【112本目】バックドラフト(1991年・米)
吹替の関俊さんの声、まだ芸風が完成されてない感じで初々しい
【感想】
ユニバーサルスタジオジャパンでもアトラクション化されているレスキュー映画の傑作で行きます。かくいう僕もUSJでのアトラクションからこの映画の存在を知りました。1991年のアカデミー賞でも視覚効果賞をはじめとする3部門にノミネートされている映画です。
アカデミー視覚効果賞にノミネートされたのが【ターミネーター2】と【フック】ですが、のように明確な敵キャラはいない映画です(黒幕は出てくるけど)。
その代わり、【火災】という有史以来人間文明の敵であり続けてきた災害と人類の戦いが、この映画では描かれています。
撮影のために、実際の消防士600人以上がエキストラとして協力し、俳優たちもシカゴ消防署の指揮で実際の毎日4時間の訓練を3週間受けた(実際の火災発生時に消防士について行ったりもしたらしい)、という、消防士へのリスペクトにあふれた映画でもあります。
【バックドラフト】は、劇中で何度も起こるドアを開けるといきなり逆気流で爆風が生じる現象のことですが、映画でなぜこの現象が重要なキーワードとして扱われるのか、という問題については、後半で明らかになる通り、消防士や消防署への予算削減を続ける役所に対しての怒りが関係しています。
【バックドラフト】というタイトルには、人々を火災から救う消防士を取り囲む過酷な状況と同時に、余りにも消防士たちへの敬意に欠けた人々への怒りをも暗喩したタイトルに思えてきます。
また一見公務員に敬意を捧げる愛国的な内容ですけど、主人公たちが【アイリッシュマン】の主人公と同じアイルランド系のアメリカ人であるということを理解すると、この映画で描かれる過酷な消防現場や兄弟愛が余計に意味のあるものに思えてきます。(直接は言及されないけど、「マカフレイ」はアイルランド系の名字らしい)
監督のロン・ハワード自身が言及していることなんですが、アイルランド系は他のマイノリティ以上に家族の絆を重んじ、尚且つ3Kと言われがちなきつい仕事につきがち、と言われる人々です。
なので【バックドラフト】は、【彼らのおかげで、アメリカ人が火災から命を救われている】という、マイノリティ賛歌という裏テーマも持ち合わせているように見えました。
【キャラについて】
弟・ブライアンの成長の仕方がすっごい好きでね……
父親の事故死を目の当たりにしたブライアンは、目の当たりにしていない兄貴のスティーブンと違って火災に対して炎に対して恐怖心を持っている。だから一度消防学校を辞めたりもしたし、憧れの兄貴を目標にして成長しようとしても、空回りするばかりで到底兄貴のようにはなれない……というのが序盤でブライアンがぶち当たる壁なわけですが、そんな彼が新たな師匠・ドナルドの【火は生き物だ。気持ちを読めばいい】という助言によって、兄貴とは異なる自分なりのやり方で火災に対処するという成長を遂げるという、男の自分らしい挫折と成長の物語に胸打たれるシナリオなんです。
またブライアンの憧れだった兄貴も、離婚して妻子と離れて暮らす、という等身大の悩みを持つ人間だった、ということを描写しているという隙のなさも凄いです。
【好きなシーン】
リアルすぎる火災シーンや消防隊内の和気藹々として空間など、映画全体の空気感で楽しむ映画なので、好きなシーンと言われるとあまり浮かばないです。でも強いてあげるとすればやはり上記のように、ブライアンが兄貴のように特攻精神で突き進むのではなく、自分なりのやり方で火災に立ち向かうすべを覚えた、という意味で終盤の火災現場で日の動きを読んで消火するシーンは感情の大洪水でしたね。そのあと瀕死のスティーブンが「俺の弟だ」って自慢するところ含めて。
あと全編にわたって火災・消防現場をリアルに描いてるのに、ブライアンとジェニファーがパーティーを抜け出して消防車の上でヤッちゃうところだけ消防士への敬意もクソもなくって好きですw
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