第35章 抵抗は恐怖を掻き立て不幸を生む

 血に塗れた玄関を越え、家のドアノブへと手を伸ばす。吹き抜ける風が、俺の鼻腔へと侵入する。血腥ちなまぐささに、土の匂い……雨の予兆ともいえる、あの独特の匂いが鼻をつく。空など見る余裕はないのだが、空気から察するに、恐らく予報通り雨が降るのだろう。

 それはいい。この玄関の血を洗い流してくれるなら、その雨にも意味がある。


 ガチャリ


 ふぅ、と一息入れ、俺はドアノブを回す。

 ドアは、少年時代よりもずっと重く感じる。経年劣化による蝶番ちょうつがいの錆び付きもあるだろう。だがそれ以上に、この先に待つものへ対する思いが、そうさせるのだ。


 内玄関は、見たところ何も変化はない。もちろん、幼少期に過ごした頃とは全く異なり、物が一切置かれていないという変化はある。物がなければ、ここまで広い玄関だったのかと、今さらながらに驚く。

 すると、奥の方から物音が聞こえてきた。


 シャッ……シャッ……


 あの、廊下の突き当りの部屋……俺の両親が吊るされていた部屋から、何かをいでいるような音が響いてくる。料理のために包丁をいでいるとは思えないが、それでも、金属か何かを磨くような音が聞こえているのだ。


 俺は、なるべく音を立てずに廊下を進み始める。床板は、10年以上も経過しているというのに、浮きもせず、軋む様子もない。それが逆に不気味さを際立たせる。


 そして、廊下の突き当りにまで辿り着いた俺は、未だに不気味な音の聞こえる部屋のドアへと手を掛ける。恐らく、この先に米村が待っている。そして、そこが俺の死に場所となる。


 ドクン


 一つ大きく、心臓が拍動する。俺の体の、限りなく小さな抵抗……それを無視し、勢いよくドアを開けた。


「っ……!?」


 部屋に入った瞬間、俺の目に飛び込んできたのは、こちらに背を向け、何か作業をしている男の姿……そして、次に見えたものは、恐らく人質となっている男の子だ。口にはガムテープが貼られ、目を閉じたまま壁にもたれかかっている。そして、その男の子の座っている辺りの床は、血液ではない何かで濡れているようだ。


 その光景に、少しの間だけ俺は硬直した。それはあまりにも異様な空間であったからだ。叫びもせず、ただぐったりと壁に寄りかかる男の子と、それに対して全く意に介さない様子で何かをいでいる男。さらにそこへ、不気味さに拍車をかけるかのように雷鳴がとどろく。

 不意を突くその轟音に、俺は思わず小さく叫び声をあげてしまった。そこで、その男は俺の存在に気付いたようだった。


「ん? ……ああ、高島くん。来たんだね」


 座ったまま、こちらへ顔を向ける男。やはり、その男は米村だった。しかし、俺の知っている彼とはかなり違う。血色が悪く、目は血走り、口元はかすかに笑っているように見えた。


「……約束の時間、忘れたんですか……17時と、あなたは……」


 震える脚を叩き、俺は質問をぶつける。すると米村は、はぁ、と深いため息をいた。


「そうなんだよ……俺……約束は守りたかったんだけどさ。その子が、どうしても言うことを聞かないんだよ。大人しくしろって言ってるのにさ。だから、ガムテープで口を塞いだんだけど……」


 話を止め、ニヤリと嫌な笑みを浮かべる米村。そして、懐かしい思い出を振り返るが如く、遠い目をしながら、彼はまた口を開いた。


「……ああ、怖かったんだろうなぁ……吐いちゃったんだよ。口を塞いでるのに、さ? 口が塞がってるのに、嘔吐おうとしたらどうなるかくらい、分かるもんだろう?」


 ハハハ、と金属音のような、不快な嗤い声を上げる米村。

 彼の言うことが正しいかどうかは定かではない。しかし、男の子の様子を見る限り、それは事実であった。男の子は、米村に恐怖し、テープで口を塞がれたまま嘔吐おうとした。出口を塞がれた吐物は彼の喉へと戻り、鼻や気管へと侵入していく。

