魔法使いが魔法使いになりたくて異世界転生をする
オレオ
第1話明晰夢
一般家庭で生まれ育ち、普通に育って普通に大人になった。
外見も普通、性格も温厚、頭の出来もまあぼちぼちはいいと言う程度、身長はやや低めだがそこまで気にするほどでもない。
だが、どうやら俺は少し変わり者らしい。
ゲーム、アニメ、ラノベが生きがいであるというだけなのだが、この前会社の同僚に言われてしまった。
「もう少し先を大事にした方がいいんじゃないか」と。
とても気の良い奴で唯一会社の外でも付き合いをする友に心配をされてしまった。
何の事を言っているのかは分かっていた。独り身の事だ、もう34にもなるしな。
もう行動を起こしても遅いんじゃないかとも思っている。
恋愛に憧れた事もあるし人並みに性欲もあるが、生まれてから一度も交際すらした事の無い俺は気力も勇気も無い。
先に不安を少し感じても今に不満は無いのだ。仕事以外の時間をすべて趣味に当てられる。
もちろんお金もだ。
と言ってもアニメは録画だしゲームは無課金派でラノベも仕事の合間だとそこまで読めるものでもない。
だから多くは必要ないので貯金も地道に増えていっている。
気持ちの大半はもう独身貴族を続け趣味に生き続けようと決まっていた。
そしてそろそろ連休に入りそれを利用して、普段はあまり出来ない廃人プレイでもしてみようかと考えていた。
そんな俺に転機が訪れようとしていた……
◆◇◆神との邂逅◆◇◆
俺は久々に夢を見た。
仕事が終わりやっと連休に入り、ゆったりとした気持ちで眠りについたからだろうか……
だがこの夢は少し……いやかなり可笑しいと思う。
やたらと覚醒した意識でまっさらな空間に一人座っていた。
すると目の前にぼんやりと人の姿が見え始め声を掛けてきた。
「ねえ、貴方は魔法使いになりたいんですよね?」
男は三十路を過ぎても童貞を守り通せば魔法使いになれる、という都市伝説を引用した悪質な貶めの言葉を掛けられ、悲しい気持ちを飲み込み得意げに言い返した。
「……すでに魔法使いですが何か?」
「え……?」
「何か……?」
と問答をしていると真っ白な空間に相手の姿が鮮明に映る。
それを見た俺は戦慄し涙が出た。
女性なのは声で分かっていたが、容姿が恐ろしいほどの美女だった。
そう、普通に言葉を交わせたならその日一日幸せな気分になれるほどの美女だった。
そんな相手に『貴方はこれから先もずっと童貞ですよね?』と比喩表現されたのだ。
目から汗もかくというものだろう。
「どうして泣いているの……? 理由を聞いてもいい?」
この人は悔しくて歯を食いしばっている相手に追い打ちをかけてきた。
どうしてそんな酷い言葉をそんな優しげな表情で言えるのだろうか……
何故か心配そうにちょっとそわそわしている……
とても可愛い、では無く……ああ、分かったよ。
俺の勘違いか。
確かに子供じゃあるまいしこんな物言いは普通してこないだろう。
腕で涙を拭いながら俺は、ポジティブシンキングを試みる。
(大丈夫、可笑しくない。童貞は悪い事じゃない。紳士なだけだ。
女性の友人も居たし事務のおねぇさんも好意的に接してくれている。
うん。大丈夫大丈夫)
何の事は無い。本当にただのポジティブシンキングだ。
だが俺は、この方法と相性が良いようで割とすぐ立ち直れる。可哀そうな奴を見る目で見られることはわかっているが、精神衛生上楽だから仕方がないのだ。
その前にさ、30過ぎても童貞な男が魔法使いと呼ばれる事なんて普通は知らないじゃんね。
「んん? あっ! 違うよ? 全然違う!
そんな意味で言ったんじゃないからね」
……知っていたようだ。こやつ中々やるではないか。
「はい。見苦しいところをお見せしてしまいました……
あ、質問の件ですが、憧れなんてもう持ってませんよ?
