第10話 対話



ゆめなんざどこにもないさ、と彼は嗤う



「だってよ、お前の希望通りには何も進まないぜ?知ってんだろ、この先のことを。この先どうなるのか、どう転落し、どう死んでいくのかを」



やめてくれよと私は答えた。

そんな事を言わないでくれと、自覚させないでくれと。



「過去に犯した罪の精算をお前は未来に投げ続けている。それは本当に向き合ってるとは言えない。だから俺はお前に忠告してんだ」



知っているよ。わかっている。わかっていて今何も出来ないのは、私の中に残ったプライドのせいだ。



「なんならそのプライドを早く捨てちまえ。その方が今も、未来も、楽になれる」



嫌だ、捨てたくない。もし捨てて全てを打ち明けてご覧、どうなる。



「全部お前の中から消し去られるだろうな?心の支えであるはずのものも、自由も、何もかも。だが、お前はそれが恐ろしいのか?その先を知っていても?」



人は己を変えることを恐ろしく感じるからね。特に、現状が幸せだと信じている場合は特に。



「お前はいつからそれほどに歪んだのか?元はこうじゃ無かったのは俺も知っているが。」



さぁね、気づいたら真っ黒な糸が絡みついていたよ。それは私から離れることも無い、消えることも無い。きっと

一生、私は逃れられない。



「逃れられる方法はただ一つ」



……己を完全に捨てること。



「本当、理解していても行動に移さないトコロだな。お前の悪い面は。」



さすが、私のことをよく分かってるな。



「それは、なぁ?俺を誰だと思っている」




ええ。君は、私の--

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