 そしてそのまま、彼は溺れて息絶えたのだ。眼球を動かす様子もなければ、呼吸による胸部の上下動もない。


「な、そんな惨い……」


 男の子の死は、偶然の産物だったのかもしれない。米村は、その名前も知らない男の子を殺害するためにここへ連れ込んだ訳ではないのだろう。しかし、結果として彼は死んでしまった。それを、こともあろうに青春を振り返るかのように語る米村は、もはや正気とは言えない。


「その子は……事件には何の関係もなかったはず。それなのに、お前は……」


 俺の中で、米村に対する恐怖心が憎悪へと変わっていく。罪もない、しかも未来のある子どもを……直接手を下したわけではない、しかし見殺しにしたのだ。そんなことがあって良いものか。


「……口の利き方がなっていないなぁ。目上の人間に向かって、お前、とはね」


 先ほどの笑みは瞬時に消え去り、無表情のまま、米村はゆっくりと立ち上がる。彼の右手には、恐らくずっといでいたであろう刃物が……

 いや、違う。右手にあるものは鋭利な刃物ではない。石のような、角張った何か……そうだ、町工場などでたまに見る、研磨用の素材だ。ということはつまり、彼が長いこと熱心に研磨していたものは、左手にあるはずだ。


「まぁいいさ。どうせ、お前も俺も、ここで死ぬんだからな」


 ゆっくりと、俺の方へと向いていく米村。そこでようやく、彼の磨いていたものが何なのか、分かった。分かってしまった。


「え……」


 彼の左腕から伸びるものに、俺はただ絶句する。

 乳白色に、ややどす黒い赤が付着した、長細い二本の物体……それは、彼の手に握られているのではない。彼の肘の辺りから生えていた。


「そ、そんな……!?」


 あまりの光景に、俺はよろけて尻餅をつく。もう、脚は完全に自由を失っていた。

 その刹那、窓ガラスから強い光が差し込む。黒雲のもたらした稲光に照らされ、彼の凶器はさらにはっきりと見えてしまった。


 それは、彼の腕……いや、


 米村は、自身の腕の肉を何か刃物でぎ落し、むき出しになった骨を研磨していたのだ。人間の前腕には、橈骨とうこつ尺骨しゃっこつの二本の骨が存在する。その二本を、まるで肉食動物の爪のように尖らせている。

 失血死を防ぐためだろうか、彼の上腕の辺りに、ゴムチューブがきつく巻かれている。しかし、彼が歩みを進めるごとに、行き先を失った血液が床へとしたたり落ちていった。


「ぐっ……」


 猛烈な吐き気が俺を襲う。グロテスクを通り越し、もはや得体の知れない何かを目の前にしているのだ。俺は、正気を保つことで精いっぱいだった。


 そこで俺は、ようやく気が付いた。あの死んでしまったのであろう男の子……あの子は、ただ恐怖して嘔吐おうとした訳ではないということを。彼は米村の、自身の腕をぎ落す行為に吐き気を催したのだ。

 それは当然のことだ。蛙の解剖ですらまともに出来ない人間が、この世には一定数存在する。ましてや、年端もいかない子どもであれば尚更のことである。


「ああ……抵抗しないのはいい。無駄な労力を使わされるのは、本当に嫌いなんだ」


 痛みを一切感じていないかのように、彼はひたひたと近づき、俺をその腕の射程距離に捉える。そして、勢いをつけ、左腕を前へと突き出す。


 ヒュッ……


 風を切るように突き出されたその乳白色の物体は、俺の眼前を骨が通過し、右頬を少しかすめた。恐怖により痛みは感じなかったが、流れ出る液体が、つつーっと頬を伝い、顎先へと溜まっていく。


