原題・ラブコメと呼ばれた物語

葉乃ヒロミ(元・ハープ)

第1話 試しに一つ...

 時刻は午後9時。場所は観覧車のゴンドラのなか。丁度天辺まで上りきっている。ここだ。ここしかない。勇気を見せるんだ、東條春由!僕は同乗者のマミさんの方を向く。今こそ、僕が一晩寝ずに(寝落ちは睡眠には入らない)考えたセリフを口に出すとき!

「つ、月がキレイですね」

 そう、かつて夏目漱石が言ったとされる名言。これで落ちなかった女子はいない!(多分)

「・・・」

 さぁ!マミさん。いくら察しの悪い貴女でもこれくらいは分かるでしょう?

「・・・今日、曇ってるけど?」

 通じてなぁ~い!?嘘でしょ!?貴女!?流石にわざとを疑うレベルですよそれ!

「ほ、ほら、心の目で見るんだよ!」

 って、僕も渾身の告白が失敗したからって誤魔化してるんじゃないよ!

「?今日は新月だよ?」

 しかも、誤魔化せてないし!

「新月ってキレイだよね。」

 バカか!バカなのか!新月がキレイとか頭おかしいんじゃないの!?見えねぇよ!新月!ほら、マミさんもきょとんとしてるじゃん!ここはなんとか取り繕はないと・・・


マミ


 月がキレイですねって、今日は月が見えないのに春君面白いなぁ。

 それにしても、月がキレイですねってどこかで聞いたことあるんだけどどこだっけ?確か・・・夏目漱石?そうだ。夏目漱石がI love youを訳すときに使った言葉で・・・

 ん?I love you?我、君を愛す。私は君を愛しています。

 その言葉が思い浮かんだ瞬間、肌が熱くなるのを感じた。

 え!?嘘!?春君が私に告白!?でも、春君たまに、分からないとこあるし・・・今回もその類いかも?あっ!でもたまにキザなところあるし告白にこういう言葉選んでもおかしくないような・・・まさかねぇ?私なんかに・・・。

 と、とにかく、何にせよリアクションはしなきゃ!とりあえず告白だと仮定した回答はもちろん・・・

「は、はい。もちろん!」


ハル

 これは告白とかそういうのじゃない。仕切り直さなければ。

 正直マミさんの鈍感さをなめていた。これはストレートに言うのが一番の近道だ!だが今じゃない!(ちょ~ヘタレ)

 もし、今告白して、月がキレイですねと結びつけられて、告白が不発だったことが知られたら恥ずかしさで死ぬ自信がある!

「マ、マミさん。えっと、また誘ってもよろしいでしょうか?」

「は、はい。もちろん!」


マミ

 よし!言えた!時間差だったけど多分通じるはず。

「ありがとうございます。では、また誘わせていただきます」

 うん?何か違和感?誘う?やったぁ、とかじゃなくて?・・・「えっと、また誘ってもよろしいでしょうか?」「は、はい。もちろん!」・・・

 は!?しまった!遅すぎたか!

「あ!いや、違っ」

「え!?違う?」

「違っ、そういう意味じゃなくて・・・」

 もう、言っちゃえよ!私!貴方が好きです。って言っちゃえよ!・・・無理!絶対無理!

「あの、別に嫌なら無理には・・・」

「そんなことないから!とっても、嬉しいよ!」

 ちょっと食い気味になって答える。春君がちょっと引いてる。


―結局私は何も言えなかった。


今日の進展。次のデートの約束をした。




あとがき


 中学時代に書いたやつが発掘されたので、試しに投稿してみます。

 いやぁ、若いって良いですね~。

 良ければ、青臭いと罵ってやって下さい。主にハープが喜びます。

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