俺、高校生活失敗したら、変なことになりました。
白タオルSHIRO
第1話俺、高校生活最大の失敗!?
2020年4月
俺、
「今日からの3年間、ここで過ごすのかぁ〜」
ぼそっと俺がつぶやくと、横から急に肩を組まれた。
「おっす健吾!今日からまた3年間よろしくな!」
フレンドリーな感じで話しかけてきたのは俺の3歳からの付き合いで、親友の
「またお前と3年間を過ごすことになるとは、最悪だな!」
こんな軽口を叩きながら俺たちは華やかな桜が立ち並ぶ前の門をくぐり学校内の入学式会場でもある、4階の体育館へと進んだ。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「以上で私の話を終わります。みなさん3年間この学校での生活を有意義で楽しいものにしてください。」
入学式は慎ましく進み、テンプレがかった校長先生、来賓の方の話も終わり、いよいよ入学式も大詰めだ。
「最後に新入生代表からの挨拶です。新入生代表、中村勇太君!」
「はい!」
そうなんです。俺の親友はこの学校の入学試験成績トップで入学するようなやつなんです。それでいてイケメン。。。あぁすこしだけ羨ましいぜ。
そんなことを考えているうちに、勇太は壇上に登っていた。
「太陽の光が満ち溢れ、命が生き生きと活動を始める春、僕たちはこの山川高校に入学します。」
勇太の挨拶が進んでいく。俺はぼーっと勇太のことを見ながらこの後の展開を頭浮かべていた。
「先生方、そして僕とともに過ごしてくれる皆さん、3年間よろしくお願いしみゃす。」
少し重苦しかった会場に笑いが起きた。俺は内心でやっぱりな。と思いながら普段の癖で「勇太もう一回!」と叫んだ。この時にみんなが僕の方を向いていたことなんて気づいていなかった。
「すいません(笑)気を取り直してもう一度。先生方、そして僕とともに過ごしてくれる皆さん、3年間よろしくお願いします。新入生代表中村勇太。」
勇太がお辞儀をすると、会場中が拍手で包まれた。
「以上で平成32年度、京都市立山川高校の入学式を終わります。一同、礼。新入生はこの後1階、アトリウムにてクラス発表を行いますので、一階で確認の後、指定された教室に入ってください。」
教頭先生の指示のもと俺たちは順に退場していき、1階へと向かっていた。
「そういえば健吾、お前俺に向かって叫んでた時、めっちゃみんなから見られてたぞ???」
と、笑いながら勇太が俺にそう話してきて、俺はその光景を思い出していた。。。
「うっわーーーーーーーーーーーーーーーーーー。マジやらかしたぁ。まじで俺こんな大人数いる場面で何やっちゃってんのもーーーーーーー。」
「まぁ健吾落ち着けよ。」
「あぁそうだな。とりあえず今はクラス発表だ。」
と、一階のアトリウムに張り出された紙を勇太と一緒に見る。。。
「お前何組?」
「俺は三組だったよ。」
「一緒かよ。学年一位の秀才様と一緒のクラスなんて、悲しいぜ。」
「まぁまぁ、そんなこと言わずに、またもう一年一緒に過ごそうぜ。」
勇太にそう言われて俺たちはS403と書かれた1年間過ごすクラスへと向かっていった。
余談にはなるが、この学校は1学年全部で6クラスで構成されている。そのうちの1,2組が普通コース、3,4,5,6組が特進コースとなっている。しかし、実際のところ授業内容にほとんど違うところのないというのが実情と聞いている。なんでわざわざコースの違いを設けたのか。。。謎だな。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「じゃあ皆さん席についてください。」
この先生の掛け声で一斉にみんなの視線が教卓へと集まり、HR開始の合図となる。
「ではひとまず色々と説明しなければならないことは置いといて自己紹介からしていきましょうかね。まずは私から。このクラスを1年間担任させていただく
教室内が拍手で埋まる。割とイケメンな先生だから女子がちょっとそわそわしてるのが見て取れる。
「ではね、今名簿順で座っていただいてると思いますので、一番最初の安立君から自己紹介お願いします。」
「安立勇吾です。好きなものは…」
と安立君からの自己紹介が始まった。俺はあぁこの時期になると嫌な思い出が。。。と頭を抱えながらそのことを思い出していた。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「3年3組の一ノ宮健吾です!好きな食べ物は揚げ物全般、嫌いな食べ物はイカスタ映えする食べ物!イカスタ映えを楽しんでる奴ら全員嫌いです!1年間よろしく!」
クラス全員が拍手を忘れて気まづそうな表情をしている。あわてて当時の担任が、
「はい。けんごありがとう。次行こう!」