もうこんな歳ですし」
まっさらな何もない白い空間。その場所に居る事に慣れてきた。
変な感じだ。思考がはっきりしすぎて夢とは思えない。
だが、本当に何も無いまっさらな空間で美少女と二人立って向かい合っている。
こんな状況が現実なはずがない。
「あれ? そっ……そうですか。では改めて質問をさせて下さい」
「ええと、答えられる事なら」
「では……あなたの国のゲームやアニメなどによくあるファンタジー世界に記憶を持ったまま転生できるとしたら行きたいと思われますか?」
「あぁぁ……昔は散々考えましたね。
ん~、どうでしょう。
無条件に『行ってみたいか?』と問われれば迷わず行きたと答える所ですが、こういう話は基本戻れず、重い案件の解決を強要されたりしそうなので……」
まあガチなら条件付こうが迷わず行くと答えるだろうがここは大人として……って大人は行きたがらないよね?
もう手遅れか。
それにこれ夢じゃん?
考えてみたら最初の件はあれだけど、美人さんとこんな近くでお話してるし、それが異世界談義とか俺得な良い夢じゃないか!
うんうん。
「そう……ですよね。では戻れませんがほぼ自由に生きて構わないと言われたらどうですか?」
「まあ夢だしぶっちゃけてもいいか。
美人なおねーさんの設定は天使ちゃん? 女神様?」
「設定ではありませんが、地球とは別の星で神をやっております……
ええと質問の方は……」
「俺的にはあなたは天使の方が似合うと思うんだが……
んと真面目に答えるならその前に色々と聞かないと、かな。
女神様は何を成したくて私にどのような行動を求めているのでしょうか?」
「えっ、あっ、はい。
魂の浄化を成したいのです。
そして、皆が幸せになれる世界を作って欲しいのです」
その問いに取り合えず俺は即答した。
「いや、無理だろ」
「ええっ!? どうしてですか?」
聞いちゃう? 俺の夢はそれを聞いていくスタイル?
「まず皆が幸せとかありえないよね。
人はさ、幸せの感じ方すら色々なんだよ。
他人が不幸じゃないと幸せじゃないなんて考える奴すらいる。
その時点でもう全員は無理だよね。平等すら無理なのに、そのくらいわかるっしょ?
てか俺の夢しょぼいなぁ女神がこんな低脳とか……
なんて残念な俺の夢……」
「ううっひどい、私だって頑張って星の為に尽くしているのに……
ひっぐっ……えぐっ……低脳じゃないもん……」
え? ちょっと待て、ここで泣くのか?
人には『貴方はこれからもずっと童貞ですよね』みたいな事を言っておいて?
いや、それは俺の勘違いだったか。
てか、やばい……夢とは言えこんな綺麗な人を泣かせてしまった。
ヤバイよヤバイよ!
なんでこんな少しの事で泣くんだよ多感なの? お年頃なの?
アニメ設定なの?
ん……アニメ設定……?
まてよー?
夢なら別にいいんじゃね?
よし、適当に攻めて涙目でキッ睨む視線でも頂こうか。あれはエロ可愛くていいものだ。
「ええと女神様のお話と態度を要約させて頂きますと、頑張ってるけど上手くいかないのでチョロそうな奴を選び、泣き落としで連れて行き用を足させる。
と言う計画の元で動いていると見てよろしいのでしょうか?」
「ち、ちがっ……そんなつもりじゃ……ううぅ、だってぇ……
でもぉ……うわぁぁぁぁぁぁぁん」
彼女はそのまま座り込んでガチ泣きをされてしまった……
この白い空間が仮に清潔だとしても、こんなのは本意ではない。
ここはクッっと睨んで来て俺がドヤってする所じゃないかな?
いや、そんな事を言っている場合では無い。
さっきは夢だからと強気に出たが例え夢でももう限界だ……
免疫の無い俺が目の前で女性にガチ泣きされたら精神的に持たない。
いや待て思い出せ。
こんな女神様は一杯いたはずだろ?
そう、お腹一杯なほど……
俺の記憶から作られた夢ならきっとアニメ脳で通用するはず。
そして主人公は言うんだ、確か……こう……
「そんなやり方は必要ない。俺のやり方ってもんを見せてやる」
あ、思わず口に出しちゃったけど効果は抜群の様だ。
「えっ……?」っと顔を上げて、もう泣き止んでいる。
ちょっと頬に赤みが帯びている……が、ただ泣いた後だからだろうな。
ふっ、上級者な俺は勘違いはしないのだ。
「やって……くれるの?」
涙目で力なく座り込んだ美女が上目使いで求めるような表情をしている。
やばいぐっと来た。
こんなシチュエーションはもう一生無いだろうし、お気に入りアニメの主人公の口調でも真似て楽しむとしようか。
「ったく、仕方ねぇな……」と余裕を見せつつ面倒そうに後ろ頭を搔いた。
「まずは情報を貰おう。
記憶を持ったままで転生という事は、生まれる所からやり直せると言う事で良いのか?」
「はっ、はいっ! 間違いありません!」
「では魂の浄化とはなんだ?
