第5話 黒羽

思い出した話を短いながらだけど、かく。

真っ黒で大きな翼を広げながらわらっているヒト。


果たして彼が人なのかは正直私にもわからない。



目は閉じていて、少しだけ長い黒髪で。

口元は静かに微笑んでいる。


ゆるい、手が隠れるほど長袖の服。



なのに、私以上の荒々しさを持つ。

暴れる時は声無き声をあげ、真っ黒い翼を広げる。


昔昔、迂闊に「おかえり」と微かに呟いたそのわたしの近くにいた。



私より何倍も力が強くて、私より何倍も人に肉体的にも精神的にも痛さを与えられる。



私と性格がおそらく真反対の、私がすごく大嫌いなヒト。




きっとその目は赤いのかもな、と今更ながら思考の隅で思った。

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