と促してくれたおかげで、その場はうまく収まったがその後がひどかった。。。1年間俺はクラスのほぼ全員から冷たい目で見られるようになったんだった。あの時はただ罰ゲームで今思ってることを自己紹介ついでに言うというものだっただけなのに。。。うまく溶け込むことができなかった。。。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「はぁ。。。」
こんな感じで俺は自己紹介には全くもっていい思い出がないんだよなぁ。なんでこんなことしないといけないのか。どうせ、そのうち顔と名前くらい覚えるだろ。とりあえず無難な自己紹介でもしておけば勇太パワーで補正でもかかるだろ。。。
「んご!けんご!!!」
「ふぇっ!?」
「次、お前の番だぞ!!!」
やばいやばい、自分の過去を振り返ってるうちに気づいたら自分の番が来てたようだ。ごめんね。前の人全く聞いてなかったよ。。。
そんなことを思いながら、俺は立ちあがり、丁寧に、丁寧に自己紹介を始めた。
「えー、本日からこのクラスで一年を共にさせていただく皆様、私は一宮健吾と申します。好きな食べ物は揚げ物全般で、嫌いな食べ物は、インスタ映えする食べ物全般、嫌いな言葉はインスタ映えで…」
「おい!健吾!大丈夫か??」
そうやって声をかけてきてくれたのは勇太だった。その声を聞いて今話したことを反芻すると、、、やべぇ!!!どうしよう。。。過去の思い出そのまま話しちまったよ。しかも、初対面の人らに。。。
「あー、えー、今のなしで一ノ宮健吾です。身体を動かすことが好きです!よろしくお願いします!」
急いで訂正したが。。。おわったあああああああああ。このクラスの冷めた目よ。。。俺このクラスもうやめてぇ。。。。
「ふふっ。一ノ宮健吾君ね。」
と呟かれていたみたいだがこの時の俺は全く気にせず机に突っ伏していた。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「以上でHRを終わります。入学式前の説明会でもあった通り、再来週には当校独自の取り組み【探索】の実践授業として泊りがけの授業があります。あ、ちなみにですが探索はアウトドアなものではないですので今一度注意しておいてくださいね。」
やっとこさHRが終わった。ほとんど担任の話なんて聞いてなかったが。。。しかもクラスのメンバーの顔なんて見てねぇし。。。あ、でも入学式の時に俺の隣にいた子。。。えっと、名前なんだったかなぁ。えーと、留奈だったかな。あの子は可愛かったから覚えてるんだよなぁ。ま、いいやとりあえずいつもの場所行くか。
「おーい勇太!!いつもの場所行こうぜ!」
「おーけー!今準備するから待ってて!」
「了解!校門の外で待ってるな!」
中学の頃からずっとしていたようなやり取りを交わし、俺はそそくさと、校門の前に出た。一刻も早くあの空間からぬけだしたかったからだ。そうして校門の外で待っているとあの子が走ってきたんだ。
「わ!一ノ宮君!1年間よろしくねー!じゃ、私急いでるから!ばいばい!あ、そうそう、今日の自己紹介、私は好きだったよー!」
「あの自己紹介好きって言うやつ、このご時世にいないだろ。。。」
こんなことを考えながら、あの子いい匂いだったなぁとか、やっぱめっちゃ顔が整っていたよなぁとか、いろんなことを考えていた。いや、だって俺だって思春期男子な訳じゃん。そんぐらい考えちゃうよねうん。。。
「わり!健吾待たせたな!」
そうこうしているうちに走りながら勇太が俺に声をかけてきた。割と一人で考えていたようだ。勇太が俺に追いついたと同時に俺らは一旦自宅に戻り、いつもの格好に着替えてからいつもの場所にむかっていった。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
俺と勇太はいつもの場所に向かっていた。その目的地とは、学校の友達には絶対にバレたくないと思っている場所だ。それは…入った瞬間に耳を一瞬塞ぎたくなるような重低音に、スポットライトの明かり、好きなものたちのコールがここぞとばかりに響く場所。そう、アイドルライブの会場だった。
「やっぱここに来るとテンション上がるよなぁ〜」
屈託のない笑顔で楽しそうに勇太が話す。こいつやっぱりここにいる時が一番いい笑顔だよなぁ〜。こお笑顔見た学校の女の子たちは惚れるだろうなぁ。とかそんなことを考えながら、今日のタイムテーブルを確認し直した。
「19時20分からか。後二組後だな。」
俺らの今日の目当てのグループは、”iris"だ。花の名前だな。えっと確か、アヤメのことで語源はギリシャ語の虹を表すことだったとかなんとか。。。とにかくアイドルではあるんだが、普通のアイドルとは一線違うんだよなぁ。なんと言うか、アーティストに近いと言うか、観るのと聴くのを楽しんでしまうって言うか。。。まぁそんな感じだな。こんなことを考えながら、他のアイドルさんも横目で見ていたんだが。。。
