孤独吐
黒百合
第一夜 そんな夢を見ては
夢を見た。夢の中で微笑むは君の影。
「こんな時間に白昼夢か…」
時刻は丑三つ時、目の前は何故か白く淡くぼんやりと光が刺している。その白昼夢が睫毛をつたった月の光だと、自分の自惚れた微睡みだと気づくのに少々の時間を要した。
「…今日はことさらよく働いた」
仕事なんてしてないはずなのに、作業着も作業道具も汚れで真っ黒になっていた。身体のあちらこちらが悲鳴をあげている。
風が生ぬるく汚れた頬を掠める。気持ちの悪い、肌に張り付くような風と匂いに包まれている。何故か、気分は悪くなかった。
今更、そんな夢を君と見ては…
君の顔は見当たらないはずなのに、何故か君が微笑んでいるような気がした。
僕はそんな君の影の隣に座っていた。
なんてことはない、ただ隣に座っていただけだ、それなのに君の影は微笑む。それはとても幸せそうに。見えてないのに、だ。
僕はため息をついて、まだ微かにグラスに残っていた氷の溶けた水で割れてしまった洋酒をグイッと一息で飲み干す。
癖の強い酒の香りに、君は顔を顰めた…ような気がした。気のせいか、変わらなかった。
さて、作業の続きをしなければ、明日の昼までに終わらせなければいけないのだから。
僕は君の体にそっと触れて中途半端になっている鋸を引いた。
君の影が、少し笑った気がした。
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