手紙 クッキーがほしかったの

拝啓 新堂しんどう 春子はるこ 様

久しくご無沙汰ばかりしています。

かねがねご様子をお伺いしようと思いながら、一日は早く、何年も経ってしまいました。申し訳ありません。

新堂先生に授業を教えてもらった日々から早、20年が経とうとしています。

高校ではお世話になりました。

本題に入らさせていただきます。

この度は娘がお騒がせしてしまい申し訳ありませんでした。

ですが、新堂先生-先生の息子さん-は何故、娘にすいとん汁(お餅が入った汁だと聞きました)を食べることを強要させたのでしょうか。

前任の先生には、娘は小麦粉アレルギーだとお伝えした筈です。

前任の先生から聞いていなかったのでしょうか。

何故、誰も止めなかったのでしょうか。

周りの子からお話を聞くと、

「好き嫌いは良くない。」

と無理矢理食べさせたそうです。

確かに好き嫌いはいけません。

ですが、アレルギーの問題は違うものだと考えています。

何故、なのでしょうか。

何故、娘は何処にいても愛されないのでしょうか。

あの子は家でも愛されていなかったのですから。

何故なら、あの日のアレルギーの代わりのおかずはシチューでした。

手作りのシチューってホワイトソースを入れるので、小麦粉を入れるんですよね。

だから私はシチューを作ったんです。

「明日はシチューだ!」

そうやって、楽しそうにはしゃぐあの子の横で。

今まで、7年間。

ずっとあの子に接してきました。

おやつも作った。

服もいっぱい買った。

一緒に、テレビも見た。

時には叱る事もあった。

何故でしょう。

それだけしたのに、可愛いとも、愛されているとも、愛しているとも、

感じなかったのです。

あの子が原因で、最愛の人をこの手で、この世から消してしまったこと。

もっと子育ては簡単だと思っていた。

こんなにも、言うことを聞かないとは思わなかった。

最愛の人との距離がこんなにも離れるとは思ってなかった。

あの子に対してはそんな言葉ばかり思いつきます。

恨む事しか、無いのです。

最愛の人を殺してしまったこと。

その罪悪感の為、私は自首をすることにしました。

今までありがとうございました。

これからもお元気で。


令和元年12月27日

                  楽放らくほう 知華ちか

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る