3-6

どうしてと聞かれて、将にいだって困っただろう。

将にいも日々とまどいながら生きていて、理路整然と訳を語れるはずもなかった。


ただひたすら心苦しそうに


「奏美には俺がいるからね」


と頭を撫でるだけだった。



今でも時々思う。もし我が家に、ごく普通に、父が居て、母が居て、一緒に暮らしていたら、と。



「ただいまー!」



でもこうして、誰かが帰ってきたり帰ったら誰かが待ってたりする暮らしがあるだけで、幸せなんだなぁと思う。

今日だけは、そうじゃない気もするけど。



「…おかえり」

「ただいま」

「今日は早かったんだね」

「うん、定時で出られた」

「ご飯とお風呂どっちが先?」

「奏美」

「ん?」


ゆっくり近づいて、私を見つめる。


「先に、話をしてもいい?」

「……わかった」


ニコッと笑って、着替えに奥の部屋へ消えた。


ぼふっとソファに腰を沈める。

何を言われるかは、検討がつく。きっとあのことだ。

もちろん私は、否定するつもり。事実、そういう関係は無いんだもの。

勘違いされては困る。心が決まるまでは。



「お待たせ」

「ううん、全然」


将にいも、私の隣に腰掛けた。


「その…話っていうのは、さっきの…」

「ごめんなさいっ」

「えっ?」

「私には全然そういうつもり無くて、ほんとに無くて、急なことでびっくりしちゃって身体が動かなかったっていうか…」

「そう…」


伏せ気味の大きな瞳が、なんとなく悲しげだ。

そりゃそうだ。妹を心配して同じ学校に移ったのに、あんなこと…。


「でも、俺のせいで奏美がああなってしまったし、ほんとに、謝らなきゃいけないのは俺の方で…」

「将にいは、関係ないよっ、私の、その、気持ちの面というか、気合いが…」

「き、気合い?」

「だ、だって、気持ちを強く持っていれば幾らだってどうにかなったのに…」

「でも、限界あるだろ?100%コントロールできる訳じゃないし」

「それはそうなんだけど…」

「とにかく、今日は早く寝た方がいいよ、また昼間みたいに倒れたりなんかしたら…」

「うん……うん?」


倒れる?え、倒れたっけ、私。


「ちょちょちょっと、倒れたって何?」

「え、今その話をしてたんじゃん」

「えっ、ど、どゆこと?」

「ええっ」


もしかして…。


「将にいが話してるのは、私が四時間目、保健室に行ったって話?」

「そうだけど…?」

「ああ…、なんだぁそっちかぁ」

「ええ?どういうこと?」

「いや、なんでもない」

「なんでもなくないだろ、教えてよー」

「やだー」

「やだじゃないっ」

「嫌ですぅ」

「俺も嫌ですぅ」



音楽室でのことかとばかり…。

将にいが気にかけていたのは、私の体調の方らしかった。


それはそれで、なんだか複雑な気持ちになる。






 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

早とちりな奏美、紛らわしい将太。

なんだかんだ兄妹なんだなって感じですね。


☆ここで、クイズのヒント☆

(ヒント3:2010年発売のシングル曲)

ググれば沢山出てきそう…。

なので、ここでヒントをもう1つ。

(ヒント4:シンプルな歌詞が印象的な恋愛ソング)

伝われっ…!

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