第2話 愛されてる末っ子
ミシミシと音をたてていた扉がついにべキッと壊れたかと思うとヒュッと何かが横切る。恐る恐る扉の方を向くと…扉は
「リディ? どうして鍵をかけてるんだい?心配したよ」
ゴゴゴっと言う効果音すら聞こえそうなほど、黒いオーラが見えそうな少年が部屋に入ってくる。プライバシーはどこいったのだろう?
その横からひょこっと別の、しかし、よく似た少年が顔を見せる。
「見事に蹴破るとは…我が半身ながら乱暴だな。
しかし、よくやった!」
少年は、よくやったなどといっているが、全然よくない。この、怒っているらしい2人は兄である。や、扉なくなったし、俺の方が怒りたいんだけど…
「お兄様…怖い」
なんか、怖いし、急に今までと違う態度を取るのは変だと思ったので、今までのリディアの様に、ぶりっこしてみた。しかし、自分でやった事なのだが、吐きそうになった。かわりと言ってはなんだが、効果は絶大だった。
「おい、レオが蹴破るからリディが怖がってるじゃないか!」
「え、僕のせいなのかい?ごめんよ怖がらせるつもりはなかったんだ。」
レオと呼ばれたほうがオロオロとしだす。
しかし、雰囲気こそ違うが、2人はもし、モノクロ写真で撮ったら、どちらかわからなくなりそうなほどそっくりであるのになぜこんなに性格が違うのだろう。
顔を見る限り絶対一覧性の双子なのだから性格も同じでもおかしくないのに。
いや、あながち一卵性とは言えないか。2人は、髪型が左右違いで片目隠しているというのもあるが、色違いなのだ。DNAがまったく同じなら色が違うとかはないだろう。髪型はきっと気分だな。
兄2人について整理すると、少々つり目で眉が下がっている方がレオルバ。
髪の毛は紫に毛先青。瞳は赤に少し紫にがかっている。
性格は柔らかく、几帳面だが時々乱暴というか…キレる。扉を蹴破ったのはレオ兄様である。やめてほしい。
少々たれ目、眉はつり上っている方がシオルバ。
髪の毛が紫に毛先赤、瞳は青に少し紫がかっている。
性格はがさつぎみであるが時々頼りになる。特にレオ兄様がキレた時など…神頼みならぬシオ兄様頼みである。というところだろう。
しかし、なぜ俺とこんなに髪の色や瞳の色が違うかというと、魔力の違いだと思われる。
この世界において髪や目が黒に近いもの=魔力が高いものとなっており、俺みたいな銀髪は魔力0と言われていた気がする。
さらに髪の毛の色で得意な魔法が違っており、父が水で水色、母が炎で赤な俺らは奇跡的に混ざり紫がかっているというわけである。
なぜそんなことを知ってるかと言うと妹が、「魔力0って設定に書いてあったのになんで魔法使ってるのよー」とか、「設定だと黒髪=魔力が高いから日本ヒロインの黒髪チートみたいなこと書いてあったじゃん!」と叫んでいたのと、「紫双子ktkr!ナイス公式!水と炎とかイケメンすぎる!双子に愛されルート…良い~!!」と妹が興奮して語っていたからである。
双子の兄は優秀な攻略対象。妹は魔力0の破滅系と。運営さんよ…これはひどすぎる。そりゃ、こんな兄いたら…ぐれるな。俺でも、どっかの歌の様に、盗んだバイクで走り出すか、窓ガラス割りまくるほどの不良になると思う。え、今思い出したけど、魔法がって叫んでたってことは…俺も魔法使えるのか?
