再び、取り戻す―(26/26)
※~[凛・トロピカル]視点~※
──そして、あれから2週間が過ぎました。
毎日勉強に明け暮れていた私は、なんとか中間テストを乗り越え、今日、その結果をお迎えします。
勉強なんて教科書があれば大抵できると思っていましたが、やっぱり人の教えがあるのとないのとではまったく違いました。
隼人さんの教え方が上手かったのかもしれませんが、教科書には載っていない解き方のコツや暗記の仕方などを教えてもらい、理解の速度が段違いで速くなりました。
まあ、とはいっても、とりあえずはテストでイイ点をとるために、後半は授業でやった範囲の復習をしていたので苦労しましたが。
暗記系はなんとか詰め込んだのですが、数学とかはトンチンカンでしたね。
「──よーし、今から社会科と数学と英語のテストを返すぞ~。学年平均はどの教科もお前らがトップだ。褒めてやりたいが、中には赤点やら0点の奴もいるからな。評価は一人一人にしてやる。──じゃあ、出席順に取りに来い。アカマムシ・ナオコ」
「なんま~たんまんご~」
ついに始まった。
順番に生徒が呼ばれていく。
そういえば、あの鬼畜教師の名前もようやく覚えた。
だからなんだって話だけど。
「──次、カリオス今田~。お前は英語以外は満点だ。凡ミスさえしなければ完璧だったな。余った時間は寝てないで、ちゃんと見直ししろよ」
「教師の分際で指図すんじゃねぇよ!! 燃やすぞゴキタマ!!」
ゴキタマとか言うんじゃありません気持ち悪い!!
「はい、次、キング・オブ・マッケンジャー。お前は今回もパーフェクトだが、余白に意味不明な書き込みをするのはやめろよ」
「意味不明な書き込みではありません……。あなた方に対する苦情をアラビア語で書いただけです……」
それでは伝わらないと思います。
「へいへい。じゃあ次、グラマー・富士子・オクターブ。お前は解答用紙にヨダレを垂らすな。にじんで読めなかった答えがあったぞ」
「はぁ!? そんなの教師なら解読してみせなさいよ!! せっかく満点の自信あったのに!!」
なんてもったいない!!
ヨダレで満点を逃すなんて!!
そんな感じで、次々とテストが返されていきました。
中にはゲンコツをされる者や、タイキックをされる者もいて、私の中では恐怖心が芽生え始めました。
「──次、マッピラゴメン・no・キンピラゴボウ。お前はオール0点だ」
「Σはぁ!? オール0点!?!? んなわけねぇだろうがっ!! ちゃんと名前書いたっつーの!!」
「なら訊くが、〝火野レイ〟って誰だ?」
「Σハッ!!」
ついにレイたん好きがアダになりましたね、ピーラーさん。
もう病気ですよあなた。
「自分の名前じゃないのなら無効だ。……あ、そのフィギュアは一ヶ月没収な」
「レイたぁぁぁあぁあぁぁぁぁぁあぁぁぁぁぁんっ!!!!!!!!」
彼にとっては最悪の罰ですね。
私は、白く燃え尽きたピーラーさんにしばし合掌をしました。
「──最後、凛・トロピカル」
「ΣHEY!!」
ああ、公開処刑の気分だ。
せっかく隼人さんに手伝ってもらったのに、オール1桁だったらどうしよう……。
「お前は……」
「──まあまあだったな」
「へ?」
返された用紙を見てみると、数学以外はすべて赤点(40点未満)ではありませんでした。
「Σなっ、ななななんと!!」
今まで国語科以外はすべて赤点だったのに!!
……でも、決してイイ点とは言えないわけで。
「これで……まあまあなんですか……?」
「お前には最初から高望みなんてしてねーよ。……よく頑張ったな。これからも無理せずに精進しろよ」
「!?」
鬼畜教師が……褒めたっ!?!?
このタイミングで!?
このタイミングで!?
ギャップで好感度アップを狙っているのか!?
女をオトすプロか!?!?
「──あ、けど、放課後の補習はするからな」
ですよね!!
けど、いいんだ!
これだけ成績が伸びたのなら、隼人さんだって褒めてくれる!
隼人さん見て見て~☆
「──オイッ!! 数学4点ってなんだよっ!! お前は恩をアダで返す気か!! ツルになってハタ織りをする気はねぇのかっ!! このトロサギが!!」
「Σえぇぇぇぇぇっ!?!?!?」
そんなバナナァァァッ!!!!
「プッ、4点ですって。富士子は50点未満すらとったことがないのに」
「ある意味、僕は一生あなたには勝てませんよ……」
「名前さえ書いていればぁぁぁぁあぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!」
なんでやねんっ!!!!!
あんなに頑張ったのになんで怒鳴られなきゃいけないんだぁぁぁぁぁ!!!!!!
「……でもまあ、一応は頑張ったんだし、結果よりも過程が大事な時もあるよな。頭撫でてやろうか?」
「いりませんっ!!!!」
くそぉぉぉ!!!!!
期末では絶対に一泡ふかせてやるぅぅぅ!!!!!!
「今に見てろよ!! このヘンテコ人間どもがぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」
「──いいから早く席に着け」
「ハイ」
──とまあそんなこんなで、ひとまずは一件落着しました。
いやいや、なんだかんだ落着はしてないんだけど、これでしばらくは、またいつもの学校生活に戻るでしょう。
やはり、苦労あってこその人生。
楽な人生のほうがうらやましいかもしれませんが、いざなってみるとすぐに飽きてしまうものです。
山あり谷ありの人生のほうが、噛みごたえがあって、美味しく感じますよ。
──ああ、人生に涙あり!
世の風に吹かれ、揉まれる若葉達よ!
紅に色づく瞬間は必ず訪れる!
その時まで歯を食いしばり、一時の嵐にさらわれぬよう、生に満ちて、日々精進せよ!!
──それでは!
これにて失敬!!
お付き合い感謝いたす!!
バッハハ~イ☆
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