第15話 ファミレスの次は?
今回のファミレスには新たな試みも取り入れている。
給料の導入である。
何だそれはと思わないでくれ。
教団の専従者は基本無給が当たり前なのである。
でも今後事業を増やしていくのに専従者以外の雇用は避けられない。
そして専従者は無給、雇用者は有給と差をつけると何処かで溝が出来る。
だから専従者であろうと雇用者であろうと同じ給与を出す事にしたのだ。
専従者がその給与をどうするかは自由である。
一応教団に住んでいるなら食費と住居費はある程度負担してもらうけれど。
実はそうやって教団にあわないけれど自立できないから教団にいる、そんな人材を解き放つなんて目的もある。
逆に雇用した一般人にも教団に関心を持ってもらう事も目的の一つ。
この辺の改革には大司教方が嫌な顔をするだろうと思っていた。
でも思った以上にあっさりと認めてくれ、許可を取ることが出来た。
イザベルのおかげもあるが、大司教の皆さんも改革の必要性をわかってくれている模様。
ならこれを好機にますます教団改革を進めていくのみだ。
さていよいよファミレスの開店。
付近の住宅約千軒にポスティングした結果はいかに出るか。
今回は我々はスタッフに混じらず、ただ付近から様子を見るだけに留めた。
教団上層部による支配という雰囲気を少しでも無くすためだ。
見た感じでは初日は正銅貨5枚キャンペーンのおかげか列まで出来ていた。
でも2日目は空席が多くみられる感じ。
3日目も……と思ったらお昼以降、そこそこ客がいる。
ランチとか午後のデザートとかの需要がどうもある模様。
そして夕食の客も徐々にではあるが増えてきた。
そんな感じで1週間様子見をしつつ報告書を確認した結果。
まだこのファミレスは完全に独り立ちできたわけではない。
でもこの状況なら遠からずそこそこ繁盛するまでになる。
1月もしないうちに黒字になる可能性が高い。
新規雇用者を抱え、更に全員に給与を支払っても利益は得られる。
そんな予測が出来るまでになった。
無論出店の際のコストはかかっている。
でもそれも3月しない程度で回収できると予想される。
何せ教団の建設部等にやってもらっているから建築費や什器代等が安いしな。
「これでこの事業計画も一段落なのです」
うちのスタッフの皆様もやっと一安心といったところだ。
本当はこの4人であのファミレスでお祝い会でもしたいところ。
でも残念だが俺達のようなバリバリの教団専従員には給与は無い。
使徒の俺に至っては月の小遣いさえ未だ支給が無い状態だ。
どうも厚生部がその辺を忘れているのではないだろうか。
まあその辺は置いておくとして。
そんな訳でお金を出してお祝い会は出来ない。
でもまあめでたいという空気は部屋の中を漂っている。
「これでイザベル様とここで一緒に仕事をするのも終わりでしょうか」
そんな事をグロリアが言う。
だが甘い。
俺とイザベルは2人を手放す気は無い。
既に担当大司教の許可も取っている。
「悪いが当分所属はそのままだ。あのレストラン以後もまだまだ色々開発するものがあるからな。だからグロリア、ロレッタ、今後とも宜しく頼む」
2人とも元の部署では色々扱いにくそうだったからな。
貰い受けたいとのお願いに特に反対も無かったそうだ。
まあ使徒様の要望だからかもしれないけれど。
「では明日以降もこちらでよろしいのでしょうか」
「私もそれでいいのですか?」
「ああ。勿論だ」
そんな訳でこの部屋もそのままである。
さて営業が成功して安心、と思ったら色々な意見が出て来た。
レストランという接点が出来たことで、今まで教団に上がってこなかった層の意見が色々吸い上げられるようになったのである。
例えば意見の一つは教会に関するもの。
それだと一般人がふらっと教会に行きにくいというのだ。
あと要望があったのは医療関連だ。
現在病気にかかって何か措置を頼みたい場合。
初級治療や初級回復で治る程度ならどこの教団の教会でも対応してくれる。
でもそれで治らない程度なら
施療院は貧困地域にある事が多くて施設もあまり綺麗ではない。
でも往診医を呼ぶとかなり代金がかかる。
綺麗で通いやすい施療院が欲しいというのだ。
多少お金がかかっても。
俺はこの次はオーベルジュに行くつもりだった。
でもこんな意見が出たからにはやるしかない。
こぎれいな教会を作るだけならソーフィア大司教に投げればいいだろう。
でも新しい施療院を作るとなるとだ。
どうせなら今後の事も考えて色々要素を取り入れたい。
「悪い。俺が言い出した事だがオーベルジュは後回しだ。まずは新しい施術院、この企画を色々考える事にするぞ」
俺達のさらなる挑戦が始まる。
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