8-4
校舎に警察の方を入れるだけでも、かなりの時間がかかった。
「冴島将太さん、ですね?」
「はい…」
「こちらで詳しくお話を聞かせてください」
「分かりました」
他の先生方のほうを見る。
自分のせいで、家にも帰らず動いてくれている…。
ああ本当に、情けない。
「将ちゃん」
「…えっ」
「行ってきな、こっちは気にしなくていいから」
「……ありがとう」
┉┉┉┉┉┉┉┉┉
「将ちゃんおかえり」
「ただいま、戻りました…」
「…ちょっと休む?」
「え、何言って」
「だって将ちゃんがそんなんじゃ、奏美ちゃん助けられないよ?」
「でも、連絡は俺に直接来るし…」
「こっち、準備出来ました」
「メールの送信元はどうだ、解析終わったか?」
「はい、さっき連絡がありましたが、海外サーバーを経由していて特定できなかったそうです」
「そうか…」
自分に出来ることは、ひたすら待ち続けることだった。
今ごろ奏美は…。
ああ、俺のせいだ。
本当にもう、取り返しのつかないことになってしまった。
「はあ…」
こんなふうに自分を責めても、この状況が変わるわけじゃない。
まして、奏美が帰ってくるわけでも、ない。
結局いつも、自分のことばっかりだな、俺は。
「将ちゃん、はい」
「えっ」
「お茶」
「あ…ありがと…」
重たい空気の中、ひとりサクサクと何かしら動いているのは俊先輩だ。
「すごい、タフですね」
「だって皆がこんな感じじゃ、ねえ?」
「先輩って、何考えてるか分かんないですよね」
「うん、あえてね」
意味ありげに微笑むと、
さっさと他の先生のところへお茶を入れに行ってしまった。
あそこまで普段通りに振る舞われると、
この事態が嘘なんじゃないかとさえ思える。
「メールに返信してから、もう三時間経つぞ」
「そろそろ連絡きてほしいですね…」
一億円なんて大金、そりゃうちには無いわけで。
偽札で行こうということになったが、
校長が、
『ニセモノなんて持って行って、彼女に何かあったらどうする』
と刑事たちに問いただしたらしい。
いくつか銀行に連絡して、内密に一億円を準備しているみたいだ。
「そういえば先生」
「はいっ」
刑事さんに尋ねられる。
びっくりして声が裏返った。
「明日は何か学校行事ありますか?」
「あ…明日は文化祭の二日目なんです」
「そうですか…混雑に紛れて何かするつもりなら、今日は連絡無いかもしれませんね」
「そんなっ、困ります!」
「学校行事まで巻き込まれたら…」
「まさか、だから学校に戻れって言ったのか…?」
そんなことになったら、一大事じゃ済まなくなる。
他の生徒や来校者に危険が及んでしまう。
何より俺たちの関係も生徒たちに明るみになってしまう。
なんとしてでも、防がねば。
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
作者です🙋
なんだかシリアス展開が続いていますが…
何とか8話の準備が整ったので、
1日1エピソード更新していきます!
ぜひ考察も楽しんでくださいませ
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