第9話 お見舞い②

 警察の方が帰ってすぐに憲が病室に入ってきて、頭を下げた。


 「この度は、姉を救ってくれてありがとうございました」


 「そんなに頭を下げなくていいよ。俺は当然の事をしただけだよ」


 「…!?流石、佐阿さん。そんなキザなセリフを言えるとは」


 「う、うるさい」


 ちょっとカッコつけて言い過ぎた。

 確かにもし、もしだ。今回の誘拐が赤の他人だったら俺は警察に通報するだけで誘拐犯を自転車で追っかけて行こうとは思うが、あそこまで無茶をしたのは誘拐されたのが西川さんだったからだ。


 「では、僕はこれで失礼しますね」


 「早いな」


 憲は頭を下げにきただけだったようだ。


 「少し聞きたいことがあるんだが…」

 

 聞きたい事とは、もちろん西川さんのことだ。

 警察の方からは無事であるとしか聞かされていなかった。


 「ふふふ。それは本人から聞いて下さい」


 そう言って病室を出て行った憲と入れ替わるようにして西川さんが病室に入ってきた。

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