第7話 ポワカへのインタビュー 2

「またアンタかい。

 何度も何度も呼び出しおって。

 こっちはとっくに死んでるってのに。


 そうさ。儀式は失敗したんだよ。

 サン・ジェルマンを祭壇に縛りつけてクトゥルフに呼びかけるところまでは順調じゃったんじゃが、最後の最後で例の姉妹の小さいほうに邪魔されてのう。

 ああ、いや、そもそもあの儀式には、ワシが望む成功なんぞなかったのじゃ。


 アンタやアンタの仲間の怪奇現象研究家やら、未知の世界の探訪者やら、取り澄ました三文文士やらは、ワシがヘマをしたせいでクトゥルフを怒らせて生け贄の代わりに殺されたなんてノンキな推理をしとるんじゃろうが、大間違いさ。


 クトゥルフを目覚めさせるには、ただときを待つだけで良かったんじゃよ。

 お星様の位置がそろえば、クトゥルフは勝手に目覚めるんじゃよ。

 生け贄なんぞあってもなくても、クトゥルフにとっちゃあ大して変わりゃしなかったんじゃ。

 ただ、目覚めに際し儀式をして、食べていいのはコレですよ、コッチは食べ物を運ぶ役ですよってのを伝えておかないと、人間も魚人も皆殺しにされるっていうだけだったんじゃ。


 小娘が色男のいましめを解いて、無人の祭壇にクトゥルフが現れて、問答無用でワシを喰らいおった。

 あとのことは知らんが、あの二人があのまま逃げおおせたとはとても思えん。


 ……じゃからワシゃ知らんって。

 ヌシのほうこそ教えとくれや、記者さんや。

 世界は滅んだのかえ?

 ヌシは何故、生きておる?

 もしや最後の生き残りとかか?

 ……ヌシ、本当に生きておるか?

 生きておる人間なのか……?」

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