第16話 他人の話3

 私は黙ったまま事のいきさつを静かに聞いていた。しばらくすると怒っていたほうの女子生徒は落ち着いたのか、謝っていた。

「さっきは、ごめんね。私怒りに任せるとさ、ひどいこと言っちゃうんだよ。顔も見たくないとか言っちゃってごめんなさい。もしよかったらこれからも仲良くしてください」

「…私も、その返すの遅れちゃってごめんなさい。私でよければ、また仲良くしてください」

 仲直りしていた。これが雨降って地固まるとかいうやつなのか。最近の希薄化した友人関係ではなかなか見られない光景だった。こういうのが友情、友だちっていうんだろう。最近の合わせてるだけの奴らに見せてやりたい。これが本物だと。お互いの悪いとこを知ってそれでもまだ仲良くするのが友だちなんだと。人の悪いとこを知ったぐらいであいつハブろうぜ、とか言ってる奴らを殴ってやりたい。

 ああ、私はたぶん悪口すら言われないんだろうな。いてもいなくても変わらない、空気同然の存在。私が他人に無関心なように、他人も私に無関心なのだ。誰からも悪口を言われないというのはいいことだけど…。何なんだろう、じゃあ、私はなんで今ここにいるんだろう。

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