運命に出会い、
@noire_noire
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頭に浮かぶのは子どもの頃に繰り返し聞かされたおとぎ話だ。
敵対する勢力の男女が恋に落ち、困難の末に結ばれて、平和が訪れる。
熱烈で刺激的な夢物語。世界には運命の人がいて、目を合わせれば気持ちが通じ合ってしまう。非現実的、しかし理想だからこそ起こりうる現実。
そういうものなのだと信じて疑わなかった。
「男爵!」
違う。
「ジェダイト男爵!」
違う。
「お待ちしておりました、ジェダイト男爵」
どれもこれも全然違う。
「ご機嫌麗しゅう、男爵。本日もなんと勇ましいお姿で」
流石です、なんて持ち上げる彼女は、整った容姿こそしているけれど、やはり何かが違っている。
18回目の誕生日を迎えてからというもの、毎日のように縁談が組み込まれていた。
物心つく前から共に過ごしてきた執事が連れてくる女性たちは皆魅力的だったものの、誰もそれ以上の感情を抱くことはなく。
少し時間をかけてお互いを知って、という執事の助言を無視し、大勢の同年代の貴婦人を城に招く。
身分も職業も前歴も子持ちも関係ない。
ただ一人の運命の相手を探して、時間も労力もお金も、全てをかけて。
理想とする異国の貴族は、候補こそいたものの、どれも友好的な関係で、年も少し離れていた。
加えて幼少期から夢物語を口にしていたために、婚姻するまで他国へ行くことを禁じられる始末。
気づけば二年の時が過ぎ、10日足らずで20歳。
代々20歳までには相手を見つけ、婚姻を結んでいた一族は、いい加減女遊びはやめろ、と口を揃えて言ってくる。
こっちだって好きで遊んでいるわけでもないのに。
次の誕生日までに相手を見つけなければ、婚約者をたてる。成人してすぐ父と交わした男の約束だけは違えることはできず、躍起になっていた。
そんな時。
「−−−−」
見つけてしまった。
出会ってしまった。
運命の相手がそこにいた。
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