暁病棟の患者たち

夕凪

プロローグ

少女は、とある病院の一室で、ペンを走らせていた。


サラサラと少女の髪が風に舞う。

少しだけ開いた窓から、柔らかい風と日差しが流れ込んでいた。


あはは。

あははは。


囁くような笑い声が、窓の向こうから聞こえる。

少女はペンを止め、窓の外を見やってからふと微笑んだ。


穏やかな日。

世界から隔離された、平和。

小さな命たちが蠢く場所。


彼女はこの日々を記録し続けていた。


この世界が好きだった。


――緩やかに暮らす、奇病患者たちのお話。

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