【15本目】パルプ・フィクション(1994年・米)
【あらすじ】
この犯罪映画で語られるのは、異なる人物を主人公とした三つの物語。
一つは、彼の愛妻の世話をボスに頼まれたマフィアの話。
一つは、マフィアとの約束を破ってしまった落ち目のボクサーの話。
一つは、勢い余って人を殺してしまった二人のマフィアの話。
かつての【”くだらない犯罪小説”(パルプ・フィクション)】を思わせるつくりでありながら、どこかスタイリッシュでユーモラスな物語が、スクリーン上でめまぐるしく展開される。
【感想】
1994年のカンヌ国際映画祭にて最高賞パルム・ドールを受賞したほか、同年のアカデミー賞でも脚本賞を受賞した(作品賞含め7部門ノミネート)映画です。
【レザボア・ドッグス】の時点で注目されていた我らがクエンティン・タランティーノ監督の地位を確固たるものとした映画でございます。
よく作り手が「僕はこういう展開が大好きなんです!!」っていう要素を詰め込んだら、観てるこっちまで楽しい気分になってくる、というタイプの映画がSNSで賞賛されることが良くありますが(最近だと【パシフィック・リム】や【レディ・プレイヤー1】など)、個人的な好みだけで言えばそのタイプではマイベストの映画であります。
ギャングたちのドラッグライフや監禁事件、正確かどうか怪しい聖書の引用や唐突に登場する日本刀とか、【パルプ・フィクション】の意味はわからずともいかにもタランティーノがこの手のクライム系のコンテンツ好きなんだろうな……っていうのが丸わかりなシーンや台詞、ガジェットが満載です。
しかしただ好きを詰め込んだだけでは、単なるB級映画かパロディ映画になりかねません。そこをこの映画はとにかく目まぐるしく変化する時系列と、人がそこそこバタバタ死んでいるのにユーモアを失わずに進む勢いの良さで一本のスタイリッシュな作品として魅せてくれます。
普通なら2章を最終章にすればわかりやすく終われるところを、あえて時間をさかのぼらせ、足を洗おうとするジュールスの姿をクライマックスに持ってくることで、あれだけ銃声や血液が飛び交う展開でも爽やかな視聴後感を持たせる終わり方になっているところなんか、特にタランティーノの手腕を感じます。
そしてタランティーノ映画の代名詞であるどうでもいい世間話。千鳥の漫才とかもそうなんですけど、【チーズ・ロワイヤル】とか【女房の足を揉んだ】とか、それ自体が癖の強いワードや文章を軸に会話劇が進んだ結果、劇中の空間が独特なユーモアに包まれるのがたまらないんですよね。
またこれらの世間話シーンは、一見どうでもいいように見えて、口調や会話の流れから、各話し手のキャラクターやキャラ間の関係性を間接的に紹介する役割を担っています。ブッチやマーセルスではなく、冒頭で【マリファナ・バー】や【チーズ・ロワイヤル】のくだらない話をしたヴィンセントとジュールスにこそ観客たちは親しみを覚え、彼らが物語を締めるからこそこの作品は名脚本たりうるのです。
この映画が各部門でノミネートされた1994年のアカデミー賞は【フォレスト・ガンプ】や【ショーシャンクの空に】【スピード】【ライオン・キング】など名作も名を連ねており、まさに激戦の年でした。ただ、【フォレスト・ガンプ】がアメリカ社会論、【ショーシャンクの空に】が人生論から話を進めやすいのに対して、【パルプ・フィクション】は脚本や演出、台詞回しなど、シンプルに映画論について話を展開させやすい作品です。なので映画好きの方により映画を好きになってもらうための作品としては、僕は【フォレスト・ガンプ】よりも【ショーシャンクの空に】よりも、【パルプ・フィクション】が上質な映画だと断言できます。
【好きなシーン】
ラストのパンプキンとハニーバニーの強盗を止めた直後の、服装ダサいくせにやたらヒロイックな足取りで歩きだすヴィンセントとジュールスですかねー。
ジュールスは上記の通りですけどヴィンセントはリアルに「この後亡くなったんだよね……」な状況なのがまた黒い笑いを生み出してしまいますがwこの映画はそういう黒い笑いを生み出す仕掛けにあふれた映画なので。
あとはベタですが、ヴィンセントとミア(演:黒染めしたユマ・サーマン)のダンスシーンですかね。50年代をテーマにしたクラブハウスで50年代に活躍したチャック・ベリーの曲をBGMに踊ってるのに古さを感じさせないというか、どこか鮮度みたいなものを感じさせるのは、偏にジョン・トラヴォルタとイメチェンしたユマ・サーマンが持つオーラゆえでしょうか。
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