第49話 俺達の誤算
正直俺とイザベルは甘く見ていた。
スコラダ大司教の能力と行動力を、である。
ウェネティに2泊、フェルシナに2泊、フロランスに2泊した後、俺達が本部に帰った時には全てが終わりかけていた。
具体的には、
○
○
○
○ 今までの会計制度そのものが
○ 他にも特定教団に委ねられていた業務を見直し、国及び領主がやるべきと判断された事業は各教団から国等に移管する
なんて事になっていたのである。
ぶっちゃけ俺やイザベルが挑もうとした国等の改革の半分以上が実施済あるいは実施に向けて動き出してしまった。
たかが1週間の間に動きすぎだろう。
いったい誰が何をしたんだ!
色々と風聞では聞いたが正確な事は何一つわからない。
こういう時は事情通に状況を聞くに限る。
そんな訳で俺達は本部に到着し、出迎えてくれた中からソーフィア大司教を捕まえた訳である。
「私達がいない間に何があったのでしょうか。色々聞こえてはおりますけれど」
イザベルの台詞にソーフィア大司教はため息をひとつついた。
「久しぶりにスコラダが本気で怒ったのですよ。何というかとんでもない勢いで」
怒った? スコラダ大司教が?
俺達は教団改革の関係の稟議書を送っただけの筈だが。
「貴方方からの稟議書、そしてミラン第一教会長アベラルド司教補からの事案報告書で何が誰の指図でどう行われたのか、スコラダは全部察したのですよ。すぐに私の私室まで来て会計改革の件を話すと、そのまま馬車を自分で御してアネイアへ行ってしまいました。もう止めるどころかこっちが意見を言う隙さえ与えない感じです。
ここからは推測になりますがその前にひとつだけ。イザベル司教補は貴方の父親、アンベール国王が中等学校と高等学校でスコラダと同級生で仲が良かった事を知っていますか?」
なんだと!
「初耳なのです。知らなかったのです」
イザベルはブンブンと首を横に振る。
「その関係でイザベルがこの教団に入った時、スコラダはアンベール国王に直々で頼まれたそうなんですよ、娘を頼むってね。だからもう本人は父親代わりのつもりになっていて、私の方にも色々貴方の件で聞いてきたり意見を言ったりもう大変だったのですよ」
「でもスコラダ大司教は私にそんな事は一度も言っていないのです」
ソーフィア大司教は小さく頷く。
「あの人はそういった面に対しては口下手ですからね。あの人の友人のアンベール国王もそうですし。
でも例えば貴方を図書館長にしたのも
うわあ、そんな事になっていたのか。
おいおい。
「更に言うとこの前の国王庁での会議、アレッシオ卿が臨席したのも偶然ではないと思いますよ。アレッシオ卿は同じ高等学校の『法の真偽員』受験サークルでスコラダの後輩でしたから」
うわあ、そこまでやるかスコラダ大司教。
何というかもう……何だかな。
「そんな
ただあの人の怒りは外見には出ないで思考と行動に出るのですよ。
恐らくスコラダがあの夜に話を持っていったのは国王陛下だけではないでしょう。
翌々日には逮捕だの審判だの一気に行われて、その午後にはもう各関係者に
あの人に振り回されるのは久しぶりですけれど本当に参ります」
何だかなあと思う。
もう使徒なんていらないのではないだろうか。
怒れるスコラダ大司教殿が1人いれば全ては何とかなりそうだ。
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