第37話 もう一人③

 「…弟にはかなり早くから怪しまれてたし、佐阿くんには色仕掛け失敗したからもう演技する必要ないか」


 これ以上意味がない。そう言った後の西川さんの口調を吹っ切れていた。

 

 「演技ってどういう意味だよ!てか、お前誰なんだよ?」


 「誰って、西川無華だけど」


 そう言って名乗る西川さんだが、俺にはもう西川さんの姿をした別の人にしか感じなかった。


 「お前。お姉ちゃんをどこへやったんだ!」


 「…目の前にいるんだけど」


 「う、うるさい。お前はお姉ちゃんなんかじゃない」

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