第94話 熱闘孤児院?
疑問と不安を抱えながら孤児院を案内して貰う。
相変わらず孤児院は綺麗に清掃されているし色々な物品も揃えてある。
俺が作った怪しいゲーム類まで何故か色々揃っている。
しかも様子から見て結構使い込まれているようだ。
子供達の部屋も個室では無いけれど、2~3人に1部屋くらいでそこそこしっかり整理されている。
昨年も思ったけれどやっぱり手が行き届いているな、ここは。
この辺は領主であるスリワラ伯爵の方針だろう。
さて、図書室に行った処で孤児達が待ち構えていた。
「さて、皆さんお待ちかね、
あの本?
そう疑問に思った俺に大机上に置かれた3冊の本が目に入る。
教団教学部が出している一般書の様式だ。
タイトルは……『
これはイザベルが俺の生徒への質疑応答をこっそりまとめたあの本だ!
しかもシリーズ3まで並んでいやがる。
「さあ皆さん、今までこの本を読んで疑問に思った事や更に知りたいと思った事など、何でも質問してください。皆さんの先輩のあのアウロラさんが『何を質問しても全部答えられてしまう』とまで言った2人です。どんな疑問でも全部答えてくれると思いますよ」
そう来たか!!!
◇◇◇
質疑応答は熾烈を極めた。
いや白熱したという方が正しいか。
天動説と地動説とかビッグバン宇宙論とかプレートテクトニクスから地球内部の構造とか。
1組にやられている質問を凝縮されたような状態だ。
更に俺流の一般的では無いが覚えやすい施術の考え方についての質問まである。
つまりはイザベルが出したシリーズの3冊全てに渡って質疑応答している感じだ。
イザベルには罰として、この世界における一般的な回答を一緒に答えて貰った。
そうしないとこの時代的に知識が歪むかなとも思ったのだ。
ただ俺、頑張った。
出た質問には全部答えたし場合によっては施術で実演したりもした。
中でも評判が良かったのが『地動説と天動説の実験的証明』だ。
これを答えるために俺は孤児院の玄関ホールを借りた。
使うのは丈夫な長い糸とそこそこ重い錘。
そう、フーコーの振り子だ。
「さっき説明した通り、地面が動いていないならこの振り子はずっと同じ方向に揺れている筈だ。逆に動いているならこの振り子の向きは変わってくる筈だ。どれくらい動くかはさっき図で説明した通り、1日で半周より多い位になる筈。だから今日だけはここに風とか他の原因で振り子が動かないようにして、この振り子が動く方向を見てみて欲しい」
これで勉強をただの知識の記憶と思わず、その知識を裏付けている構造や仕組み等に興味を持ってくれる子がいるといいんだけれどな。
そんな事を思いながら白熱の質疑応答会を終える。
「お見事でしたわ。私が聞いていても面白かったです」
「今度これをやるならば事前に言っておいて欲しいのです。色々用意するものもあるのですよ。それなら使徒様のように『土が液体化する』なんてのを実際に熱の施術で見せるような危ない真似はしなくて済むのです」
「そうか、結構ウケていたと思うんだけれど」
「やり過ぎなのですよ。孤児院を燃やさないかとヒヤヒヤしたのです」
「ごめん」
そしてイザベルに言いたい事を思い出す。
「でも俺に内緒で勝手に妙な本を出すのはやめてくれ」
「あの本の内容は全て間違いなく使徒様自身が言った事なのですよ」
確かに内容そのものは正しいというか俺が言った憶えのある事ばかりだ。
イザベルの記憶力は相変わらずとんでもない。
だが。
「それでも、だ」
「それにあのシリーズ、
「おい!」
そんな俺達を見てアンナ嬢が横で笑っている。
「イザベルも前より明るくなりましたね。前はいつも考え込んでいる感じだったのですけれど」
「なんやかんや言って今は楽しいのですよ」
「そう見えますね。父もそんな事を言っていましたし」
父ってスリワラ伯爵だよな。
確かに街の見学会で会ったけれど何を言っていたんだろうか。
微妙に不安だ。
イザベルもその辺に突っ込まないし。
「さて、昼食の後、使徒様やイザベルのおかげで出来た新しい産業の現状をご案内致しましょう。それ以外にも色々何か出来ないか等研究もやっていますし。アレシア司教もそこにいらっしゃると思いますよ」
よし、気分を入れ替えて見学と行こう。
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