まってて。

あさひA

1:春

日々が酷くつまらない。今までもそうだったし、きっとこれからもそうなのだろう。


”だけど”


「入学式なのに、雨なんてついてないね」


あなたが僕の前に現れてから、僕の世界は変わったんだ。



これは春の入学式の日のこと、この日は雨で家に帰っても誰もいないので1人で教室に残り本を読んでいた。


そんな時だった、


「入学式なのに雨なんてついてないよね」


隣から聞き覚えのない女の子の声が聞こえてきた。


「はじめましてだよね?私は朝日 美波あさひ みなみよろしくね!あなたの名前は?」


「えっと、藤原 海斗ふじわら かいとです」


「海斗くんは、ここで何してるの?」


「ただの読書ですよ」


「ふぅ〜ん、ねぇ!読書なんてしてないで私と遊んでよ!」


彼女は隣の席の椅子に座り、僕の目をまっすぐ見てそう言う。


「こんな雨の日に何するんです?」


「んー、そーだな。かくれんぼなんてどう?」


僕は彼女の発言に一瞬頭の中が真っ白になった。


「かくれんぼですか?」


「そーだよ!絶対に見つけてね、5分だったら探しに来てね」


「えっ、ちょっ……」


そう言い残すと先輩は走って教室を出ていってしまった。


この広い学校の中で僕は1人の先輩を探さないといけないのか。


結局あれから30分くらいかかって先輩はやっと見つかった、図書室の机で寝ている状態で。


とても気持ちよさそうに寝ているので、毛布だけかけて雨が止むまでこのまま待機することにした。


それから時刻は18時過ぎくらい、雨はすっかり上がり図書室の窓から夕日がとても綺麗に見える。


「先輩、起きてください!かくれんぼは終わりですよ?」


「ん、ん……」


先輩はゆっくりと目を開け何度かゆっくりとパチパチとして、僕の顔を見る。


「え、もしかして私寝てた?!」


「えぇ、とても気持ちよさそうに寝ていたのでそのままにしておいたんですが、」


「寝顔とか見てないよね?」


先輩は恥ずかしがっているのか顔を赤くし俯いてしまった。


「見てないですよ」


「ほんとだよね?誓える?絶対?」


そう言いながらだんだんと詰め寄られて図書室の隅まで押し寄せられた。


「海斗くんは私の寝顔を絶対に見てないんだよね??」


最後の宣告と言わんばかりの言い寄られ、僕は首をゆっくりと縦におろした。


「ならばよし!」


先輩は後ろにさがり、笑顔でそう言った。


「うわ〜、夕日綺麗だね!」


窓から見える夕日を指さして言う先輩。夕日に照らされた先輩の横顔はすごく綺麗で、美しかった。


「今日はありがとね!私のわがままに付き合ってもらって」




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