急にワクワクしてきた。が、うまく思い出せない。記憶がリディアと俺でごちゃまぜになっているせいか抜けているとこもある気がする。
仕方ないので、保留としよう。楽しみは後に取っとくタイプだし。ちなみに、兄様などと現代日本なら呼ばない呼び方は、リディアの記憶に引っ張られているからである。
まぁ、急に母、父、兄ズなどと呼んだら末っ子好きの方々は倒れるであろうから仕方ない。
兄ズと話していると、慌てた様子の父が来た。どうやら、追い出された後、別の場所にいたらしいが、どでかい音がしたので、走ってきたらしい。まぁ、まだ扉の前にいたら息子が蹴破るの止めるよな…無くなった扉を見て驚いている。
「リディの部屋の扉がなくなっているのだが…?」
部屋の温度が下がった気がした。あまりの寒さに、ガタガタと震えそうになる横で兄ズもといレオ兄様が…ガチガチとふるえてる。
「レオが蹴破りました」
ビシッと敬礼しながらシオ兄様が大きな声で父に報告する。
「ちょっと、シオ! なんでバラすの!」
「父様怒ると怖いじゃん」
シオ兄様が、ナイスみたいな事言ってたのに、秒で裏切るんだ。しかもウィンク付きで。横では、そんな双子を見た父様が困惑した顔をしている。
「蹴破ったって…レオの足では無理だろう?」
「そこは…魔法を使ったので。蹴るのと同時に大量の水で押したら行けました。」
坦々と言っているが、結構危険な気がする。ってか、間違ったら俺に当たってたよね!?
「レオルバ後で私のお部屋に来なさい」
ニコッと笑う父は、わりと美形なので、俺から見ても輝いていて見えた。ただし、笑顔はなんだか怖かった。背中がゾクゾクする。
レオ兄様がガクガクしていると、父が俺の方をグリンっと向いた。え、何?思わず身構える。
「リディア!怖かっただろう?もう大丈夫だ。」
想像とは違い、ガバッと抱きついてきた。結構な力で。
「お、お父様痛いです」
父よ、ゴリラ並に力が強いの。痛いです。
俺の必死の抵抗を無視し、
「とりあえず今日はパパの部屋で寝よう。扉が無いと危険だ」
などと、話を進めてくる。デレデレした父に抱きつかれるのは男として嫌だ。
「えっ! ずるいよ父様。扉壊しちゃったの僕だし、リディは僕の部屋へ来るべきだと思います。シオは邪魔だけど。」
レオ兄様が父と俺を引き剥がし、俺に抱きついてくる。
引き剥がしてくれたのは助かるが、おもちゃの取り合いみたいなのは辞めてほしい。ちぎれる。
「レオ! 扉破壊するような子と一緒の部屋とか駄目に決まってるだろう」
レオ兄様と父が耳元でギャーギャー騒ぎだした。
しばらく様子を見ていたシオ兄様が俺を指差して、
「リディアを見て! レオも父様も嫌って顔してるよ! なので、僕と2人で寝べきだと思います。あ、レオは父様の部屋に行ってくれ。」
と提案してきたがそれを聞いた2人がまた騒ぎ出して、3人で言い争いをしだした。
全員遠慮である。
そして、遅れて来た母も話に混ざり、誰と一緒に寝るかで言い争になった。俺抜きで俺の話を進めないでほしい。
めんどくさくなったので、皆部屋から追い出すことにした。一人で眠れるし。
グイグイっと押しながら部屋から出す。扉がないので、廊下まで押しただけだが…
「皆出ていって、勝手に入る人嫌い。うるさいのも嫌」
っとぶりっ子してみると、皆部屋の外でじっーとこちらを子犬のような目で見てくるだけで、入っては来なくなった。扉がほしい。閉めたい。
なんにせよ、疲れた。ふわぁっと大きなあくびが出る。眠くなってきたので、ベットにダイブすると、ふわふわで気持ちがよい。天蓋付きベットだったおかげでカーテン代わりになり、家族の視線を気にせず眠れる。
本当になんでこんないい家で愛されてるのに破滅に進んだんだろう。
そもそもなんで…あ~そういえば末っ子で可愛がられたせいでわがままに育ったのもあるかもしれないが、兄ズと婚約者が攻略対象だしな。よくわからん乙女心とかあったのかもしれないな。
まぁ、俺は男と婚約する気もないし、兄ズに関してもどうぞどうぞだし、なんとかなるだろう。関わらないと心に誓おう。破滅ルートは回避したいし、正直、討伐ルートで死ぬのは嫌すぎる。
それにしても、魔法か…明日起きたら調べてみよう。俺魔力0かよっておもってたけど、よくよく考えると魔法が使えるかもしれないとか楽しみすぎる。
その頃、なくなった扉付近では家族が自前の椅子などを持ってきている。
なんなら、そこで一夜過ごすつもりなのだが、リディアがそれに気づくのは次の日の朝のことであった。
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