【56本目】2012(2009年・米)

 コロナが元凶になる映画だけど別に不謹慎な意図があるわけではない。


【感想】

 ローランド・エメリッヒと言えば、【インデペンデンス・デイ】や【デイ・アフター・トゥモロー】など、世界の危機を群像劇によって描くことに定評のある映画監督です(あと特オタ的には初代ハリウッド版ゴジラw)

 そのエメリッヒ監督が古代マヤ文明の予言を基にして、世界の終末とそれに翻弄される人類を描いたのがこの映画です。


 この手のディザスター・ムービーってたまに人間による環境破壊が原因で取り返しのつかないことになる、みたいなパターンがよくある印象ですけど、【2012】では惑星直列によるコロナが原因で世界の終末が起こっています。

 人間がどう生きようが宇宙のちょっとした偶然で地球の環境は簡単に変わるという展開なので、この時点でこの映画のテーマの一つとなる【自然に対する人間の無力さ】が暗示されています。


 で、予兆パートもほどほどに大都市破壊祭りが始まります。【デイ・アフター・トゥモロー】とかでも思いましたけど、エメリッヒ監督はなんかこう、人口の密集する都市をおもっくそぶち壊すことに一種の美学を見出しているように思えてきますね。

 ゴジラとかの怪獣映画で自分の地元を怪獣が破壊した時に大喜びする特撮ファンって少なくないと思いますけど、人間って大なり小なりそういう、日常を形作る景色が破壊される光景を見たがる【破壊願望】みたいなものを持ってる気がするんです。

 それは何も社会への不満の現れとかじゃなくて、もっと本能的な欲望なんですよね。子供が虫を捕まえて解体したくなるような。

 一連の大地震や大津波のシーンは、自分のそういう本能的な部分に激しく訴えかけるものがあって、まあ正直、興奮しましたねw


 また視聴してて思ったのは、自分の判断で決断を下して即実行に移す人間の姿っていうのが非常に重要なファクターとなっている点ですかね。

 他人(偉い人、声の大きい人)の言うことを聞いた結果破滅してしまうディザスタームービーでは【ポセイドン・アドベンチャー】なんかがありますけど、この映画の主人公一家も他人の車を持ち逃げしたり、ラスベガスの飛行場で警備員の制止を無視して飛行機で飛び立ったり、チベット人の力を借りて違法に方舟(そのまんまだなこのネーミング)に乗ったりと、規範にとらわれずに自分がその場で最善と思った行動を即実行した結果生き延びた、っていうシチュエーションがかなり多いです。

 一方でオリヴァー・プラット演じる米国の司令官が、全滅を免れるため、という名目でロシア人富豪含む人々を見捨てる展開があったりと、独自の判断の負の側面も描いています。どういう対処が正解か、という問題がまるでわからなくなる展開が、より【地球の大自然の、人間の都合考えてくれなさ】を強調していると言えます。


【キャラについて】

 ジョン・キューザック演じる主人公やキウェテル・イジョフォー演じる科学顧問、ウディ・ハレルソン演じる変人など、【インデペンデンス・デイ】にも通ずるベタベタなキャラ設定も王道ディザスタームービー感あって好きなのですが、美容外科医とロシア人一家のキャラ設定が絶妙なバランス感覚!って感じで好きなんですよねー。

 外科医は主人公の元妻相手には色目使うしそれきっかけで主人公disもやるけど、一方で子供にはすごい懐かれてて、主人公とも息子きっかけで打ち解けたりする。

 ロシア人一家も主人公や愛人には厭味ったらしくて嫌な奴なんだけど、家族間の絆は強固で、終盤で富豪の父親は自分を後回しにしてでも子供を方舟に乗せようとする。

 主人公には嫌味だけど別のキャラにはすごく優しい、というある意味すごい人間的な描写が彼らにはなされてて、個人的にこの映画では主人公や科学顧問以上に好きなキャラになりましたね。


【好きなシーン】

 世界がどんどん破滅していって、その中でどう生きていくか?というシナリオの流れで魅せる映画なので、特にこのシーンが好き!と言われると思いつかないかもしれないですね。

 しいて言うなら、上記に上げた主人公一家がとっさの判断の結果助かる一連のシーンかな。

 今思い返すと印象的なのは、【ウィスコンシン州が急に南極になる】という発言が飛び出すシーンですね。こんな一文だけで事態のヤバさを訴えかけてくる発言ある?w

 


 ただ、ちょっと車や飛行機での闘争シーンがアクション映画じみてたのが気になりましたね。ちょっと小粋なジョークとかも挟まったりして、最終的に世界救われる【インデペンデンス・デイ】ならともかく世界の終末に何やってんの君らって言いたくなる場面が数カットありましたw

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る