「あ、あれ……おかしいな。目を刺せたと思ったんだが……やはり、片腕だとバランスが取りにくいのか?」


 右手で頭を掻きながら、ブツブツと先ほどの攻撃の自己分析を始める米村。その一瞬を逃さず、俺は震える脚で米村を蹴り飛ばす。震える体にむち打ち、力の限りを尽くして米村に一矢報いようとしたのだ。


「ぐっ……!?」


 不意を突かれ、転倒はしなかったものの数歩後退する米村。結果として、俺の行為は逃げ出す時間を作れなかったうえに、彼の形相ぎょうそうを愉悦から驚きへ、そして憤怒へと変えたのだ。


「……あぁ、抵抗されるのは嫌いだと言ったはずだよな……?」


 ギリッ、と歯を食いしばりながらまた距離を詰めてくる。もう、彼に慢心などない。次の一突きで決めにかかるだろう。

 ささやかな抵抗であったが、何もしなかった訳ではない、とあの世で待つ村田に言い逃れは出来るだろう。もう、それくらいに俺は覚悟を決めていた。目を閉じ、その瞬間を待つ。


「……」


 俺が目を閉じて、数秒は経とうとしていた。死ぬ間際には、走馬灯と呼ばれるものが見えるらしいが、未だにそれらしいものは見えてこない。むしろ、右頬の痛みが俺の生存を証明しているくらいなのだ。

 耳を澄ませてみても、ゴロゴロ、と外で雷鳴が響くばかりで、何の物音もしない。ポタポタ、と音がするのは、俺の体からではない。米村の左腕から垂れる血液と、窓を打ち付ける雨粒が奏でるものだと推測される。


「……?」


 一向に変化をもたらさない現実に、俺は恐る恐る目を開けてみる。目の前には、やはり米村がいる……しかし妙なことに、彼は一切動いていない。腕どころか、髪の毛の一本すらも揺れることなく、その場に突っ立っていた。


 俺は視線を、米村の胸部から頸……そして顔面へと移す。彼は、呆然ぼうぜんとしたまま虚空を見つめていた。それは何か、自分の中にいる何かと戦っているような、心ここに在らず、という言葉がしっくりとくる様子であった。


「ああ……あああ……」


 ようやく米村が口を開いたのは、それからまた数秒経ってからのことであった。だらしなく、だらんと口を広げ、声とも言えぬ、何とも表現しがたい音を発しながら、彼はよろよろと数歩、また後退していく。

 そして、彼は叫び声を上げた。


「ああ、あああアアア!!!! い、痛い!! 痛いィ!!!!!!!」


 左腕を抱えるように倒れ込み、その場でのたうち回る米村。止血のため巻かれていたゴムチューブが、その反動により弾け飛んでいく。緋色ひいろの飛沫が、みるみるうちに部屋を染め上げていく。


「ぐううう……く、薬切れ、だと……!? だ、誰か………あああああ!!!! 誰か、いないのか!!!!! あああああぁぁぁぁぁ!!!!」


 口からは吐瀉物を撒き散らし、目からは赤い涙を流す始末。もはや彼は、話の通じるレベルではなくなっていた。

 そんな彼の豹変ぶりに、俺はまた恐怖し彼から遠ざかろうと腕に力を込める。しかし、そんな光景を目の当たりにして、立ち上がれるはずがなかった。その上、彼の撒き散らす多量の血液が俺の手のひらを滑らせ、後退あとずさることをも許されなかった。


「く、うううう……はぁ、はぁ……ここ、は……」


 ひとしきり暴れまわった米村は、尋常ではない脂汗を流しながら、辺りを見渡している。まるで初めてこの部屋に入ったかのように、周囲の様子を細かく観察しているようだった。


