【113本目】地上最大のショウ(1952年・米)

 中学か小学くらいのころに1回サルティンバンコの日本公演見に行ったけど、空中ブランコの女の子が2,3回ミスってた記憶がある。かわいいから全然許されてたように記憶してる


【感想】

 映画黎明期の時代におけるもっとも有名な映画監督の一人に、セシル・B・デミルという人がいらっしゃいまして。

 第一次世界大戦の勝利後のアメリカで、湯水のように予算をつぎ込んで超豪華なセットや衣装を用意し、当時の観客たちの度肝を抜くような映像で一躍人気監督となった人物です。

 (例を挙げると【十誡】の海が真っ二つになるシーン。1920年代のサイレント映画で同作の特撮はかなり画期的だったらしい)

 今でいうハリウッドの大作映画の流れを作り出した人物の一人といえるかもしれません。


 そのような人物が晩年近くの1950年代に、お得意のお金をかけた豪華主義で作り上げた映画が、この【地上最大のショウ】です。

 ちなみに幼い頃人生初の映画鑑賞をこの映画で体験したことがきっかけで映画人を志すことになった少年がいて、その少年こそ後のスティーブン・スピルバーグだったりするのです。


 この映画で描かれているのは、サーカスとその興行を命を賭けて成功させようとする団員たちの風景です。

 時は1950年代。限られた日にしか来ないサーカスよりも、映画やコミックのようにもっと手ごろなエンターテインメントがある時代。まして近頃はテレビなんてエンタ―テインメントがお茶の間に浸透しだして、益々サーカスは娯楽として最先端ではなくなった、みたいな時代です。

 この【地上最大のショウ】は、そんな時代にあえてサーカスの素晴らしさを訴えた映画であるといえます。

 演者たちのサーカスへのリスペクトも厚く、主演女優のベティ・ハットンはこの映画での撮影のためにスタントなしで曲芸に挑戦しており、上映より少し前のフィラデルフィアでのサーカス興行に特別出演して空中曲芸を披露した、なんてエピソードもあります。


 監督のデミル自身がナレーションをしているように、この映画はサーカスのパレードや曲芸シーンをメインとしたドキュメンタリー要素の強い映画なので、ドラマパート、ことに序盤のドラマパートはチャールトン・ヘストンのような後のスターをメインに動かしつつも添え物感が強いです(芸人としてプライド持って命懸けの曲芸するホリーと、芸人たちを財産として見てるから命懸けの演技をさせたくないブラッドとの齟齬みたいな見どころはあるけど)。


 しかしながら後半では、サーカスの一団にある事件が起きて、サーカスの興行自体が続けられるかどうかも危うい状況に陥ります。

 しかし、チャールトン・ヘストン演じるブラッド座長はそのような状態でも、興行を絶対に中断させようとはせず、負傷中の身ながら興行に使えるものを必死に調査しようとします。ベティ・ハットン演じる花形芸人のホリーはそれに触発され、本番までのショウを何とか形にするための工夫を団員たちに呼びかけ、翌日見事ショウを開催させます。

 どんなトラブルが起ころうとも、使えるありものを寄せ集めてショウを開こうとする【SHOW MUST GO ON】的精神が、この映画のラストシーンにはあふれていると思っています。


  他、サーカス列車を【ノアの箱舟】に例えたり、サーカスのテントを巨人の体に例えたりと、【十戒】や【サムソンとデリラ】を世に出してきたデミル監督らしさのある台詞回しがあるナレーションもポイントです。


【好きなシーン】

 開演前のシーンで、座長のブラッドと団員たちがみんな名前で呼び合ってて、まるで家族のような関係性なのが、古き良きエンターテイナーたちの人間関係って感じで癒されますね。たぶん実際のサーカス団員が、当時ああいう空気だったんだろうな、とも思えてきます。

 あとジェームズ・スチュアート演じるピエロのボタンズ(ピエロメイクだけどアップで見たらちゃんとジェームズ・スチュアート)がところどころで細かい気配りをするシーンも見どころです。

 でもあのピエロ、ビジュアルだけで言えばペニーワイズやジョーカーより怖い。

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