【22本目】トランスフォーマー(2007年・米)

【あらすじ】

 かつて宇宙の遥か彼方で、金属生命体同士による戦いがあった。金属に命を吹き込むエネルギー物質、「オールスパーク」をめぐる戦いだった。「オールスパーク」がどこかへ消えたことをきっかけに、金属生命体たちは長い旅路につくことになる。

 時は流れ21世紀。ほぼ同じころ、ロサンゼルスの住む少年、サムは、父親の許しを得て一台の黄色いカマロを購入する。しかしその車は、人型機械への変形が可能な金属生命体だった―――


【感想】

 【アルマゲドン】でおなじみのマイケル・ベイの7作目の監督作品にして、2007年に上映された映画で全世界の興収5位を記録(4位以上は全てハリーポッターやパイレーツオブカリビアンなど、人気シリーズの新作)した映画です。同年のアカデミー賞で視覚効果賞ほか3部門にノミネートされた映画でもあります。


 Netflixで最近配信された【6アンダーグラウンド】とかもそうですけど、マイケル・ベイ監督の映画はおかしいシーン(特にキャラクターの言動w)が多々あるけど、圧倒的迫力の映像を魅せることで視聴者におかしいと思わせない、というのがその持ち味になっています(仮にも歴史映画の【パール・ハーバー】までそのノリで作っちゃったのは賛否ありますけどw)。

 アカデミー賞を受賞するような映画は各設定、各シーンの考察がはかどって楽しいのですが、こういう興収で結果を出すタイプの映画は単純になぜ面白かったのか、なぜ心揺り動かされるのか、というシンプルな創作論・物語論を語りたくなってきます。


 改めて見返すと、冴えない青年の主人公、愛する妻子の元を離れて戦う軍人、オタクの凄腕ハッカーと、上映当時でも今時ねーよwwwって感じのベタベタ設定の登場人物たちで物語が動いてる(【アルマゲドン】もそんな感じだけどw)のに、なぜああも引き込まれるのか、という点に興味が湧いてくるんです。

 これはあくまで主役がトランスフォーマーだから、というだけでなく、その流れるようにテンポのいいシナリオ構成にもあると思えます。

 最初に中東のカタール基地でブラックアウトを暴れさせて地球に迫る脅威を伝えつつ、次のシーンで高校生の平和な日常を描いて一息つかせる。その後もカタール基地の生き残りや国防総省の切迫した状況とサムたちやハッカーコンビの緊張感のない光景を適度に交互に見せて、スクリーン上の空気をダレさせない。

 まー要するに、緩急のつけ方が抜群にうまいんです。ずっと同じような話の流れだとダレる、かと言って視点をやたら変えすぎても観客が混乱する、そのちょうど中間の塩梅をうまいこと保っていて、観ているこちらもその視点の変わり方が痛快ですらあるんですよね。あのトランスフォーマー同士のド迫力バトルがド迫力たりえてるのは、その頭を使わなくても身を任せていられるシナリオ構成と無関係ではないでしょう。


【好きなシーン】

 もちろん変形・戦闘シーンは全般好きですが、冒頭のオプティマスの「オールスパークの力を、ある者は善に、ある者は悪に使った」って語らせるくだりには思わずうまい!とうなってしまいます。

 勢い重視タイプの映画は冒頭の段階で観客に「ああ、そういうノリの映画なんでな」って思わせるのが大事ですけど、この映画は開始間もないうちに「善と、悪が存在した」っていう超単純な善悪二元構造に関する言及を行っています。MCU系ヒーロー映画だったら悪側にも共感できる事情みたいなもんが存在することも多いですけど、この映画は上記のオプティマスの語りで、善と悪が戦うだけの映画だから、頭を使ってみるタイプじゃないんだなって最初の最初に理解できる作りになっているんです。

 この映画の脚本の流れが単純であっても、決して雑ではないのがわかる語りだと個人的には思います。


 あとはディセプティコンの連中が変形前の状態でフーバーダムへ集合するくだりかな。バンブルビー凍結でシリアスになってた空気がさらに引き締まった感があって。

 

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