「な、なる……ほど……ぐっ……そう、か……ここは、吉岡の……」


 やがて、何かに納得をしたように項垂うなだれる米村。吹き付ける激しい雨音と雷鳴……それだけが、この世界に存在する音であった。


「くっ……」


 そして、おもむろに立ち上がった米村は、静かに微笑ほほえみながら、俺に話しかけてきた。


「来て、しまったんだな……ここへ……」


 彼の血涙は止めどなく、彼の足元へと流れ落ちていく。立ち上がったことで、一層左腕からの出血量は増していく。

 真っ青を通り越し、もう人間の肌とは思えないほどに白くなった米村は、ふらふらと俺の元へ近づいていく。しかし、先ほどまでの狂気を帯びた彼の表情ではない……それは、事件の推理を話している時の顔付きだった。


「米村、さん……? 元に戻って……?」


 薬物の効果が切れ、マインドコントロールを受けていない状態へと戻った様子の彼。しかし、その代償はあまりにも大きく、そして壮絶だった。

 元の彼に戻ったことは、素直に喜ぶべきところだろう。ただ一つ、彼はもう取り返しのつかないところにまで来てしまっていたのだ。ロクな止血処置をしないまま、自身の腕をぎ落してしまった……今さら正気に戻ったところで、もう彼を救う手立てはないのだ。


「ああ、もう何も感覚はない。寒い、寒くてもう、眠ってしまいそうだ……」


 頭部を左右に揺らし、膝をつく。そんな状況であるというのに、どろんとした眼でありながらも、笑顔で俺を見つめている。


「死ぬのか、俺は……そうだよな……あの人に協力してしまったんだもんな……ははは……」


 そう言って、天を仰いだ米村。また少し、稲光が彼の顔を照らす。そこには、寂しさと後悔の色が滲み出ていた。


「結局、こうなる運命だったのかもな……最初から最後まで、手のひらの上で踊らされ続けて……ぐっ……」

「よ、米村さん……一体、何を……」


 手のひらの上で踊らされ続けた、とは、あの組織における彼の役割を指す言葉なのだろうか? いや、それにしてはおかしい。妄信的な彼が、死に際になって恨み言を零すはずがない。むしろ、組織の役に立てて光栄だ、と思うぐらいな方が適切だろう。

 だとすれば、彼の言葉の意味は……この事件の犯人は……


「ははっ……君に……くぅ……犯人と言われたとき……違和感に気付いたんだ。俺の、記憶……ううっ……明らかに、欠損しているんだと」


 激しい痛みに耐えながら、米村は話を続ける。


「そうだ、俺は……いやしかし、殺してなんかいない……それは、断じて違う……殺したのは、他の……ううっ……!?」


 彼はそこまで言うと、カッと目を見開いた。凝固ぎょうこしかけた血涙がパリパリとひび割れ、羽衣はごろものように床へと舞い落ちる。


「ぐっ……うううう!!! 頭、が……割れる……!!!」


 米村は、また再びうめき声を上げだす。今までとは違う、左腕の痛みを堪えるようなものではなく、頭部の痛みを訴えているのだ。

 薬物により脳の障害が進行した結果、疼痛とうつうを生じたのであれば彼の苦しみは予期できることであった。ただし、それはあくまでも俺の想像の範疇はんちゅうに収まる話だ。常識の範囲を遥かに超えている現状に、俺の一般論というものは、全くの無意味であると思い知らされた。


 普通であれば、そんな異常を生じた場合、顔を上げることすら困難であるのにも関わらず、米村はまた立ち上がったのだ。それも、極めて変質的で、凶悪的な表情へと変貌を遂げて。


 そう、あの薬物がまた、彼の脳を支配し始めたのだ。肉体の機能としてはすでに破綻しているが、それでも最期の一撃を放とうと、高く、高く、左腕を掲げる。


「……全く、真面目な俺とはもう付き合っていられないよな。……ということで、だ。さっさと死んでくれたまえ。そして、俺を……いや、彼女を助けてくれよ。お願いだ、そこを動くなよ」


