【9本目】ファンタジア(1940年・米)
【あらすじというか、概要】
オーケストラによって演奏されるクラシックの名曲をBGMとした、8編(+オマケ1編)の短編アニメーション。バッハの【トッカータとフーガ】から、ストラヴィンスキーの【春の祭典】などのクラシック史に残る名曲を、ディズニー・スタジオのアニメーターたちが、音楽家の伝統的な解釈ではなく、アニメーターとしての解釈によって目に見える物語として表現する。
【感想】
まあ、超有名作品です。
ディズニーと言われて人々が思い浮かべるような老若男女楽しめるアニメーション映画……というには、音楽やアニメーションの方面で少し特徴的な演出が多いですが、少なくとも自分は子供の頃、遠方の祖父の家に行く度この映画を輸入盤のLDでかじりつくように見ていました。ある種、物心ついてから最初期にハマった映画と言えるかもしれません。
以降、人生の節目節目で思い出したころにこの映画を見ては、その表現方式がいかに自由かを思い知らされ、ますますこの作品を好きになっていきました。
作画や演出がハイクオリティ、というのはどのディズニー映画を見てもそうなんですが、僕が特に感激したのは演出方面なんですよね。
たびたび言われますけど、製作時期が1940年で、太平洋戦争すら起こっていなかった時代だと考えると、オーパーツという言葉以外で表現しようがないんです。(某朝ドラでこの映画が言及されたときも、そういう言葉が実況勢の間で飛び交ってたような気がします)
実際に8編すべてを見ていると、「その時代にその演出どうやって思いついたの!?」「戦前のアニメキャラになんでそこまでリアルで細かい表情させられんの!?」「その配色、どう考えても21世紀くらいからタイムスリップしてないと思いつかなくない!?」と二桁単位の回数で感じることうけあいです。
また上にも書きましたが、音楽家による伝統的な解釈ではなく、あくまでアニメーター(画家)としての解釈によって製作された結果、この傑作映画が産まれた、という点も、非常に示唆に富むところがあります。
仮面ライダーやガンダムなどの長年続くシリーズ(ある意味ディズニー映画もそうですね)では、新作が奇抜な要素をはらんでいた時、古参からのファンに「あんなの○○じゃない!!」と叩かれることはよく見る光景ですけど、ファンタジアの上記のような逸話を見ると文化の解釈や表現なんて自由でいいし、時代とともに画期的なやり方で表現することだって大事なんだ!って気分にさせられます。
ディズニーのスタッフによる【春の祭典】の【有史以前の世界】を描いた曲、という解釈が、ストラヴィンスキーの同曲に対する元々のイメージと一致していたことも非常に興味深いです※。特オタ的にはなんか、こんなの仮面ライダーじゃない!と叩かれまくった仮面ライダー龍騎が実は漫画版仮面ライダーの13人の仮面ライダーのオマージュをしてた話に通ずるものがあって。
壮大なクラシックによる鬼のような作画のアニメーション、とくれば一見敷居は高いですが、我らがミッキーや田園の半人半獣たち(バッカスさんの悩みとか一切なさそうな感じ大好き)、時の踊りの動物バレリーナたちなどのディズニーらしいファンシーなキャラを出して、うまいこと敷居を低くしているのもさすがディズニー映画、といったところなので、自分が今日会ったような他人に今すぐ見ろ、とおススメできる映画の一つでもあります。
【好きなシーン】
数えきれないですが、やはり【トッカータとフーガ】のあまりにも自由なアニメーション表現は必見です。後に【ファンタジア2000】で【絶対音楽】という呼称で呼ばれる、物語や情景を一切排した、ただただ曲の流れに沿って絵がダイナミックに動くパートです。子供の頃こそ「チャラリー♪の曲」という印象しかなかったですが、自分が中学に入って見返したとき、まず心臓を鷲掴みにされたのはこのパートでした。
人によっては「なんだこりゃ?」と思う可能性もありますが、見る人が見れば「芸術ってこんなに自由でいいんだ!!」と見たその瞬間から世界観変わるレベルの衝撃を受けると思います。
ところで思ったんですけどサウンドトラック君って最初期のボカロですよね?w
※まあ、一致していたのはあくまで解釈であって、完成したアニメーションはストラヴィンスキーのイメージと全然違ったそうですが
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