第29話 映画にまつわる手紙 5−6

※キャロライン・ルルイエからの手紙の続き


 夢を見ていたの。

 見せられていたの?

 目の前に巨大な緑色のバケモノが居たの。


 ものすごく簡単に説明するなら、邪悪なドラゴンの首を切り落として、切り口から無数な触手を生やしたような姿――

 だけどこんな書きかたじゃあ、あのおぞましさは伝わらないわ。

 この世の言葉をどう並べても、あの恐ろしさは表現できない。

 鱗も、爪も、名状しがたいとしか言えない。


 巫女の声がわたしの周りをぐるぐる回った。

「逆らうな」「従え」「おまえも生け贄となるが良い」

 そんな言葉がぐるぐるぐるぐる――

 耳をふさいでもその声は少しも小さくならなくて、両手をすり抜けて聞こえてきて――

 段々と――

 本当にそうしたほうがいいような気がしてきて――


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