 眼球は上転し、口腔からは泡のような茶褐色の体液が漏れ出している。もう、言葉は通じない。もはや、俺に助かる道はない。

 こんな狂気に覆われた彼に殺されるのは、御免被ごめんこうむりたいところだったが……仕方があるまい。彼の狂気に気付かなかった、俺の責任だ。彼を信じ、慕っていた俺の、最大の過ちだ。その罰は、甘んじて受けよう。


「死ねぇ!!!」


 彼の絶叫と共に、左腕が俺の方へと振り下ろされる。角度としては、ちょうど胸部から腹部へ向けられた刃。涙も出ないほどに何も感じることのできなくなった俺は、ただ振り下ろされるその二つの刃物を見つめるしかなかった。


 その時だった―――――


「危ない、ハル!!」

「えっ……?」


 背後から、俺と米村の間に人影が割り込んできたのだ。その女性に突き飛ばされ、俺は床に後頭部を強打した。


「うっ……!?」


 強い頭部への衝撃に、朦朧もうろうとし視界がぼやける。ぐわんぐわん、とゆがむ世界の中、俺は目の間に広がる光景を目の当たりにし、損傷を受けた脳をさらに真っ白に染め上げた。


 宮尾 藤花が、俺と米村の間に割り込み、俺をかばうかのように両腕を広げている。そしてボタボタ、と多量の液体が床に落ちる音が室内へと響き渡る。


「宮……尾……?」


 両腕を広げたまま、動かない宮尾。その表情は見えなかったが、彼女の体の震えを見る限り、恐らく……彼女は……


「な、何で……何でッ!?」


 目の前に広がる絶望に、俺はただ悲痛な叫びを上げるしかできなかった。生を諦め、無抵抗に殺されることを選んだ結果……宮尾を……一番大切な親友を、殺してしまった……絶対に守ると言った彼女を、守れなかった。


 そして、宮尾の両腕は静かに下ろされた。それは、時間にしてたった数秒もないことであったのだろう。しかし俺には、その様子はコマ送りに見えたのだ。


「宮尾……おい、宮尾!!」


 咄嗟とっさに起き上がり、彼女に向かって泣き叫ぶ俺。しかしここで、俺は一つ大きな勘違いをしていたことに気付かされる。

 グラリ、と体勢を崩し、倒れ込んだのは……米村だった。


「……え?」


 俺は思わず、我が目を疑った。ドサ、と大きな音を立てて崩れ落ちた米村の左腕は、彼自身の腹部を突き刺していたのだ。


 広がっていく血の海の中、俺はただ呆然ぼうぜんと、その液体の溢れ出る様を見届けていた。すでに多量の血液を流していたせいか、思ったほどに流れ出る量は多くなかったものの、この家の床を埋め尽くさんとばかりに、そのあかは広がっていく。


 そんな中、下ろした諸手を強く握りしめた宮尾が、口を開く。


「あーあ、もうちょっとだったのにな……」


 そう言うと、何事もなかったかのように立ち上がり、倒れ込んだ米村へと歩み寄る。そして、あろうことか宮尾は、米村を蹴り上げた。


「最期まで邪魔をして……本当に嫌な人」


 すでに事切れた様子の彼は、彼女の蹴りにより、ぐにゃりと体を捩らせる。ヌメヌメと赤黒く光る腹部があらわとなり、そこに刺さった彼の骨の白さが、異様なコントラストを生んでいた。

 そして、宮尾は躊躇ためらうことなく彼の遺体をまさぐり始める。


「うん、大丈夫……拳銃はちゃんと持ってるね……さてと、ハル?」


 目的のものを手にした宮尾は、ゆっくりと振り返る。いつもと変わらない、あの屈託のない笑顔を浮かべながら、彼女は手にした拳銃を俺に向けて投げつけた。

 カシャン、と音を立て、俺の目の前に転がってくるそれを、ただ目を見開き、眺める俺。そんな俺に対し、ニコニコと笑いながら、宮尾は言い放った。


「それじゃ、正真正銘、本当の決着を付けよっか。私のエゴに付き合ってくれた、あなたへの感謝と共に」

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