幸せさがし
遠谷カナ
一度目は偶然
次の駅への扉が開く。
アナウンスは良く聞こえない。
少しして身体の重みから開放されるも、すぐにまた押される。
気付くと透はサラリーマンらしき男と対面する形になっていた。
「ごめんねー。…今日はいつもより人多いね」
「…はぁ、まぁ」
多分、自分への掛けられた言葉だと悟も上手く言葉には出来ず、透より僅かに背の高い彼に曖昧に返事を返す。
電車がガタンと動く度に額へと掛かる彼の髪が擽ったい。
息が掛かる程の彼との距離が、何故か緊張を呼び起こしてジワリと握り締める掌に汗を掻く。
「…へぇ。……もしかして、御同類?」
意地悪く笑う相手の表情だけが視線の端に辛うじて捉えることが出来た。
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