突然話しかけられて、ドキドキしている普通の高校生です。


「バカにしないでよ」

 僕はすぐに否定した。

「あんなのインチキよ。オーラで運命なんて見れないわ。あなたがそういう方向に進みたいんなら、別に止めはしないけど」

「冗談じゃない。僕はあんなに太りたくなし、あんな金髪の使い魔もいないよ」

 昔観たテレビの番組が頭に浮かぶ。

「何のこと言ってるの? まあいいわ、とにかく、調べましょう。もしかしたら、すごく役立つかもしれないじゃん」

「役立つ?」

「お金になるって事よ。才能はお金に換えなきゃダメよ」

 才能? 自分の能力が才能だなんて思ったこともなかった。

 僕は、初花さんに少しだけ付き合うことにした。

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