幸せな気持ちのまま滅ぼしてやればいいのか?」
話を普通に返してくれるので俺はそのまま調子に乗る事にした。
座り込んで見上げたままの彼女は俺の問い掛けにふるふると首を横に振る。
「違います。
あなた達で言う所の性根を叩き直すとか心を入れ替えると言う言葉が近いと思います。
清くあり続けようとすれば魂の汚れも落ちますので。
それと出来れば口調を戻して頂けると……」
俺としてはノリで言ってるだけなんだが、慌てて手を前に出しながらあたふたする様が可愛いな、おい。
もっと、見てみたい……
ならば続けるのみ。
「断る。聞きたい事はまだまだあるんだ。どんどん行くぞ。
ほぼ自由にして構わないと言ったが、その場合は何をさせようとしていた」
「簡単な布教活動を少々と、おそらく心が汚れてしまった者たちと関わりを持ってしまったらあなたは捨て置く事は出来ないと思うんです。
心の色を見る限りは……」
「なるほど。俺を選んだ理由の一つ、と言う訳か……
さて次が俺にとって最重要事項。これ次第ではやる気の具合が変わってくる」
はいキター! 女神に選ばれちゃいました! あなたが特別!
なんてな。自分の夢の中くらいは選ばれるよねぇ。だよねぇ。うん。知ってる。
「な、なんでしょう」
コロコロと変わるオレの表情に困惑を見せながらも言葉を返す女神。
そんな事はお構い無しに言葉を続ける。
「レベルやステータスは数字上の確認が可能か否か。
それとスキルはあるのか? あるなら習得方法を聞かせろ」
「可能ですし、あります。
スキルについては修練で覚えるのが基本なのですが、私の力を使えばステータス表示から経験値を消費して覚える事を可能に出来ます」
なるほど。ここらへんの設定は悪くないな。
というか、明晰夢なんだからVRMMOが体験出来るようなものだろ?
最高じゃん。早くゲームスタートしたいんですけど。
「ほかに能力面で優遇出来るものはあるのか?」
「はい、そこは元々考えてあったんです。
お話を受けてくださるのであれば、先ほどのスキルの件とレベルによるステータス上昇率向上、言語理解、資質Max、思考速度上昇、魔力量上限無し、魔力感度Max、最初から付けられるのはこれくらいが限界です。
限界まで引き出しているので最初は無理をしない事をお勧めします」
「おおう。物語がワンクールですべて終われる位のチートぶりじゃないですか。
まあ一話で終わる程じゃ無いから良しとしておきますか」
「やっと口調を戻してくれましたね。そちらの方が素敵ですよ」
あ、ついあまりの自重無しの設定振りに素で突っ込みを入れてしまった……
いや、もういいか。そろそろ転生させて貰おうじゃないか。
寝ている間にどこまで行けるかな?
あーでも俺の夢クオリティじゃ多分色々残念な結果にになりそうだなぁ……
もちろんやってみるけど。
「ありがとう、女神様!
それで最後にさ、生れ落ちる場所ってのは決まっているのかな?」
「あれ……普通の応答が何故か嬉しい……
一応候補はありますよ。
魔族の国の侯爵家の6男あたりが一番動きやすいのではないかと思っております。
他には獣人の国の第7王子とかですかね」
彼女の口から出た獣人という言葉に心が跳ねる様に踊り思わず声が出た。
「ふぁっ!!!」
「ふぇっ?!」
「ふふふ、獣人の国を希望します。ケモナーとか俺得でしょ。神様、愛してる」
拍子に出てしまった言葉を聞いて女神は目を丸くした後ジト目で睨んできた。
「信じられません! 私これでも神なのですよ?
大雑把にですが心が見えるんです。
思ってもいない告白は不快です!」
おっと、なんかプリプリと怒っていらっしゃる……だがもう君の性格は把握済みなのだ。
メイン属性はギャップ萌えお姉さん。
神々しさのある女神様で綺麗で聡明な外見をしていながら、脳みそという敷地一面にお花畑が咲いているお子ちゃまである。
「これは感謝を表すために用いた言葉です。
女神様はこの世界のアニメを知っている設定ですし、わかるでしょう?