「は、え、へ!?」
動揺して変な声が出てしまった。。。そんなわけないよな。うん。と目をこすり直して、もう一度まじまじと見てみた。いや、やっぱり間違いな訳ないか。。。
「ありえないだろこれは。。。」
「どうしたの。って、え!?あれって確か同じクラスの…」
「だよな。多分そうだよな。」
そうである。俺がさっき校門で話しかけられた、留奈その人だったのだ。そんなはずはないだろと何回も見たが、間違いではないだろう。そうこうしているうちに本日のラストの曲のようだ。
俺は感銘を受けた。ダンスのキレや、歌、揃いなどに課題はあるものの、全員が楽しんでいるのが手に取るようにわかる。まるでその感情が観客である俺たちにも流れてきて一緒に楽しくなるような感覚だ。。。
「すげぇな。」
横にいた勇太も思わず声を上げていた。俺と同じ感情だったようだ。それぐらいに彼女たちの演技は素晴らしいものだった。気づけば彼女たちの曲は終わっていた。今日一番の拍手が会場に響いていたのは間違いないだろう。
その後、俺たちは”iris"の演技をいつもと同じように楽しんだ。彼女たちの演技も素晴らしい、いや、いつも以上に素晴らしい。聴き惚れてしまっていた。俺はいつの間にかつーーっと頬を伝う何かを拭った。だが、この涙が"iris"を見ての涙だったか、そうではないかは、俺にはわからなかった。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「いやー、今日のライブやばかったなぁ〜。」
勇太のその一言から始まり、今日のライブの感想戦が始まる。いつもの光景だ。あーだこうだと言いながら、ついにこの話題になった。
「でもやっぱり今日の一番の驚きは…」
「だよなぁ。」
「まさか、うちのクラスにアイドルがいたなんてなぁ。。。」
「しかも、あんなレベルだとは思わなかったなぁ。」
俺たちは帰路につきながら話していると、不意に声をかけられた。
「一ノ宮君!!!」
振り返ってみると、そこにいたのはなんと、数時間前俺に校門の前で話しかけてくれていた留奈だったのだ。名字忘れたからここでは留奈と思っておく。決してそう呼びたいとか思ってるわけじゃないぞ。
そんなことを考えているうちに彼女は俺の横に並び、一緒に帰ろう。と促して歩き始めた。俺も進み出した彼女に歩幅を合わせて歩き始めた。
しばらく歩いていると、少し沈黙が辛くなってきたのか留奈が俺と勇太に向けて、話し始めた。
「まぁ、もう見られちゃったから仕方ないんだけどね、私アイドルやってるんだ。といっても、まだ地下の駆け出しなんだけどね。。。それでね、お願いなんだけど、私がアイドルしてるってことは、学校のみんなには隠しておいてくれないかな。。。」
彼女は少しだけ顔をあげて、潤んだ瞳を俺に向けながら、そうお願いしてきた。こんなこと言われたら俺たちは頷くしかなかった。その代わりにこう付け足した。
「俺たちがアイドルオタクであることも黙っておいてくれよな。それが、条件だよ。」
「それって、私たちの秘密ってことだねっ!」
留奈はライブ会場で見せたばりの可愛らしい笑顔でくしゃっと笑った。俺たちがその笑顔に不覚にも見とれてしまったのは言うまでもないだろう。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
次の日学校へ行くと案の定だ。クラスの周りの奴からの視線が痛い。まぁそらそうか。昨日あんな自己紹介をしてしまった俺に好意的な印象を持つ奴なんていない。俺は中学でも慣れてるからいいんだが、やっぱり2日目からはちょっとくるなぁ。。。
「健吾くんおはよ!」
急に挨拶をされたせいでびくっと体をさせながら、なんとか振り返る。そこにいたのは案の定彼女だった。
「おはよーさん。」
俺は彼女にそっけなく返した。昨日の惨状から、俺への痛い視線が彼女に向くのを避けたかったからだ。彼女ならそれに気づいてくれるはず…
「ちょっと健吾君?冷たくない〜??」
なんてこった!俺に追い打ちをかけてきやがった。本来なら嬉しいはずなのに、、周りのえ、あいつに話しかける人いるんだ。みたいな視線が余計に集まってきたじゃねぇか。。。
「そんなことねーよ。ほら、先生きたぞ。」
「ほんとだー!また後でね!」
「はい、皆さん座ってください。今日の一時限目はですね。この学校恒例の2週間後に控えた、探索合宿についての話し合いと班決めを行いたいと思います。」
あー。終わった。俺の平穏はしばらくないようです。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます