第13話 鈍銀


鈍色の光る髪を揺らして彼女は私を見つめている。その艶やかな紫の目が私を見つめ、しばらくすると私から目を離し背を向けて歩いていく。


私は彼女を呼び止めようとは思えなかった。夜闇に浮かび上がる白肌とそれを照らす満月を見上げ、これらを間近で見ていていいものなのかと思案した。私からすると、酷く羨ましく思うほど美しいから。


「なに?」と彼女は小さく呟きながら少しだけ振り返ってまたこちらを見つめている。私は驚いた。普段は殆ど笑みを作れないはずの口角が動き、言葉がその口から聞こえる。


夢なのか現実なのか判別がつかなくなっていた私は、彼女の名前を呼んだ。そうすると彼女はス、と目を細めて私の目の前まで近づいてくる。


彼女は私の耳元に唇をちかづけて、少しだけ掠れた声で「……」



……気づけば私はいつも通り布団の上で目を覚ました。

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