第3話
(今のところ、ロゼッタのゼスへの好感度とゼスからロゼッタへの好感度は互いにほぼゼロ……むしろマイナスですね)
授業中にこっそりノートへ攻略対象者の好感度を書き込んでいく。
もちろんその中心はロゼッタだ。
(残りの攻略対象者は騎士団長の息子、ロゼッタの弟、保健医の三人ですが……身内である弟くんのルートは論外です)
義理の姉弟ならばまだ許されるであろうが実の姉弟の恋愛や結婚はこの世界でももちろん許されない。
(となると残りの候補は二人……)
ロゼッタの弟の名前にばつ印をつけたところでふと気がつく。
(ひょっとしてわざわざイベントをこなさなくてもロゼッタをこっそり見守れば、攻略対象者達への好感度が分かるのでは……?)
下手に攻略対象者に関わって万が一こちらに興味を持たれてしまったら敵対フラグが立ってしまう。ゼスの時には思い至らなかったが、ロゼッタを『ヒロイン』ポジションにするのなら私は極力攻略対象達に接触しない方がいい。
(もっと早くに気がついていれば……!うぅ……済んだ事を悔いても仕方ありません。切り替えていけばいいだけの事です!よし、次からはロゼッタをこっそり見守りながら情報を集めることにしましょう)
ちょうどこの授業が終われば昼休みだ。
ロゼッタは親しい人間と昼食を取るだろう。そこで彼女の人間関係-主に攻略対象達との関係または好感度-の情報を仕入れる事にしよう。
そう思い私は授業が終わるのを待った。
昼休みになり教室を出るとすぐにロゼッタを見つけることが出来た。私と彼女のクラスは少し離れている、もし見つけられなかったらどうしようと思っていたがいらぬ心配だった。
数メートル離れて後を追う。
てっきり食堂に向かうのかと思いきや彼女が向かったのは保健室だ。
ロゼッタが中に入るのを見届けると私は保健室の隣にある資料室に忍び込み、保健室側の壁にぺたりと耳をつけた。
誤解しないでほしいのだがこれは断じてストーカーなどではない、ロゼッタに幸せになってもらう為の情報収集なのだ。
「アーグス先生、湿布をいただけますか?」
壁越しにロゼッタの声が聞こえる。
アーグス先生とは攻略対象の保健医、イアン・アーグス先生のことだ。面倒見のいいお兄さんキャラで誰に対しても分け隔てなく接してくれるが昔恋人を亡くしていてその悲しみを取り除くことで攻略することが出来る。
「また怪我したのかい?オルコットさんは王子の婚約者候補になれるほどの淑女だと思っていたけれど、結構なお転婆さんみたいだ」
(『また』と言うことはロゼッタは何度も保健室に足を運んでいるのですか……もしや先生の事が……!)
攻略対象者二人目にして当たりを引いたのかもしれない。
そう思い二人のやり取りにさらに耳を澄ませようとしたその瞬間。
「おい」
「ぬぁっ!?」
真後ろから低い声がして思わず悲鳴をあげてしまった。
恐る恐る振り替えるとダークブルーの髪を短く切り揃えた男子生徒が一人立っている。彼の事を私は知っていた。
(ヴィンセントじゃないですか!なんでここに!?誰も入ってきた気配なんてなかったのに!)
彼は攻略対象者で騎士団長の息子のヴィンセント・コールスその人だった。
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