あなたに対する感謝を自分なりの言葉で飾ってみただけですよ」
「うっ……そうでしたか。嘘は……無いようですね」
羞恥心で顔を真っ赤にしてこちらを見ている。可愛い。
「そう言えば目的は聞いたが目標を示してもらってないな。
俺は誰の根性を物理的に叩き直せばいいのかな?」
「はい、言ってませんでしたね……人族です」
ん……?
えっ? 個人じゃないの?
魔王とかじゃなく? 誰かが独裁政権を握っているとかでもなく?
「もう一度言ってもらえるかな?」
「人族です」
ふむ、聞き間違いではないのか。
「んとおおよそでいいので人族の人口数聞いて良いかな?」
「えっと数千万はいると思いますけど?」
ん? その全員を浄化してくれと?
「はい、お願いします!」
「出来るかぁぁ! これが夢でよかったね現実だったら殴ってる所だよ」
ここはせめて数人に絞ってさ、こいつらを何とかすれば自然と上手くいきます、的な言葉はあるもんでしょうよ!
「え? いや……げんじ……ええと勘違いをなされて居るようなので説明させて頂きますね。
個別に相手をする必要はないのです。
能力と生まれる家の力を持ってすればそれなりの地位には上れるはずです。
その力を行使し人の心を健やかなる色にしていって欲しいのです」
「……じー」
ほら、その先の言葉があるでしょ?
まさかここから先は全部自分で考えろって事?
「なんですか! そんな目で見て!!」
「んー設定の穴なのか理由があるのか分からんけどさ理解出来ない所が多々あるんだけども」
自称女神様は「き、聞きましょう」とどもりながらも続きを促した。
なにやら目を逸らしやがったので、仕方なく俺も座り込んでお話を始める。
「まずどうして根元である人族の上層部の生まれにしないのかという事。
二つ目に政治をやって欲しいだけなら能力がチート過ぎる事。
三つ目に他国の地位で何をすればいいんだよって事。
四つ目、神託でも何でも使えばそれで済むじゃん……
俺に接触出るくらいだからコンタクト取るくらい出来るんだろ?
てか転生させられるって事は魂の入れ替えとかも出来そうだし、人族の上層部の人間全員を一斉に綺麗な魂と入れ替えちまえば一番楽に終わるんじゃね?」
と力説しつつ女神に視線を向けると女神は視線を落とし呟く
「ええと、色々考えて頂いたみたいですが答えは一つです。
もう汚れすぎててダメなんです。
人族の地位の高い家に転生しても、能力が高いと見なされれば暗殺されるか隷属させられるでしょう。
それに、魂の汚れは移るのです。
なので汚れていない種族の下で力をつけてもらってからじゃないと、自らも汚染されておそらく何も出来ないでしょう。
神託ももちろんしましたよ?
何度も何度も……
神官に鼻で笑われましたよ。余りに屈辱で一晩中泣きました。
そんな無いに等しい信仰が続いている為、私の力は衰えていく一方なのです。
定着した魂の入れ替えは元々厳しいものがありますし、そもそも汚れていない一族の魂がありません……
と、こんな状態なのですよ……」
身振り手振りが激しく、とても可愛らしい女神様にうんうんと相槌を打ちながら話を聞いた。
なるほど。目を逸らしたくなる訳だ。と、一呼吸を置いてから言葉を返す。
「どうしてそんなになるまで放置したし」
「したくてした訳では……
私500年ほど前に勇者一行に殺されまして、最近やっと復活出来た二代目なんです」
「あーなんか済まんかった。てかもうそれ手遅れじゃないかな?
人の為に色々してくれてる神様を殺すとか……もういっそ滅ぼしちゃえば?」
てかどんな経緯があったら勇者が人の為を想う神を殺すんだよ……
いや、この子も色々足りなくてお花畑だと思うけどさ。人の話を聞く子だよ?
「いえ、今は魂が汚れてしまっていますが浄化さえできれば、きっと……
ある程度数を減らす事は悲しい事ですが我慢するしか無いと考えていますが」
殺されたってのにけなげな……流石女神だ。結婚しよ?
