生きる意味を求めて
東山 月菜
第1話 雑踏の中
―助けて。この一言が言えたらどんなに楽になるんだろうか。
私は、ざわざわと五月蠅い街中を歩きながら、イヤホンをつけた。人の声なんて聴いてるだけで酔いそうだ。どんなに耳をシャットダウンしようとも視界はシャットダウンすることはできない。街行く大勢の人々の間を私は無表情ですり抜ける。時々、大きな声で話す人の声が聞こえると、私は黙って音楽の音量を上げた。早く歩いたせいなのか少し息が上がっていた。視界に入るたくさんの人、その人たちのにおい。…耐えられない。私は角を曲がりほとんど人が通らない路地に出た。イヤホンを外し、壁に手を突きゆっくり息を吐く。少し目線を上げると、野良猫と目が合った。口をついて言葉がこぼれた。
「…ねえ、人って多すぎるよね」
猫はまだ私を見ていた。しばらくすると、猫は路地裏に消えてしまった。
「はあ…」
私はさっき抜けた大通りに目を向ける。やけに静かなこの路地とはまるで別世界だった。
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