【101本目】スター・ウォーズ(1977年・米)

 VHSで見た【理力】世代の一人です、僕。


【感想】

 SF映画のみならず、映画自体の歴史を本作以前と以後に分けた映画で行きましょう。

 世界中で愛されているこのシリーズは、それまでハリウッドではB級映画だったSF映画の地位をエンターテイメントへと押し上げた作品とされています。また【ロッキー】と共に1970年代の陰鬱だったアメリカンニューシネマを終わらせた作品とも言われています。

 1977年のアカデミー賞で、作品賞を含む10部門にノミネート、同年最多の7部門を受賞という当時のSF映画としては異例の好成績からも、その当時の一大盛況ぶりがうかがえます。


 さて、公開当時は単に【スター・ウォーズ】というタイトルだったこの映画、現在ではシリーズ自体を指す場合が多いですが、公開当時は現在で言う【エピソード4】を指す呼称でした。次回作の【帝国の逆襲】上映に伴うリバイバル上映によって【新たなる希望】というタイトルがつけられ、1999年の【ファントム・メナス】公開時に【エピソード4 新たなる希望】という現代の副題がつけられました。


 で、今このシリーズのこの映画を見返して思うことは、やっぱりストーリーライン自体の巧妙さでしょう。

 個人的な思い入れみたいなものは新3部作の方が強い自分ですけど、単純にシナリオで評価するとしたらダントツで本作が優れていると思います。

 

 本作は辺境の惑星に住むしがない青年だったルークがジェダイの騎士・反乱軍のエースとして成長するまでを描いていますが、ルークのそのパートから始まると前半で砂漠住まいの一般人の日常を描く退屈なシナリオになりかねません。

 そこでババーン!!と例のBGMで映画が始まった直後に、レイア姫の乗り込んだ避難艇がスターデストロイヤーに捕獲されるという大ピンチなシーンから物語を始め、しばらくC-3POとR2-D2の視点で物語を動かすことで視聴者を引き込ませてるんですよねー。で、彼らがジャワ族に捕らえられて、え?え?どうするの、どうなるの?ってところで、おじさんと共にルークが登場!そしてルークの家でレイア姫のホログラフが投映されて物語が動き出す!という展開。

 名作と称される映画は視聴者を飽きさせないための工夫が徹底してるんだな、と改めて思わされます。

(その工夫の一端として、おじさんやおばさん、オルデランの人々が犠牲になるわけですが……)


 あと全く新しいSF活劇を形作っていながら、古き良き映画へのリスペクトを随所に感じるのもこの映画のポイントです。

 ジェダイの戦闘シーンがチャンバラ映画からの影響が強いこと、C-3POとR2-D2の元ネタが【隠し砦の三悪人】の太平と又七なことはいろんなところで言われてますけど、タトゥイーンの街で仲間探ししてるオビワンなんて【七人の侍】を見た後だと島田勘兵衛にしか見えないですからねw

 それだけでなく、居酒屋で色んなならず者たちに睨まれて、あげく流血沙汰に発展するシーンや、チョッキスタイルで賞金稼ぎに発砲するハン・ソロは明らかに西部劇からの影響だし、デス・スター戦での戦闘機を駆使した戦闘には第二次大戦後の戦争映画の遺伝子が垣間見られます。

 またそんな風にして様々な古き良き映画の要素を寄せ集めて、古き良き映画のように深いことを考えずに楽しめる映画が製作された、という点でも、アメリカ映画史における本作の功績は大きいでしょう。

 この映画が上映される直前の1970年代中盤くらいまでのハリウッドは、ベトナム戦争や公民権運動で戦場の現実、アメリカ社会の現実が露呈した結果西部劇や戦争映画(=現実世界を舞台にしたアクション映画)を何も考えずに楽しめる映画として作れる時代じゃなくなっていました(西部劇は【明日に向かって撃て!】なんかがいい例)。

 そんな折、【遠い星・遥かかなたの銀河系】に舞台を移して理屈抜きで楽しめる活劇をハリウッドによみがえらせた、という意味で、この【スター・ウォーズ】の功績は大きかったといえるでしょう。

 かつて【アメリカン・グラフィティ】で古き良きアメリカへの郷愁を具現化させたジョージ・ルーカスだからこそ、かつてのアメリカ映画への愛情を本作に込めたかったのかもしれません。

 


【好きなシーン】

 上記のような視聴者を飽きさせない工夫がみられるシーンが随所に見られる映画なので好きなシーンを挙げるとキリがないのですが、改めて【エピソード4】見ていると、後の続編のあのシーンってこのシーンのオマージュだったのか!!って驚くシーンが数か所ありましたね。

 ストームトルーパーがデス・スター内で「あの新型もう見た?」って言ってるくだりとか、【ローグ・ワン】で見たじゃんこれ!!ってなりましたし。


 あと【フォースの覚醒】見た後だと、ミレニアムファルコンって色んな界隈で名機扱いされてるから勘違いされそうになるけど、今作の時点でポンコツ呼ばわりされてたんじゃないかwっていう笑いもこみ上げます。

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