荒野の決闘☆トリニティ出陣

暗黒星雲

第1話 待ち構えるゼクローザス

「トリニティ卿。本当に戦うヤルんですか」

「ええ。私も魔術師の端くれですから。この、霊力で駆動するという鋼鉄人形には大変興味を持っております」

「だからと言って訓練もせずに戦うのは危険です」

「大丈夫だと思いますよ。コウ少尉。ほら、初の搭乗でもこの通り軽々と動かせます」


 そう言ってクルリと一回転して礼をする。

 道化師トリニティが搭乗しているゼクローザスがである。


「なかなか良い動きではないか。鋼鉄人形は意志の力で動く。実戦では日頃の戦闘センスがそのまま表れるからな。期待できそうだ」

「お褒めにあずかり光栄でございます。ミハル中尉」


 アルマ帝国の決戦兵器。

 いわゆる人型機動兵器である鋼鉄人形。


 それが三機、荒野に起立している。

 搭乗しているのは道化師のトッシー・トリニティ。ララ皇女の部下である親衛隊のミハル・ジュドー中尉とコウ・エクリプス少尉であった。


 少し前、ベルグリーズの”守護神の”御子ことシュランメルトに破壊された親衛隊仕様の鋼鉄人形ゼクローザスに代わり、今回はゼクローザスのカスタム機が用意された。


 トリニティが搭乗しているのは近接戦闘型で盾を持たない完全速攻型のゼクローザス・クベーラ。実剣を二本装備している。ミハル中尉が搭乗しているのは比類なき貫徹力を誇る強弓を装備したゼクローザス・アーチャー。そして黒猫ことコウ・エクリプス少尉が搭乗しているのは、両腕に強固な装甲と超振動発生装置を装備した打撃戦専用のゼクローザス・ハンマーであった。


 彼らはハドムス帝国の帝都ハディラから少し離れた山岳部を背に待機している。先日、帝都に侵入しようと騒ぎを起こしたララ一行であったが、表面上は跳開橋ちょうかいきょうを爆破されて侵入に失敗し、山岳部へと逃走している事になっている。

 そのララ一行を追い、ハディラ守備隊の魔導騎士ベルムバンツェが数機追跡して来ていた。トリニティとミハル中尉、コウ少尉はその追跡部隊を待ち伏せしているのである。


「ところでトリニティ卿。小競り合いではなく、本格的な戦闘を行ってもよろしいのでしょうか? 皇帝陛下からは開戦に至る可能性がある戦闘行為は避けるようにとの命にございますが」

「ご心配なくミハル中尉。その辺りの欺瞞行動に関しては私に全てお任せください。お二方は存分に戦ってください」

「わかりました」


 ミハル中尉の問いにトリニティが答える。

 いったいどういう欺瞞行動を取るのか、ミハル中尉には理解できなかったのだが、ここはトリニティに一任するしかなかった。


 遠方に土埃が立ち上がる。

 数機の人型機動兵器が接近して来ていた。


 ハドムス帝国の魔導騎士ベルムバンツェであった。

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