第4話 宗教的日課
ここの食堂は社員食堂とか学生食堂といった雰囲気の施設だった。
つまり人がそこそこ入って合理的だが簡素かつ質素。
しかも使徒である俺も大司教の皆さんも皆さん同じ食堂で同じ食事の模様。
全員はこの食堂に入りきれないから4交代位するようだけれど。
なお俺と同じテーブルはアセルムス首座大司教と知らない男性女性。
俺を含めて6人掛けだ。
偉い人も下っ端も同じというのがいかにもこの教団らしい。
内部的にはこの教団らしいしこれでいい。
でも外部に対してもこれでは通用しない事はおいおい理解して貰おう。
特に外部に関わることになる皆さんには。
「それでは夕食を頂きましょう。
「
アセルムス首座大司教の音頭取りで夕食は開始。
なお今の教団では食事中には会話はしない事になっている。
この辺も後程意識改革させようか。
そんな事を思いながら夕食を観察する。
本日の献立はアヒル肉入りスープとライ麦混じりのパン。
パンにはチーズもついてきている。
質素だがスープそのものは結構しっかりしたもので量も多い。
具もジャガイモ、アヒル肉、人参、他葉物野菜が入っている。
肉も野菜も割としっかりしたもので素材の味が濃い。
ただいかんせん味付けが質素すぎる。
薄い塩味のみという感じ。
そしてパンはかなりごつくて固くやや酸っぱい。
ただどれも素材は悪くないと思う。
味付け次第で化けるだろうな。
そんな事を考えながら流し込む感じで食べ終わる。
元現代日本人の俺には味が単純かつ薄味過ぎて味わうまでに至らないのだ。
腹には溜まるし栄養価も悪くないけれど。
これは教団の意識改革、結構大変かもしれないな。
そう思いながら自分の部屋へと帰る。
◇◇◇
翌日。
鐘の音で目覚め、身支度をして前庭へ。
雨が降らない日は起床後全員で前庭で目覚めの礼拝と儀式を行うそうだ。
具体的には聖典の一節を読み上げ解説をした後、全員で聖典の一部を唱和する。
その後に朝食。
この辺の流れは宗教というか教団ぽいなと思う。
なお夜、就寝前も同じような儀式があるが、俺については疲れていたようなので免除したとの事。
他に家畜当番や体調が悪い者等は免除だそうだ。
その辺はガチガチしていなくて大変宜しい。
さて朝食が終わってしばらくした後。
再び呼ばれて今度は会議室風の部屋へ。
いたのは大司教の皆さん4名だ。
「昨日の疲れは取れましたでしょうか」
「ええ、ゆっくり休ませて頂きましたので」
「それでどうでしょうか。宜しければ今後の予定をある程度決めたいと思うのですけれども。無論使徒様は召喚されたばかりですので、希望が無ければ当分の間は現状の視察という事にさせていただきたいと思いますが」
うん、ちょうどいい機会だ。
俺の希望や予定を色々入れて貰う事にしよう。
「まずは教団の施設の主なものを一通り見て参りたいと思っております。特に農場は大規模なものは全部廻らせていただき、昨日と同じ施術をかけさせて頂くつもりです。あの術が早ければ早いほど作物も育ちが良くなる筈ですから。
他に孤児院や施療院等も見て回らせていただこうと思っています。これでも使徒ですので癒しの力は強力なものを与えて頂いておりますから。
その間、昨日お願いした近隣農家のジャガイモ集めをお願いしたいと思います。少量ずつでいいので、出来るだけ多くの種類を集めていただければと。ある程度集めた時点で確認させて頂ければ、場合によっては神の御業を借りて何か出来るかもしれません」
「わかりました。そのように手配致しましょう」
スコラダ大司教が頷く。
「あとは他に調味料や香辛料となる作物の栽培も検討したいと考えております。現在の教団は大変好ましい状態ではあります。しかし
この辺は将来のグルメ的進化に対する布石だ。
「神に仕えるからには清貧を旨とすべきでは無いでしょうか」
これもスコラダ大司教。
勿論この手の意見は言われると思っていた。
だから当然反論も色々考えてある。
「楽しむ事もまた生の輝きであり、
少しは贅沢をして楽しもうよね。
つまりはそういう事である。
また楽しませるのも功徳と考えれば、飲食業だの演芸方面だのに従事する事もおかしいと思わないで済むだろう。
まずこの辺の意識改革をトップにはして頂かないと困る。
そんな訳でちょいとばかり神学論争をさせて貰った。
だが俺はこれでも
最終的にはその立場を使って何とか大司教さん達を丸め込む。
勿論本当に理解してもらった訳ではない。
その辺は今後の実績で色々納得させるしかないだろう。
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