第7章 お金をかけない活動
第29話 料理教室の稟議書
他にもタオルや筆記用具等日用品を買ってみたり。
何処へ行っても女子5人組はとにかく賑やかだ。
3組には他の人との会話経験すら少ないから言葉が通じにくいなんて生徒もいるようだけれど、少なくともこの5人はそんな心配はいらない模様。
多分その辺の難しい生徒は孤児院出身で慣れた先生が担当しているのだろう。
そして俺には比較的やりやすい生徒をつけてくれたと。
ただ本来口数の多い方で無い俺としてはちょいと疲れる。
しかも途中から俺が誰を好きかなんてテーマが再燃したりしたし。
それでもまあ無事に集合時間には元の広場に戻って、そして学校へと帰っていく。
幸いこの遠足は問題を起こさずに終わらせることが出来た。
勿論事前に商店街の皆様にも色々根回しはしておいたけれど。
「疲れたなあ。でもまあ楽しかったからいいか」
「まあお疲れ様なのですよ」
これは留守番組のイザベルだ。
「学校の方は特に変わったことは無かったか」
「火山の噴火の怖さという質問があったので、ガツンと現物実験をしてみせたのです。鉄粉と硫黄粉末を少し使わせて貰ったのです。結構皆さんびびっていたのです」
ああ、あの実験は結構派手だよな。
鉄と硫黄の化合実験。
800度以上になって赤熱してドロドロとなる様子はさぞかし生徒の度肝をぬいただろう。
まだ1年生にそんな実験は必要ないかもしれない。
でも感覚として理解して貰うには色々やってみせるのが一番だ。
「ところで教会を綺麗で通いやすくする計画ってどの辺まで進んでいるんだ?」
「4月の資料ですと3割程度なのです。この中には救護院は分離したけれど施療院の分離はしていない物も含むのです」
「ではその中でも中級以上の住宅地にある独立した教会に限ってみて、こんな試みはどうだ。実は今日の遠足で思いついたんだが」
俺は一般家庭用の料理教室の話をする。
「なかなかいい案なのです。使徒様の案にしては予算が少なくて済むのです」
確かに俺の考えた案は色々費用がかかる物が多かったからな。
「やるならばまずアネイアの教会で試してみるのがお勧めなのです。あそこは教会も新しくて綺麗ですし、近くに
流石イザベル、アネイアなら色々条件が整っているし試してみるのにいいだろう。
「でもそうやって自宅でレストランの味が作れるようになったら、お客様が減るのでは無いでしょうか」
グロリアが自席から疑問を口にする。
「その辺は問題無いと思うのです。レストランのメニューの全種類を教える訳ではないですし、また実際に作るとなるとやはりある程度腕の違いは出ると思うのです。でも近い物が出来れば皆さん喜ぶと思うのです。それに実際にレストランに行ってみようという事にもつながると思うのですよ」
「実際プロが作るのと普通の人が作るのでは同じレシピでも味は変わってきます。ですから副校長のおっしゃる通り心配はいらないと思います」
ロレッタもイザベルの考えを支持した。
俺もそう思う。
「それじゃその辺はまた稟議書作ってソーフィア大司教に回しておくか」
「任せるのです。簡単な材料で誰でも作れてかつ美味しいメニューで引きつける、そう主張しておくのですよ」
イザベルは卓上から紙とペンを取り、さらさらと書き始める。
こうなるともうイザベル様任せだ。
俺は署名をする程度。
見ている間に相談もしていない
「イザベル様ってやっぱり凄いですよね。これだけの話し合いでここまで書けるなんて私では無理です」
「こんなの大した事ではないのですよ。なおここでは私は副校長先生なのです」
今いるのは職員室だからな。
「それに知識を蓄積するのはそんなに難しい事では無いのです。環境と時間さえあれば誰でも出来る事なのです。私自身そんな作業が楽しいから蓄積しまくっただけなのです。
でも最近、蓄積した知識をいかに使うかの方が楽しい事に気づいたのです。その辺は残念ながら校長先生に勝てないのですよ。この料理教室の案だって言われてみればなるほどとは思うのです。でも思いつくかと言えば思いつかないのです」
どうだろう。
俺の実感としては少し異なる。
「俺としては副校長先生のこの能力が無いと困るけれどな。俺ではとてもこんな大司教を納得させられるような文書は書けない」
「その辺人は自分に無い物を求めるのですよ」
早くも稟議書を書き終えたイザベルが署名しろと俺の方にペンと紙を寄越す。
2箇所にサインをすれば稟議書、作成完了だ。
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