「なんとなくビジョンが見えてきたよ。
俺のする事は生まれた国で力を付けて人族と戦争して勝利した所でやっとスタートラインに立てる訳ね。
……んで人族って強いの?」
「ええ。今の所は私の星で個人でも集団でも最強ですね。
なので戦う以外に道を探して頂いても結構です。
今の時点で無理を言っている事は理解していますし、報酬も可能な範囲で用意させて頂きます」
さ……最強ですか……
まあそれは今は置いておこう。まずは報酬の話だ。
今までのやり取りを鑑みるに、ある程度何を言っても許される感があるし。
ここはからかい半分にかなりな無茶を言ってみよう。
反応見るだけでも可愛いしな。
俺は、じっと女神っ子を見つめた。
「じゃあ要望なんだけど君がほしい」
彼女は目をパチパチと三度瞬きを繰り返し、首を傾げた。
もっと嫌悪感を抱いた顔をされるかとも思ったが、意外と普通だ。
純粋に如何してなのかと首をかしげている。
「ええと何を仰っているのでしょうか……?」
うん、当然の反応だな。でも別の理由もあるんだよな。
そこら辺を説明しながらそれとなく要望をまぜてみるか。
「ああ、俺が君を連れて行きたい理由は三つある。
君は幼い……もっと成長するべきだと思うよ。
トップが無能な程救われないものも無いし。
んで俺は君の星では無知だ。
知識をくれる存在を常時隣に置いておきたいと思うのは普通だろ?
それと報酬として色々と体でご奉仕してほしいなぁなんて……」
「む……の……う……しょうがないじゃないっ!
いきなり不意打ちで殺されて、知識の全部を残す事なんて出来なかったんだから……
私が悪いわけじゃ……」
あれ? ご奉仕して欲しいって言葉に突っ込みを入れてこないだと……?
頭がそっちまで回ってないのかなぁ。
さっきから少しでも煽られるとそっちにしか頭が回らない感じだしな。
一先ず落ち着かせよう。
「ああ分ってる。君は悪くないよ。だけど救いたいんでしょう?」
「う……うん。でも転生だし生まれ直すのよ。
一般常識は勝手に身につくし私が行く必要性は……」
「そこじゃないんだ。常識なんて細かく言えば個人単位で違うしな。
割と稀有な情報が欲しいんだよ。
今思いつくので言えば……ステータス関係とか。
あとは……地脈みたいな、力の源泉みたいのがあるのかとか。
それの活用方法とかもあれば面白いよね。
そんな人が知りえなそうな情報も持っていそうだからさ。それを知りたい時に教えて貰えるというのは大きなアドバンテージになるでしょ?」
神託でって言われたら終わりだけど……
そしたら素直に美人さんと一緒に行きたいと言うか。
「あー、分かったわ。
うん。確かにその方が事がうまく回りそうね……
前回の私も毎度神託して伝わるまで見てるの大変だなぁ、とか思っていたみたいだし。行っちゃおっかな」
おい、そんな情報残すくらいならもうちょっと処世術的なものをだな……
いや、それはもう言うまい……
不意打ちでぬっころされて少しでも情報を残せただけさすが神だと思っておこう。
「ほ……報酬の件は触れなくていいのか……?」
「んっ? エッチな事したいんでしょ。いいわよ?」
「はっ?」
理解していた上に恥じらいも無く了承しやがった……
そうじゃないんだ……ノンノンそうじゃない。そこは恥じらいながらだな……
「ああ、神に性に対しての羞恥心とか期待してるなら無駄よ?
人で言う所のマッサージくらいにしか思ってないし、相手によっては強く不快に思うって程度なの」
あれ? 可笑しいな子供だと思っていた存在がいつの間にか自分より大人になっていた。そんな気分だ……
いや……そんな些細な事はいい。
俺は手に入れたんだ。
リア充への切符をそして物語の一員になれる権利を……夢だったものすべてを!
あ、れ……? ああ、これ夢だった……
すべての力が抜けた。いつの間にか現実と考えて喋っていたようだ。
「ああ、分ったよ。それでいい。じゃあ行こう。送ってくれ」
「ええ!? 待ってよ。私が転生する場所も決まってないし」
「転生……てことはキミの外見も変わる……のか……?」
「それはそうよ。どこにしようかしら」
失敗したと思いながらも会話は進み……
………………
…………
……
そして俺は異世界に転生した。
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