【映画感想】八木・シネマ・パラディーゾ
八木耳木兎(やぎ みみずく)
【1本目】バックマン家の人々(1989年・米)
【あらすじ】
アメリカのどこかに住んでいる中流家庭の一族、バックマン家。その家族の四人の兄弟は立派に大人に成長し、結婚してそれぞれの家庭を作っていた。しかし四人の兄弟は、それぞれの家庭をめぐってそれぞれの問題を抱えていた。
長男・ギルは神経症を持った長男の育て方の問題で。長女・ヘレンは隠れて彼氏との密会を重ねる娘との人間関係で。次女・スーザンは天才児の娘の育て方をめぐる夫との対立で。次男・ラリーは単純にお金で。
これは彼らが少しずつ、やれる範囲で家庭の抱える問題を解決していこうとする物語である―――
【感想】
というわけで感想一本目です。この映画が一本目なのは、単に昨日見終えたからです。
家族どころか恋愛すら人並みに経験していない私ですが、家族や家庭の抱える問題、というものが家庭によって千差万別である、ということは、なんとなく理解できています。
だから家族の問題というものは他人に相談しようとしてもあくまで参考程度のアドバイスしかもらえないことが多いし、多くの場合最終的には親が自分たちで解決していかなければならなくなるようです。
だからこそこの映画でスティーヴ・マーティン演じるギルは神経症の息子になんとか自信をつけさせようと野球を習わせるし、次女スーザンの夫・ネイサンは天才児の娘にさらなる英才教育を施そうとするし、長女ヘレンは離婚した父親の分まで子供たちの面倒を見ようとする。
でも家族に限らず人間関係というものは一難去ってまた一難というのが世の常であって、ギルの息子は些細なことで大騒ぎするしヘレンは反抗期に入った子供二人に四苦八苦。育て方の問題をめぐってそれぞれの嫁さん(旦那さん)とまで対立してしまう始末で、結局映画の終わりまで各家族の問題は根本的には解決しません。
そんな中、物語の終盤でギルやヘレンの母親(子供たちにとってはおばあちゃん)がこんな言葉をつぶやきます。
「若い頃おじいちゃんとデートで、ローラーコースターに乗ったわ。ものすごく怖かったけど、それが病みつきになったの。他の子は怖いからってメリーゴーラウンドに乗ったけど、あんなの回るだけでつまらないわ。上ったり下りたり、ときに気持ち悪くなったりするローラーコースターが、私は好きよ」
……僕の大好きな映画(比較的最近)に、「お前たちの歴史は醜い」と言われた主人公が、「凸凹で何が悪い!?俺たちは瞬間瞬間を必死に生きてるんだ!!」と言い返すシーンがありまして。改めて振り返ると凸凹だったとしても、未来がどうなるかわからなくたって、その瞬間その瞬間を可能な限り生きられたらそれだけで立派じゃないか、というその言葉に込められたメッセージは、僕を含む多くの人々に勇気と救いをもたらしてくれたんですよね。この映画で、様々な家族の一筋縄ではいかない問題を描いたうえでのおばあちゃんの発言は、割とこの発言に通じるものがありました。
どうやっても凸凹にしか生きられないなら、いっそその瞬間を楽しんでみればいい。
おそらくギルやヘレンの比ではない、いろいろな問題と向き合ってきたおばあちゃんのこの台詞は、バックマン家のみならず、家族をめぐる様々な問題に現在進行形で立ち向かっている家族たちへの、過去、現在、未来、すべてを肯定してくれる発言だったのかもしれません。
【印象に残ったシーン】
冒頭のスタジアムを舞台にした、回想シーンと思わせての主人公・ギルのイメージと思われるシーンもなかなかユーモアが利いていて好きなんですが、やはり今見ると後に大スターとなるキアヌ・リーヴスとホアキン・フェニックスの絡みが色々クるものがあります。
AVを隠していたゲリー(当時リーフ・フェニックス名義のホアキン・フェニックス)相手に、父親の代わりに母親のヘレンが話をしてみようとするも、男女なので当然気まずくて会話も進まない。そもそも仮に父親が話をしてみたとしても、年齢の違いのせいで気まずくなるのは必至。そこでゲリーの相手になったのが、姉の彼氏のトッドでした。
ちょっとでかい兄貴くらいの年齢差であるトッドに「男子はみんなそれで一人で《する》」と言われて、一安心するゲリー。そのことを聞いての「やはり男の親はいた方がいいのかしらね…?」というヘレンの発言に対する、トッドの「人によります。俺は子供のころ、父親に虐待されました」という発言は、この映画が描こうとする「家族それぞれの持つ、千差万別の問題」というテーマをあまりにも的確に表現した会話でした。
関係ないけど、去年2019年の10月4日はトッド役とゲリー役の俳優が主演を務める映画が同日に公開された日でもありました。そう【ジョン・ウィック・パラベラム】と【ジョーカー】です。後者の方は、あのちょっとヤンチャなだけの子供があんな風にやさぐれてしまって……と悲しくなってしまいますが。さらに面白いことには、キアヌもホアキンも年月の流れで【バックマン家の人々】の頃とは全く違う風貌になっているのに、NETFLIXで去年配信された【一生忘れちゃう夜】を見る限り、ギルを演じたスティーヴ・マーティンの風貌は当時から全く変わってないんですよね・・・w
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