【70本目】セントラル・インテリジェンス(2016年・米)

 【ビッグバンセオリー】とか見てても思うけど、向こうの映像作品のいじめ描写はえげつない。だからこそ【ビッグバンセオリー】の登場人物が見せるいじめ自虐は鬼気迫るものがある。


【感想】

 2018年くらいの時期に、【ジュマンジ-ウェルカム・トゥ・ザ・ジャングル-】、【ランペイジ-巨獣大乱闘-】などのロック様、ことドウェイン・ジョンソン主演の映画が立て続けに公開されたことがありました。今回紹介する【セントラル・インテリジェンス】は、日本では2017年公開で、ある意味ではそれらの流れの先陣を切ったといっていい映画になっています。


 元プロレスラーのロック様と、コメディアンのケヴィン・ハートのW主役なんで、どうやっても細かいこと考えずに楽しむエンタメ映画になるんですが、主役二人の息の合った関係性が評価されたのか、アカデミー賞の前哨戦の一つである放送映画批評協会賞のコメディ映画部門、コメディ男優部門にノミネートされていたりします。

 なお、ロック様はこの映画で組んだケヴィン・ハートとは【ジュマンジ-ウェルカム・トゥ・ザ・ジャングル-】で再度共演しており、監督のローソン・マーシャル・サーバーとも【スカイスクレイパー】で再度タッグを組んでいます。


 CIAの正式名称の前半部分を拝借したタイトルに、銃を握りしめたマッチョマンと黒人のコンビとくれば、【リーサル・ウェポン】的な男子バディ系刑事ムービーかと思ったのですが、蓋を開けると全然違いましたね。

 一人のしがないサラリーマンが、ある日突然元いじめられっ子のクラスメイトと再会して、スケールのデカイ陰謀に巻き込まれるという、巻き込まれ型のアクションムービーでした。


 ですが、この映画で軸となっているのは、高校時代のスクールカースト最上位と最底辺の二人が、その後の人生をどう生きていくか、というテーマです。カースト上位だったカルヴィンは20年後しがないサラリーマンとして、過去と現在のギャップに苦しむ主人公だし、カースト最底辺のいじめられっ子だったロビー改めボブは、筋トレの結果マッチョマンに成長したものの、過去のトラウマは引きずったままです。【青春時代の思い出やトラウマを、大人になってからどう振り切るか】という問題こそがこの映画のメインテーマであり、スパイアクションはその問題と向き合うためのきっかけに過ぎないわけです。


 最終的には二人ともが【今自分がどうなりたいか】という重視することで、過去の呪縛から解放される、という結末になります。僕自身中高時代に色々トラウマを引きずってる人間なので、ラストの同窓会でボブが語ったスピーチには色々救われた気分になって泣きそうになりましたね。暗い青春を送った人、明るい青春を送った分今が暗い人など、幅広い人にお勧めしたい映画です。


【キャラについて】

 ベタっちゃベタですけど、まず過去の高校時代のカルヴィンとボブを描いてから現代の変わりきった二人を映すことで、ギャップによるキャラ立てを終わらせると同時に、二人にとってのアイデンティティであり、トラウマでもある時代の描写を終わらせているのがうまいなって思います。

 後なんて言うかこう、これとか【MIB】とかのバディムービーって、画面上に片方しかいない時でももう片方の幻影が見えるようなつくりになってますね。お互い単独で行動しながらも、相棒に肩か背中を押されている感じで映るんですよ。そう関係性をしっかり描写できてるからなのか単に劇中で二人でいる時間が長いからなのかはわからないですが、結果的にそう見えるのってバディムービーとしてはこの上ない成功なんですよね。


 また過去の自分だけでなく嫁にまでコンプレックスを持ってるカルヴィンや、ムキムキになったのに元いじめっ子(めっちゃ出世してるのがリアル……)を前にして昔と同じようにおびえてしまうボブ、といった具合に周囲の人物との関係性もある程度高校時代を軸にしているところも見どころです。


【好きなシーン】

 【ランペイジ-巨獣大乱闘-】では脇腹撃たれてるのにぴんぴん活動するロック様なんかが見れますけど、この映画でも無敵っぷりを披露してくれます。僕の見間違いじゃなければ、ケツに銃弾を食らってもピンピンしてました。


 一方でドウェイン・ジョンソン(あえて俳優としてこう呼ぶ)って、在りし日のシュワちゃんやスタローンと比べて、どっか繊細な一面を持ち合わせてるキャラの方がしっくりくるんですよね。だから【ジュマンジ-ウェルカム・トゥ・ザ・ジャングル-】の中身オタク青年のマッチョアバターなんかもハマってましたけど、この映画では母校に出向いてトラウマをぶり返したり、いじめっ子にビビるシーン(ガラス窓に過去の自分映ってるとことか……)なんかがあまりにもリアルに感じましたよ。


 ラストのボブのスピーチは基本的に全部感動どころなんですけど、【人と比べるのではなく、自分自身そのものを曝け出そう】あたりが特に涙腺に来ましたね。ボブがこの発言をするからこそ、かつてゴールデンジェットに憧れ、なりたい自分になるために筋トレを繰り返した彼自身の人生が乗っかった発言に聞こえて説得力マシマシに聞こえます。自分もよく他人と比べて落ち込むことが多いんですけど(+暗い青春を送ったので青春恋愛ものの邦画とかが見れないっていうな)、今やりたいことをやる、っていう一見単純なことが解決方法になるのかもな、とか思わされました。

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